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【HRMエキスパートの視点】第7回施策と結果の相関を科学し、人事パーソンとしての感性を磨く

CHROFYは、「人的資本」や「人的資本経営」に関する専門家たちのご協力のもと、人事・経営に役立つ情報を定期的にお届けしています。

【HRMエキスパートの視点】では、事業会社の人事部門における実務視点と、HRMコンサルタントの視点の両面の視点をお持ちの株式会社Trigger 代表取締役 安松 拓也氏から、「人的資本」や「人的資本経営」に関する業界の動向や見解をご紹介いただいています。

第7回のテーマは、「施策と結果の相関を科学し、人事パーソンとしての感性を磨く」です。


前回第6回のテーマ「経営戦略と人事戦略をつなぐ人材マネジメント史の重要性」において、
- 組織のカルチャー・体質や慣性などは、理念や経営トップのスタイル、構成する人材の特性や関係性など、目に見えない多くの要素が複合的に織り成しているものであり、何をしたらどうなるか?のケミストリーは組織ごとに異なる
- 組織固有のこの“癖”に対する私たち人事の“読み”が、経営の課題を踏まえた人事施策・取り組みの成否に大きく関わってくる。そして“癖”を解明する方策の1つが自社の人材マネジメントの歴史を紐解くこと
という話をしました。

一方で、この“読み”の精度を高めるために、行った施策と影響・結果の相関をもっと定量的に解明することができればいいのに・・と感じられた方も多いと思います。私自身も常々そう思うのですが、どうしてそうできないのでしょうか?

結果を左右する要因は1つではない

通常、何かの人事施策をする場合、現状に対する問題事象を踏まえて課題設定を行い、その解決策を施策として実施します。したがって、施策の実行に関するKPIと、効かせたい結果に関するKPIそれぞれの変化を見守ることが施策の効果測定になると思います。ただ、ここがまさに組織のケミストリーにあたる部分なのですが、その結果には実は多くの周辺要因が作用していて、「AだからB」という単純な話ではないのが実際に起こっていることだと思います。

エンゲージメント向上の最重要KPIは外国籍人材比率?

例えば私が過去にご支援した会社では、「ワークエンゲージメントを高めたい」という目的のもと、ビジョンの浸透活動や仕事のやりがいワークショップなどの施策に取り組んでいらっしゃったことがありました(あるあるだと思います)。施策の甲斐もあってか、ワークエンゲージメントのスコアは高まりました。
ただ、後々、かなり頑張って広範に相関関係を調べてみると、結果的にワークエンゲージメントのスコアに最も変動影響が強かったのは、「外国籍人材比率」であろうという推定に行き当たりました。ちょうどこの頃、この会社では国をまたいだ組織の再編により、多国籍の人材が同じレポートラインの中に混在して仕事をすることになりました。
実はこれに起因して、働き方・働く場所・時間、仕事のインフラなど、様々なことを見直す必要が生じ、また共通トピックとして各々の拠点(国)での仕事の仕方やその良さ・課題などを会話する機会も増えたというわけです。

後から言われれば「確かに」とも思うのですが、ワークエンゲージメント向上の最重要KPIが外国籍人材比率とは、私自身は当時なかなか思い至ることができませんでした。

施策と結果の相関を科学するテクノロジーへの期待

前述の例では、担当の皆さんが時間と労力を投下したことで推定を導くことができましたが、このようにあらゆる要因を結果と見比べてみて分析することができるのか、、、それはとても難しい作業です。

この問題に対して、今後はテクノロジーの進化により、広範な現象データからそれぞれの変化と、その変化に影響を与える要因の発掘が比較的容易に行えるようになるのではないでしょうか。完全な要因特定とまではいかなくても、ある現象・結果に対して、この変化に最も影響を与えた別要因の候補がリストアップされるだけでも、人事施策の成否はずいぶん変わってくるように思います。

CHROFYにおいても、多くの現象データ間の、相互の変化に影響を与える要因の発掘を今後の機能発展としてぜひ期待しています。

人事パーソンとしての感性を磨くテクノロジーの活用

とここまで言及してきてもなお、組織のケミストリー、組織の“癖”を完全に論理的に解明することはできないし、それらを読むこと対しては、施策に携わる人事パーソンの見識と感性が最も重要であると私は思います。
その感性を磨くために、テクノロジーによる人事施策と結果の相関関係分析の活用は有用である、というスタンスを示した上で、本稿を閉じたいと思います。

安松 拓也(やすまつ たくや)株式会社Trigger 代表取締役

CHROFYは、今後も、人事・経営・IR担当者に向けて「人的資本」に役立つ情報を定期的に発信していきます。

何か「人的資本」や「人的資本経営」について、不明点やお悩みをお持ちの方は、ぜひ、お気軽にご相談ください。

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