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まさか私がバービーに!モデルになった広島出身の起業家堀江さんから、後輩の女の子たちへ

中国新聞U35

 「バービー」人形のモデルになった広島市中区出身の女性がいます。堀江愛利ありさん(50)。米シリコンバレーを拠点に女性起業家を支え続けてきた堀江さんは、「起業家」のロールモデルとして今年3月、米国の玩具会社マテルに選ばれました。「You Can Be Anything(何にだってなれる)」というメッセージとともに。どんな気分なのか。バービーを手にする子どもたちへのメッセージは? 堀江さんに聞きました。(新本恭子)

バービーのロールモデルプロジェクト
 米国玩具大手マテルが、「境界を突破し、次世代に希望を与える女性」としてロールモデルとなる女性を世界中から選び、それぞれを模した人形を本人に贈るプロジェクト。2022年は起業家をテーマに堀江さんを含む12人が選ばれた。日本人は過去に、タレントの黒柳徹子さんやテニスの大坂なおみ選手たちが選ばれており、堀江さんは5人目。

ーバービーになった率直な気持ちを聞かせてください。

 人生いろんなことが起こるけど、自分がバービーになるとは思ってもみないことで驚きました。
 このプロジェクトは、かつて女性の外見的な美しさを体現してきたドールと異なり、それ以外の価値観を表現する良い取り組みだと思いました。私自身の体形に合わせた人形を作ってくれるのかとも期待していたけれど、そこは違っていましたね。
 女性は美しくあるべき、かわいくあるべき、ではなく、いろんなバラエティーがあるというメッセージがバービーに込められているんです。それを親たちが子どもに伝えていくことが大切なんじゃないでしょうか。

―「べき」の呪縛、ありますよね。

 私は「こうあるべきだ」の「べき」をとにかく外していきたいと考えています。私も2人の子を育てる母親ですが、性別に対する「こうあるべきだ」というバイアスは、親が気付かないうちに子どもに伝えていたり、社会がインプットしたりしています。
 「べき」を取り除くことで、個人が本来持ついい部分を発揮できるスペースが生まれるはずです。

 ―起業家として、子どもたちに伝えたいことがありますか。

 起業家、と子どもに言ってもぴんとこないかもしれませんね。何かというと「自分で未来を描いていく職業」だと思うんです。既にある仕事に当てはまらないことをするのが起業家。つまり何でもありなんです。自分が何をして生きるか選べる未来があるのだということを知っていてほしい。
 日本の教育では、これまで「既に在るものを極めること」が重要視されてきました。代わりに「まだ極められたこともない領域」への視点が抜け落ちていたのではないでしょうか。

 例えば、これまでの教育の先にあるいい大学、いい会社というのは既に存在している中での「いい」なんです。でも、今あるものは古いとも言えますよね。だから、今あるものをベースに未来を考えるだけではイノベーションが起きるわけがないんです。存在しないからこそ面白いということを知る必要があります。
 素晴らしく極めていける力は日本の誇りだし強みでもある。でもそこに集中し過ぎるあまり、「自分で創る」という領域を無くしてしまったように感じます。世界に後れを取るようになってしまった日本が、脱皮するために何が必要か。頭で理解するだけでなく、とにかく行動する、試してみる、動きながら何かを見つけていくということではないでしょうか。


―堀江さんはなぜ今のような考え方をするようになったのですか。

 私は17歳で米国に留学し、大学も米国の大学に進みました。日本とは全く環境が違う中で「なんで私はできないんだろう」の連続でした。
 例えば米国人たちが大きなリアクションをしながらテンポよく会話を楽しんでいるのに、私は輪に入れない。嫌なことをされても、とっさにやめてと言えない。まず考える癖が付いているのです。相手を思って先の先を読んでいるのに1人で空回りして、「何でそんなことしているの?」って言われたことも。「私の頭の中ってどうなっているんだろう」って問い続ける日々を送ったんです。
 こんなこともありました。私がホームステイ先で冷蔵庫から物を取り出して振り返ったら、その家の女の子にぶつかったんです。立っていた私に後から来た女の子がぶつかったのに、言われたのは「なんで振り向くって言わないのよ」。私の感覚だと双方が「ごめんね」だったので、「いやーアメリカ人ってすごいな」って。マインドセット(思考様式)の違いはすごく面白いと思いましたね。

―その状況を面白く思えたことに驚きです。

 悔しいこともたくさんありましたよ。次は言い返してやろうって思うじゃないですか。そう思って一生懸命、英語やリアクションの練習をしましたね。
 英語が周りよりできない分、アンテナはすごく張っていました。「どうしてあの人の話はみんなの関心を集めるんだろう」ということを、話の内容だけでなく周囲の環境やエネルギーレベルとかリアクションの大きさとかをずっと見て。
 頭で分からないことはやってみました。「同じように動いてみたら何か見えてくるかもしれない」っていうのはモットーでもあります。例えばけんかして怒鳴られたとき、日本人のモードだと、相手を思って我慢するのが、長い目で見て信頼を得ることにつながるという考えがあると思うんです。でも、同じように怒る、しかも相手以上に怒るっていうことをやってみたんです。心は冷静でしたけどね。今まで教わったこととは違うアクションをしたら結果は全く変わりました。人間って面白いですね。

 米国の企業のトップミーティングでは、皆すごく感情的に議論しているんです。男性社会ならではの光景かもしれません。でも私は女性がキャリアを積み上げるときに、「女性もそういうことができるようにならないといけないよ」とは絶対に言いません。

―どういうことですか。

 だって、それは社会や他人に評価軸を置いた「そうあるべき論」ですから。
 他人からの教えや本に書いてあることはきっかけでしかない。答えは自分の中にあるって分かったときが最強なんです。自分のフィルターを通して自分が決める。そのためにいろいろ行動してみるんです。その中で自分に合う、合わない、ああはなりたくないといったものも見えてくる。だから全てが経験。私は何でもやってみるというのを大事にしています。自分で決めたことなら失敗しても納得できるし、後から検証ができますしね。
 この原点は母ですね。母子家庭だったので、母はもし自分があした死ねば、娘が1人になるかもしれないと常に心配していました。だから私には自分の意見を持つように、しかも自分の経験から来る理屈で意見を持ちなさいと言い続けました。「とにかく経験を積め、やってみろ」と。

―3月、東京に一般社団法人Women’s Startup Lab Impact Foundation Japanを設立し、日本での活動がスタートしました。どんな活動をするのですか。

 起業した女性だけでなく、これから起業家になるかもしれない人、高校生も対象にしています。起業の面白さを伝えたり、挑戦する意欲を高めたりするプログラムを展開する計画で、参加者を募っています。
 「自分に何ができるか分からない」という人もいるでしょう。とにかく足並みをそろえて上に上に、という教育の中で自分自身への問いかけをしないまま歩んできたら、そう考えるかももしれませんね。何かを始める時に日本だと「いろいろ理由がいるんだよ」ってやつですね。「私がしたいからやる」でいいんじゃないでしょうか。とにかく行動する中で、わくわくしながら何かを見つけたり、創造したりできるスペースを、起業というトピックの下で広げていきたい。


 テクノロジーが進み、無料であらゆるサービスを利用できるようになりました。10年前と比べても社会とつながりやすくなり、起業もローコスト、もしくはゼロコストでできるようになっています。世代によっては実感がないかもしれませんが、社会の中での成功を自分自身で描ける時代になっているのです。まずは「自分で何でもできる、何でもありなんだ」ということを若い人に感じてほしいと思っています。

ほりえ・あり 広島市中区出身。カリフォルニア州立大学を経て米IBM入社。2013年に米シリコンバレーでWomen’s Startup Labを創業し、女性起業家向けに合宿型の育成プログラムを開始する。19年には女性活躍をさらに推進するための非営利団体を米国に設立。22年3月には東京に一般社団法人を設立し、日本の女性起業家が活躍できる環境づくりの取り組みをスタート。米テレビ局CNNテレビの「10人のビジョナリーウーマン」に選ばれたこともある。

写真提供:Women's Startup Lab


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