ギャンブル旦那からボーナスをもらう方法(鬼嫁視点)
6月といえば多くの企業でボーナスが出る月だろう。
我が家では、名目上は家計のための口座、実態は私のための口座に、旦那の賞与は振り込まれている。
そのため、旦那の賞与は、基本的には私のものなのだが、たまには飴も与えておいてやろうという私の寛大なる御心により、その一部は旦那に還元している。
今回は、そのお金を回収する方法を伝授したい。
まず最初に春のG1スケジュールを確認してみよう。するとおかしなことに気づくはずだ。
3月末から始まる春のG1シリーズは、基本的にほぼ毎週開催されるのだが、なぜか宝塚記念だけは3週間の間隔が空いている。
一体なぜそんなイレギュラーなことをしているのだろうか?
この理由というのは諸説あるのだが、その中の一つに、「6月第2週ではボーナスが支給されていない会社も多いため、JRAが庶民からボーナスを搾取するために、開催を後ろ倒している」というものがある。
これは一見正しいようだが、間違っている。
正解は「6月第2週ではボーナスが支給されていない会社も多いため、嫁が旦那からボーナスを搾取する機会とするために、開催を後ろ倒している」である。
つまり、宝塚記念というのは、「嫁が旦那からボーナスを搾取するためのJRAからの心遣い」であり、国公認の搾取システムなのだ。
宝塚記念のことを、多くの人間は「着順を予想する賭博」としてしか捉えているが、根本から認識を改めてほしい。
宝塚記念はそんな低劣なものではなく、もっと高尚で神聖な女性救済策なのだ。
ではどうやって搾取すればいいのか?という話だが、これには特殊なスキルも知識も必要ない。
ただただ「宝塚記念を外したらとんでもないことが起きる」という恐怖を旦那の脳細胞に刷り込んでいくだけである。
まずは、宝塚記念に注目していることを伝えることから始めていこう。
「宝塚記念って、あの宝塚歌劇団と関係あるの?私、中学生の頃、宝塚歌劇団好きだったんだよね〜。私も宝塚記念は参加してみようかな〜」
「競馬でも人気投票ってあるんだ〜。AKBみたいでおもしろいね〜。私も人気投票1位の馬に賭けてみようかな〜」
みたいな感じである。
上記のように、文脈に無理があっても問題はない。(だいたい私には中学生の頃に宝塚歌劇団が好きだったという過去などない)
なぜならこれは宣戦布告なのだ。
宣戦布告に論理的整合性もクソもない。
私が宝塚記念に注目していることが、旦那に伝われば良いのだ。
なお、普段競馬に興味がない鬼嫁が、競馬の話をするなんて、危機察知能力が低い旦那だと、一緒に競馬を楽しめるかも?と喜ぶかもしれない。
うちの旦那は危機察知能力だけは高いので、私が
た か ら づ か
と発した時点で、顔がひきつっていた。
宣戦布告が完了したら、少しずつ旦那を追い込んでいこう。
まずは「横断幕」の制作をお勧めする。
ここで用いるスローガンは、旦那に大事であることを認識してもらうことが目的なため、多少大袈裟であることが望ましい。ちょっと恥ずかしいくらいの文言を使っていこう。
なお、横断幕には、必ず旦那の名前を入れておくように。
一家全体で盛り上がるものの、あくまで賭けの主体は旦那であることは随所で念押ししていく。
最後の責任は旦那に取ってもらうためだ。
完成したら、家の一番目立つところ(リビングあたり)にデカデカと飾っておこう。
旦那は驚くだろうが、「あなたを応援したくて作ったの」みたいに殊勝なコメントでカモフラージュしておこう。
なお、横断幕が似合うリビングなど、この世に1つもないので、とんでもない存在感を発揮することとなるだろう。
これ1枚で、一気に戦時中のようなピリピリした雰囲気になること間違いなしだ。
他にも、書道家の如く毛筆で半紙に「必勝」や「的中」などと書いて、トイレや玄関など、家の至る所に貼り出しておくのも効果的だ。
宝塚記念を家族の一大イベントにすることに成功したら、次は的中へのプレッシャーを旦那にかけていく。
まずは「ヒシミラクルおじさん」を話題にしてみよう。
「宝塚記念で2億円儲けた人がいるんだって〜。宝塚記念ってたくさん儲かるんだね〜」みたいな無邪気発言を、可愛くコメントするのがお勧めだ。
初期期待値を2億円に設定することで、2億円は無理としても、それなりに大きな金額を賭けないといけない、と旦那に思わせることが可能となる。
旦那の儲け、もしくは損失の金額によって、徴収できる金額は変わってくるので、できるだけ賭け金は膨らむように圧力はかけていこう。
また、「Twitter 宝塚記念 的中」のようなキーワードで検索するのもお勧めだ。
当たり馬券がたくさん出てくるので、旦那に送りつけよう。
この際にも、「競馬ってちゃんと予想したら儲かるんだね〜」みたいな無邪気発言を付け加えていく。
素人であることを武器に、天然発言を連発し、「負けるわけないよね?」という空気感を醸成してくのである。
とにかく「競馬は簡単に勝てるものだ」と信じてやまない健気な妻を演じよう。
このように外部環境を整えたら、次は一緒に予想をしよう。「競馬ブック」などを購入し、二人で眺めるのもオススメだ。
と言っても、あなたは自分の予想を出す必要はない。
どの馬が1着になるだのといった些末な話は、雑魚に任せておけば良いのだ。
血統だの、コース適性だの、展開だのは、論外である。枝葉中の枝葉にすぎない。
私たちはもっと高次のところで戦をしているのだ。
なので、ここであなたがやるべきことは旦那が本命にしそうな馬について、強調材料と不安材料を述べることである。
今年だと「イクイノックスって世界ランキングトップなんだって」とか「イクイノックスって阪神で走ったことないんだって。大丈夫かな?」などが例文となる。
これらの例文を見てもらったら分かる通り、誰でも知っているような情報を口にするだけで問題ない。
なぜなら、大事なのは予想が当たるかどうかなどではなく、あなたがいちゃもんをつけれるかどうかだからである。
もし旦那の本命馬が好走したら、「私のアドバイスのおかげで勝ったからご馳走してね」と言えば良いし、凡走したら「私のアドバイスを聞かなかったせいで負けたから罰金ね」と言えば良いのだ。
つまり、旦那の本命馬について、強調材料と不安材料の両方を述べておけば、どのような結果に転ぼうとも、旦那から搾取することが可能になる。
戦さを仕掛ける上では、どのような展開でも勝てる戦略が必要だ。
中には、こんなアホみたいな手法が通用するわけないと思う方もいるかもしれないが、競馬中毒者相手なら問題がない。
なぜなら競馬界というものは後出しじゃんけんが常態化しているにも関わらず、みんな騙されているような世界なのだ。
基本的に、彼らの知性は幼稚園児以下だと思って、問題ない。
なお、既に再三述べてきたことではあるが、万が一揉めた場合には、逆上すればそれで万事解決である。
競馬中毒者は面倒なことが大嫌いなので、その性質はちゃんと利用していこう。
さて、こうして宝塚記念を一大イベントに仕立てることができたら、次は搾取システムの構築に取り掛かろう。
が、これは勝った時に奢ってもらう約束を取り付けるだけで良いので、猿でもできる簡単なタスクである。
例えば、もしあなたに子供がいるようなら、「パパが競馬勝ったら、ハンバーグに連れて行ってくれるって」、「わ〜い。パパ頑張れ〜」みたいな微笑ましい親子の会話を、これ見よがしにしていこう。
こうすることで更に負けられないというプレッシャーをかけれると同時に、勝ったら何かを奢るというシステムを作り上げることができる。
この段階で、この搾取システムを回避するのは、旦那には不可能である。
なぜなら人間は弱い生き物だからだ。
人間は苦しい状況に置かれた時ほど、現実を直視することなく、未来にある僅かな希望に縋るという特性を持っているためだ。
そう、この時点では、旦那にはまだ競馬で勝つという希望が残っている。
そのため、今の段階で面倒臭い嫁と戦うのは得策ではない。そこは回避して、競馬に勝つという未来に期待しようという思考になるのだ。
こうして旦那は、危機を先延ばしにするのだが、先延ばしにした結果、もう旦那は沼から抜けれなくなっているのである。
こうなったら勝負は勝ったようなもんだ。
あとは「せっかくだから、良いレストラン予約しておくね〜」とのコメントを残し、高級レストランを予約してしまえば良い。
少しでも抵抗を見せたら、「何?負けるつもりでやってんの?勝てば問題ないんでしょ?死ぬ気で勝てよ!」と強豪校の顧問さながらの熱演を見せよう。
きっと旦那は面倒になって、何も言ってこないはずだ。
こうしてレース当日を迎えれば、もうあなたのボーナスは約束されたようなものだが、念には念を入れていこう。
ここで登場するのが、必勝ハチマキである。
こちらを家族全員で着用して、レースを観戦しよう。
いかに家族みんながこのレースに命を燃やしているのかを、旦那に念押ししておくのは非常に重要である。
全員がハチマキをして競馬観戦しているなんて異常な光景には違いないが、人を陥れるには異常なくらいがちょうど良いのである。宗教の現場を見たら分かるだろう。
なお、当然ではあるが、命を燃やしているのは家族全員であるが、賭けの責任は旦那であることはここでも明示しておく。
そのため、旦那には「主役タスキ」を忘れずにつけさせよう。
やりすぎと思われるかもしれないが、圧力はかけるに越したことはない。限界まで追い込んで、逃げ場がないようにしておこう。
ここまで来たら馬券の結果などはどうでも良い。
旦那が必死にレースを見る様を高みの見物といこう。
その後は、当たったらそのままご馳走になれば良いし、負けたら「レストランの予約どうする?キャンセル料かかるけど?」と一言添えれば良い。
あなたの旦那がよほどのサイコパスかアホではない限り、喜んでお金を差し出すことであろう。
さて、ここまで読まれた方の中には、ここまでしなくてもボーナスを獲得できるんじゃないか?という疑問を持つ方もいるかもしれない。
それは事実であるが、一方で長期視点が足りないとも言える。
鬼嫁たるもの、単発での搾取に満足してはいけないのだ。
我々は長期的に搾取し続けることを意識しなければならないし、そのためにはトラウマになるほどの強烈な体験が必要なのである。
私の旦那はこの1回の宝塚記念で精神をすり減らした結果、半年後の有馬記念で私が横断幕を再利用しようとした際には、「ボーナスで毎回プレゼント買うから、競馬には関わらないでくれ」と、涙の嘆願をしてきた。
結果として、今では労せずに半年ごとのボーナスを手にすることが可能となっている。
何事もリターンを大きくしようと思ったら、初期投資は必要なのだ。そのことを覚えておいてほしい。
以上が、私の講座である。
役に立とうが、立たまいが、「いいね」して帰るように。さもなくば、あなたが不幸になる呪いをかけることとなる。
なお、過去には
のような記事も書いているので、よかったら参考にしてほしい。
また、こちらに過去の創作物はまとめているので、気になるものがあれば読んで頂けると幸いである。
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