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広島国際会議場の1万7千冊 行き場がなくなっています。廃棄していい?⇒広島市が一般向けの譲渡会を開くことに

 広島市中区の平和記念公園内にある広島国際会議場1階の「国際交流ラウンジ」で、貸し出し用だった約1万7千冊の蔵書の行き場がなくなっています。ラウンジは2月末で閉鎖。寄贈や購入で集めた和書や洋書の一部を図書館などに引き継ぎましたが、9割近くが残りました。広島市は一般向けの譲渡会などイベントも検討していますが、余った場合は処分する方針です。(3月10日加筆)広島市は一般向けの譲渡会を開くことにしました。(加納亜弥)

税金で購入、市民の寄贈…33年で積もって2万冊

 2月末に閉鎖されたラウンジに入り、書架をあらためて眺めてみた。行き場がなく残されている本の種類はさまざまだ。村上春樹や大江健三郎、横山秀夫といった人気小説の英語版ペーパーバック、受験やTOEICの参考書…。あら、漫画コーナーには「はだしのゲン」の全巻もある。海外の絵本もかわいらしい。洋書がずらっと並んだ光景を見ると、なんだか異国のカフェの本棚みたいでかっこいい。

 1989年7月の国際会議場会館に合わせ、広島市が開設したラウンジの蔵書は2万384冊。国際交流・協力関連▽小説▽ガイドブック▽日本語学習テキスト▽漫画―など、和洋書とも多彩なジャンルがそろう。

 このうち約半数は市民が寄贈した。残りは広島市が購入し、2018~20年度は年間40万~50万円(250冊前後)を充ててきた。新型コロナウイルスの感染拡大の前の2019年度は、市民たち1373人に2600冊を貸し出した。

過去には譲渡会も。今回はまだ「検討中」

 広島市はこれまで、市内の図書館や原爆資料館などに、引き取りの希望を問い合わせてきた。2937冊が引き取られたが、1万7447冊が残っている。

およそ3千冊は、図書館や原爆資料館が引き継ぐことになった

 広島国際会議場を巡っては、21年3月に地下2階のレストラン「セレナード」が契約満了で閉店したのに伴い、市内部で会議場全体の魅力向上に向けた方策を検討してきた。

 外から見ると、ラウンジの書架が一見「図書館に見える」という声もあったようだ。このため市は、図書館と機能が重複しているとして閉鎖を決定。ラウンジ閉鎖で空いた場所には、22年度中に飲食店をオープンさせる予定という。

閉鎖された国際交流ラウンジ

 ラウンジでは過去に、古くなったり、重複したりした図書の無料譲渡会も開催してきた。現時点で、閉鎖に伴う具体的な譲渡会などの予定はないという。ただ広島市国際化推進課は「イベントなども検討し、開拓の余地があればできるだけ必要な人に届く方法を探りたい」としている。

 皆さん、残った本をどうしたらいいと思いますか。

(3月10日加筆)一般向けの譲渡会開催へ

 広島市は残った約1万7千冊について、一般向けの譲渡会を開く方針を決めました。日程は未定ですが、市の国際化推進課は「できるだけ公平に行き渡る方法を考えたい」としています。
 報道を受け、個人や団体から行き場をなくした大量の本を引き取りたいという申し出もあったといいます。しかし公平性の観点から、待ってもらっている状況。国際化推進課は「例えば団体がごっそり持って行くというケースがあると困る。多くの人の手に届くよう、譲渡会は複数回開くことも考えている」と説明しています。