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小規模スーパーの悲哀と人情。店主がつぶやく折り込みチラシ

 毎月1回お客さまが来ない夢で飛び起きます
 商売が楽しいと、一日が楽しい。得した、得した!

 広島市南区の小さなスーパーの折り込みチラシ。昔ながらの1色刷りに躍る文句が見逃せない。小規模店の悲哀満載で開けっ広げ。店主が自らを鼓舞するようなフレーズに、何だかこちらの元気も湧いてくる。

たかもり外観

 生鮮スーパーたかもり。広島市南部、海に面した宇品地区で60年以上、商いを続けている店だ。中へ入ると「軍艦マーチ」が流れ、紅白幕に大漁旗。昭和なムードが漂う店構え。

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 チラシの「中の人」は、いつも威勢がいい。苦しいだじゃれも勢いで押し通す。チラシが折り込まれる金曜の朝が、ちょっぴり楽しい。

たかもりトラック市

たかもりストロベリー

 近くに競合店がオープンすると、「中の人」が吠える。

たかもり吹けば

たかもり風林火山

 そうかと思えば一転、けなげな様子で、自らに言い聞かせるように、こうしたためてあった。

たかもり小さい店

たかもり不安

書いているのは副社長の伊木英人さん(48)だ。

「古いやり方と思うでしょう。でも、うちは小さな店。大型店と同じことをしていたのでは振り向いてもらえん。売り手の顔が見えるようにしたかった

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 思いは届いている。来店客から「面白いのう」と声が掛かる。川柳好きの男性は「今週、良かったね~」と評してくれた。人生訓めいたことを書いた日は、「いいこと書いてる。私もそう思う」と電話が入った。地元にファンが広がった。

 「チラシはこれからも続けます。アナログで、時代に逆行してるのかもしれないけど。いつまでも、人情味があふれる昭和なスーパーでありたい
「本当はね、しんどいんよ」と笑う伊木さん。「次は何を書こうかと悩んで悩んで…。でも面白がって、楽しんで、商売を続けたい」

 ◇

 ところで、こんなチラシを始めたのはいつですか―。そう問うと、伊木さんはよどみなく答えた。
「2009年5月22日。この日から生まれ変わる決意だった」
(奥田美奈子)

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