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自動車学校体験記2-4日目「20万!20万取るイメージ作ろうぜ!!」

2日目

講師が変わり、驚くべきことにPowerPointを使って授業が行われた。なぜこれが驚くべきことなのかは1日目のnoteを読んで雰囲気を感じ取ってほしい。


今日は交差点での右折と左折について学んだ。特に右折は難しい。あらゆる事故の可能性が提示される。こんなに危険な行為が自分にできるだろうかと思う。

学校の外に出ると7股の交差点で自動車が徐行することもなくビュンビュンと右折していく。怖い。

喫茶店で適性検査の結果を読む。「決断力がない。」とコメントされていた。理不尽だ。適性検査ではいろいろなサイズの「A」を「なるべく丁寧に、なるべく早く」書かされた。あと、どう見てもなににも見えないインクの染みのような絵がなにに見えるか問われたりもした。選択肢には「犬がチンチンをしているところ。」「天使の踊り」「忍者」等があり、必ずどれかに決めろと指示された。こんなもの戸惑って当然ではないか。


3日目

初めて車に乗った。

ハンドルを握って発進してすぐ「あ、これはダメだ。」という気がした。苦手なものは始めた瞬間、大抵すぐわかる。なんかもう肩から力の抜けるような泣きたくなるような絶望感に苛まれる。

大人になるとまぁまぁ鈍臭くても忍耐強さでカバーすることができる。わたしは不器用ではあるが何度も何度も繰り返し習熟する執念深さには自信があった。しかし自動車学校は、練習時間は50分ときっちり決められていて、その時間内にカリキュラムに規定された動作を習得しなければならない。

最初は穏やかだった教官が徐々にイラだってくるのがわかる。その度にわたしは萎縮する。ますます動作は精彩を欠く。教官がイラつく。わたしがさらに萎縮する。悪循環。

鈍臭さで他者をイラだたせるというのは小学生以来のプリミティブな体験だ。普段様々な工夫を凝らしてなんとか誤魔化せていたはずの生来の要領の悪さが剥き出しにされ、いたたまれない。

結局50分間でわたしはマトモにカーブすることもままならかった。教官に何度もブレーキを踏まれ、横からハンドルを握られた。にもかかわらず、とりあえず技能1〜3の合格のスタンプは返ってくる。えっ。あれで?なんで??自己評価と結果が一致せず、ますます混乱する。



4日目

信号について学んだ。

驚くべきことに講師は女性だった。女性もいるんだ、と思った。なぜこれが驚くべきことかは…(以下略)


学科が終わると大体学校の近所のルノアールへ寄る。3回目の来店だが、3回中3回とも、ねずみ講の方々がいた。

「20万!20万取るイメージ作ろうぜ!!」

「なぁ?今日のおまえより明日のおまえが成長してないと意味ないじゃん??今が楽しいだけじゃダメなんだよ。来年・再来年の自分がどうなってるか、ちゃんとイメージしてる??」

「誰と知り合いなのかっていうのが大事なんだよ。有名な人とか政治家とかと人脈があるってことは常に金が集まってきてるってことになるだろ。」

「あの人はねぇ、お金の管理がなってないのよ。たった10万円の買い物も分割でするんですって。毎日働いて何してるのかしら…(笑)」

「最初に入った会社が超ブラックで。朝の2時とか3時とかまで働いて。でもわたしがここにいても意味ないなって感じたんです。必要とされていないっていうか。」

「ウチなら歩合制だからちゃんと働いた分は成果になるよ。」

彼らの話を聞いていると、彼らの錬金術の戦略とその立案と実行にかかる労力は大したもので、20万、あるいは生計を立てるお金を稼ぐだけならなら、わたしのようにしがない職につきチマチマと働く方がかえって楽なのではないかと思える。

しかし、彼らはお金だけを求めているのではない。派手に稼いでいるという外聞。目に見える成長。自己有用感。誰かに必要とされているという実感。ヒリヒリするような人生の、はっきりとした輪郭を切に求めている。

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