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RCCの河村綾奈アナウンサー(29)【前編】「おひとりさま上手」が仕事の充実につながる

 中国放送(RCC、広島市中区)でアナウンサーとして活躍する河村綾奈さん(29)。プライベートの時間にも心掛けているマイルールを聞きました。(聞き手・栾暁雨、写真・山田太一)

河村さんってこんな人
 広島市生まれ。舟入高、広島大法学部を経て、2014年にRCC入社。テレビの情報番組「イマナマ!」のキャスター(月―金曜)と、ラジオのトーク番組「平成ラヂオバラエティ ごぜん様さま」のパーソナリティー(木、金曜)を務める。

 アナウンサーといえば憧れの職業の代表格で、華やかなイメージです。毎日、楽しいのでしょうね。

 仕事はとても楽しいです。でも私生活はかなり地味ですよ。出会いが多くてキラキラなんでしょ、と思われがちなんですが、全然。コロナって本当、罪ですよね。仕事以外のお付き合いが限られているのもあって、すっかり「おひとりさま上手」になっちゃいました

 食事も映画も1人で行くし、去年からは「ソロカラ」にハマってて。仕事の後に1人で2、3時間くらい熱唱してます。よく歌うのは、いきものがかりの「笑顔」やアンジェラ・アキの「手紙~拝啓十五の君へ」ですかね。

 「笑顔」は歌詞が大好きで、歌ってると自然に涙が出てきちゃう。泣いてる自分に酔ってまた泣く、みたいな。カラオケボックスで1人号泣する女って痛いですよね(笑)。でも感情を解放するとデトックス効果があるのか、不思議とすっきりして。サウナと同じで「ととのう」んですよ。

 最近は手芸も好きで、月1回送られてくる刺しゅうキットをチクチク。これまでも、人のいない公園で縄跳びの2重跳びの練習とか、ペン字講座とか、オンラインヨガとか、いろいろ手を出しては1人時間を楽しんでいました。

 昨年の自粛期間中は、マイ琴を購入。高校時代に箏曲部だったんですが、久々に弾きたくなって。箏曲部が出てくる漫画を読んだのがきっかけです。音がご近所迷惑にならないよう、近くの公民館を予約して1人で練習していました。だだっ広い部屋の中で和楽器を鳴らす姿はなかなかシュールですが。

 もともと単独行動は得意です。気楽ですし。学生時代から一人旅ばかりしていて、ヨーロッパや東南アジアに行っては写真を撮っていました。

 テレビではおっとりした雰囲気ですが、アクティブですね。公園で2重跳びの練習って面白すぎるんですけど!

 同僚にもよく笑われます。無になれる瞬間が好きなんでしょうね。この仕事をしていると準備、本番、準備、本番の繰り返しで疲れることもあるし、人に会いすぎて誰とも話したくなくなる瞬間もあって。自分だけの時間を持つのはすごく大切だと感じます。充電のためのリラックスタイムですね。

 それにテレビやラジオって常にアウトプットを求められる。空っぽになってしまわないように、仕事でもプライベートでもできるだけいろんな経験をしておきたいんです。

 特にラジオはハードですよ。ベテランの横山雄二アナとの番組では、台本も打ち合わせもほぼない長時間のフリートークがあって。話がどこに向かうかも定かではありません。何を話すか、どう話題を広げるか、アドリブ力がめっちゃ試されるんです

 放っておくと横山さんの巧みな話術にのまれちゃうから、食らいつくのに必死。視聴者を退屈させないためにも、できるだけ自分のことを積極的に話します。「新しい趣味を始めました」とか「散歩中においしそうなお店を発見した」とか。

 普段の過ごし方が問われる緊張感みたいなのはあります。話のネタ探しに、歩きながら何か面白いことはないかなといつもキョロキョロしてますよー。仕事とプライベートの線引きがあまりなくて、生活の全てが糧になるから楽しくもあり、大変でもあります

 周りの人から「頑張り屋」と評されている河村さんには、座右の銘があるそうですね。

 「緻密な準備と大胆な本番を」です。心配性なので、例えばインタビュー取材の前は、相手のことをすごく調べておかないと不安で。準備できてないと「私ってなんてダメなんだ…」と自己嫌悪になって、すっごいへこむんです。顔が引きつっちゃうくらい。大抵は先輩がフォローしてくれて事なきを得ますが、そんな自分が嫌でたまらない。

 だから事前に著書や関連動画などで必要な情報をインプットします。相手の話を引き出したり、整理したりするためにも納得するまで準備して、逆に本番では思い切って取っ払う。

 矛盾するようですが、詰め込んだ知識にばかり引っ張られると、予定調和なトークになって面白さが消えちゃう。さっきのネタ探しの話とも重なるのですが、引き出しをいつでも開けられるようにストックしておくことが大胆な本番につながると思います。

 ストイックですね。3番目の「花」を探すは、街中に咲いている花のことでしょうか?

 と思っちゃいますよね。でも違うんです。番組のコーナーごとの「見せ場」を作りたいという意味です。会話の中で「面白い!」と感じたワードや視点があれば、そこに全力でかじを切って盛り上げたり深堀りしたり。笑いや共感など、感情が振れる瞬間を作ることで、2時間を超える長尺の番組でも間延びしません。

 「花」というのは、役者が持つ魅力のこと。能役者・観阿弥の言葉を息子の世阿弥がまとめた演劇論「風姿花伝」に出てくる言葉です。私も舞台に立つ人間の一人として、「自分だけの花」を咲かせたい。それは日々の生活で誰かと会話していても同じです。楽しい時間だったと思ってもらいたいし、その積み重ねが「この人とまた仕事がしたい」という印象につながって、ご縁が太くなるような気がします。

 ところで女性アナウンサーにとって30歳というのは一つの節目だと聞いたことがありますが、どうでしょうか。

 感じますね。「女子アナ30歳定年説」と言われるくらい、若さが売りみたいな面があるのは確かです。若いうちはアイドル扱いでチヤホヤされても、30歳過ぎたら実力勝負。ニュースを読む力やナレーション力が必須です。声色のバリエーションも欲しいので、声まねや発声練習にも力を入れています。

 後輩たちも成長していて、ぐんぐん迫ってくる足音が聞こえます。抜かれたくない気持ちもあるし、自分が先輩の背中を追ってきたように、後輩にも追いたいと思われる存在になりたい。結構、負けず嫌いかもしれません。「河村の番組が見たい」と言ってもらえる魅力的なアナウンサーになりたいです。

 そのためには人間力を磨くしかないんでしょうね。頑張ったことや趣味など、誰にも負けないと胸を張れる軸を持ちたくて、探している最中です。ちょっと生き急いでいるなとも思いますが、「29歳ってそんなお年ごろ」と先輩からもよく聞くので。30歳を前にモヤモヤしちゃうのかな。

 これからの人生について考えることも増えました。仕事はもちろん続けたいし、結婚して子どもも欲しい。最近、友人たちが結婚・出産ラッシュなんですよ。SNSに家族の写真を載せているのを見ると「新しいステージに進んでいてすごい」とうれしい半面、「置いて行かれちゃったな」って少し落ち込みます。焦りもありますが、折り合いを付けるしかないですね。

後編につづく⇩⇩⇩