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書評

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2021年12月の記事一覧

紙の上ではなく、路上から。上からではなく下からのフェミニズムが必要だー堅田香織里「生きるためのフェミニズム パンとバラの反資本主義」

紙の上ではなく、路上から。上からではなく下からのフェミニズムが必要だー堅田香織里「生きるためのフェミニズム パンとバラの反資本主義」

本書はまさに「99%のためのフェミニズム」を語る本邦では極めて珍しい書籍の一つである。もちろん参照されたのは、2019年に刊行され、2020年に邦訳もされ話題となった『99%のためのフェミニズム宣言』(シンジア・アルッザ、ティティ・バタチャーリャ、ナンシー・フレイザー共著/恵愛由・訳・人文書院)である。とはいえ、本書で語られる「パンとバラの反資本主義」及び「99%のためのフェミニズム」について日本

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誰も見たことのない、二人だけが辿り着ける「高み」を提示ー上野千鶴子・鈴木涼美「往復書簡 限界から始まる」

誰も見たことのない、二人だけが辿り着ける「高み」を提示ー上野千鶴子・鈴木涼美「往復書簡 限界から始まる」

 本作において、上野千鶴子に「ぶつけられる」ことになった鈴木涼美は、今日最も取り扱いの難しい作家の一人である。

 エーリッヒ・フロム『愛するということ』の翻訳者であり、法政大学名誉教授であった父と児童文学者である母に「愛されて育」ち(本書324頁)、知性と経済力を手にした、大胆な書き手である鈴木涼美は、修士論文を基にした『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』でのデビュー以降

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