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月と蝉

毎日眠い。だがしかし今日は昨日までの眠気がお遊びであったかのように眠い。

憎き憎き例の月のものがきた。

大体からして生理がないと妊娠出産ができない哺乳類を設計した時点で神様は無能か相当意地が悪いやつだ。毎回神様に悪態をつきながら、腹が痛くなったり吐き気がしたり怒りっぽくなったりさまざまな不快感に襲われる。

今月はとにもかくにも眠い。

眠いというよりほぼ気を失っている。誰かがわたしの意識を掃除機で吸い取っているのではないかと思えるほど眠い。

そこでふと気がついた。意識朦朧とベッドに横たわるわたしを尻目に、外でミーンミンミンミンと精力的に鳴いている蝉。これだ。

彼らが大きな声で鳴くために、人間のエネルギーを吸い取って貯めておくタンクが地下にある。彼らはそこからエネルギーを受信して鳴いている。

よく考えてみたら、蝉の見た目は地上のものとは思えない。どちらかといえば、宇宙人に近い。人間が宇宙人を描こうとしたら、蝉をお手本にするのが手っ取り早い。あんなに大きくな声で鳴き続けることのできる虫は他にいない。ただごとではない。大体の地球の生き物は体力温存のため、緊急時か必要に迫られてわずかな音量の音しか発しない。彼らの声の音量は桁違い。地球での度を越している。

そう。彼らは宇宙からやってきて地下で地球を支配している。やたら長いとされるサナギの期間もそのためだ。地下で地球の知的生命体である人間、つまりわたしたちの力を削ぎ、自分たちが繁栄するための施設を建設し、戦略を練っている。

夏は暑いから大抵の人間が弱って屋内でじっとしているので、エネルギー源を探し、吸い取るのに都合がよい。夏休みならなおのこと。弱った人間の真下へ行き、便所すっぽんのようなかたちをした機械でエネルギーを吸い取る。タンクの中のエネルギーがぱんぱんに溜まりきると、彼らはそれを使い、満を辞して地下から這い出て手頃な木にしがみつく。羽化をして、地下からのエネルギーを受信し、鳴く。鳴いて、交尾をして、子孫を残す。

そうして7日程経つと、わたしは生理を終えて、ベッドから這い出る。彼は任務を終え、命が尽きる。

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