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広島の山桜で作ったスタイリッシュなバターケースとナイフ。コラボした地元3社がものづくりに込めた思いとは

 ライフスタイルマーケット「BANCART」(広島市中区)×イワタ木工(廿日市市)×アンデルセン(広島市中区)。地元3社のコラボレーションによって生まれた「バターケース・バターナイフ」が、3月21日から発売されます。広島県産の山桜をくりぬいて製作したスタイリッシュなアイテムは、毎日の食卓に上質さをプラスしてくれそう。開発に携わった3社の担当者に、ものづくりに込めた思いを聞きました。

■担当者紹介

たびまちゲート広島 地域商社事業部 高越由紀子さん

2014年広島銀行に入行。広島県内の営業店を経て、21年に出向し現職。ひろぎんホールディングス本社ビル(広島市中区)1階のBANCARTの運営に従事

広島アンデルセン バンケットサービスグループ パーティレセプションチームリーダー 久保原 由美さん

2004年アンデルセングループに入社。グループ全体の採用や広報、東京の店舗での商品開発などを経て、21年から現職。「アンデルセンカフェ ひろぎんホールディングス本社ビル店」の立ち上げにも携わる

イワタ木工 代表取締役 岩田知真さん

2002年に家業のイワタ木工に就職、広島県が発祥のけん玉製造を中心に加工と塗装の技術を磨いた。31歳の時に分社化し、株式会社イワタ木工を設立。卓越した木材加工技術で、熊野筆のメークブラシ軸やけん玉などの製造を手掛ける

■発想 「毎日使うものこそ、豊かに」

ー小さなインテリアのような商品ですね。発想はどのように生まれたのでしょう。

 高越 BANCARTとアンデルセンがコラボするのは実は3回目です。第1弾はマーケットバッグ、第2弾はパン切りナイフ。パンを買って帰って、好きな大きさに切って。次に使うのはバターかな、と。この木製のケースには、ブロックバターが丸ごと一つ入るんです。
 バターケースとナイフは食卓に置くツール。温かな雰囲気を生み出すのは金属よりも木の素材という思いから、イワタ木工さんに声を掛け、コラボすることになりました。

バターケース・バターナイフ

 久保原 商品開発には、ベーカリーとして、さまざまなアイデアをお伝えしました。毎日使っていただきたいので、見た目がすてきかつシンプルで、機能性が高いものがいいなあと。ぬくもりのある木の製品は、時間の経過とともに風合いが出てきますし、毎日使うことで愛着が生まれ、自然と暮らしが豊かになる。そんな商品に仕上がりました。

 岩田 普段は廿日市市でけん玉や熊野筆など広島の伝統工芸品の製造にも携わっています。ものづくりの技術や、県内の素材をもっと知ってもらえる機会になると思い、参加しました。
 今回は山桜を使うことを提案しました。熊野筆のメークブラシの軸にも使われ、日本になじみのある木材。断面の模様は、青み、赤み、白みが組み合わさって表情豊かです。粘りがあって加工がしやすく、高強度で丈夫。ナイフの先端部分を作るのにも、ぴったりでした。

■工夫 使いやすさを細部まで

―商品開発で力を入れた点や、工夫したところを教えてください。

 久保原 試作品のバターケースに実際にバターを入れて、冷蔵庫で冷やし、何度も試してみました。風味が変わらないか、使いやすいかどうか。ユーザー目線で丁寧にチェックを重ねました。木製だけど、トレイと蓋が磁石でくっついているので便利だなと、あらためて感じました。

トレイと蓋は磁石でくっつく

 岩田 ケースはバターの設置面に凹凸を付けて、切るときに動かないようにしています。また、ふたが落ちないように付けた磁石は0・2ミリほど木の中に埋め込みました。開け閉めするときに、磁石ではなく、心地よい木の音が鳴るようにしたかったんです。
 木の変形を極力抑えるため、削る工程も2回に分けました。さらに、宮島(廿日市市)で作られた蜜ろうに食用のアマニ油を混ぜた独自のワックスを擦り込み、木の耐水性や抗菌性を高めています。蜜ろうもアマニ油も、自然由来の物にしました。
 ナイフは力を伝えやすいように小指側を太くしています。丸みを帯びた形で、滑らかな触り心地。安全に使えます。

滑らかな触り心地のナイフ

■3社のコラボ 地域への愛着 相乗効果

―地元に根を張る3社がコラボすることに、どんな意義がありますか。

 高越 互いの思いが相乗効果となって、地域の魅力が詰まった商品ができたという実感があります。バンカートのコンセプトは、母体である広島銀行(広島市中区)を起点に地域の活性化につながる新たな市場を創造すること。併設している「アンデルセンカフェ」も、コンセプトを具現化した取り組みの一つです。素材、技術といった広島の宝物を、多くの人に知ってもらいたいと思っています。

 久保原 各社のファンが他の企業の良さを知りファンになる。こうした裾野の拡大や、ファン同士のつながりを生むのも意義の一つだと感じています。広島の魅力を県内の人に再発見してもらい、県外の人に知ってもらうきっかけになったらうれしいです。

バターをカットするイメージ

 岩田 商品を作る上で、さまざまな視点を取り入れられたことも良かったです。普段接しているお客さまや、社会に果たしている役割は各社で異なります。それぞれが企業活動を営む中で生まれた知恵やノウハウを結集させることで、より良い商品ができたと感じています。

■U35世代へ 大切に作ったモノの温かさを感じて

―中国新聞U35は若い世代に向けて発信しています。20、30代のユーザーにどんなふうに使ってほしいですか。

 久保原 コロナ禍が長引いて、家にいる時間が長くなっているのではないでしょうか。より楽しい気持ちで過ごせるよう、日々の食卓でこそいいものを使っていただけたらいいな、と。
 思いを込めて作ったモノからは、温かさが広がって、使う人も温かい気持ちになるんじゃないかと考えています。
 バターも切り方一つで味わいが違うんですよ。ブロック状にカットしたり、薄くそいでみるのもお勧めですし、それらをぜひいろいろなパンと組み合わせてみてください。パンのおいしさや楽しみが広がると思います。

バターケース・バターナイフで生活を豊かに

 岩田 このバターケースとバターナイフを食卓に置いて、おいしく食べながら会話が弾み、笑顔が広がる時間が増えたら言うことないですね。
 それに、木は年を重ねると色も風合いも変わる。日々を共有し、引き継いでいけるモノになってくれたら。親から子へ引き継がれたら、子どもたちは木の道具を見て家族との時間を思い出すことができる。ストーリーをつないだり、思い返したりできるのが、木の良さではないでしょうか。

 高越 若いときは、外見の豊かさを求めてブランド物の靴やかばんが欲しくなることもありますよね。一方で、生活用品は内面の豊かさを育むもの。自分の暮らしをワンランクアップさせるきっかけとして、取り入れてもらえたらと思います。
 春に新生活を始める人も多いのではないでしょうか。就職や進学で1人暮らしを始めたり、引っ越ししたり。新たな生活をより豊かに―。そんな願いを込めたギフトとしてもお薦めです。

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★オンラインでも3月21日から販売する予定です