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新品オフィス家具の月額レンタルサービス「Kaggレンタル」様への余計な心配と大きな期待

47インキュベーションさんが運営するオフィス家具の通販サイト「Kagg.jp」が、新品オフィス家具の月額レンタルサービス「Kaggレンタル」を開始しました。現在は東京23区限定のようですが、今後の広がりには非常に注目&期待しているところです。ただ、いくつか気になることがありましたので、オフィス業界で禄を食む一人として(余計なお世話ですが、勝手に)この家具レンタル事業について考察してみたいと思います。

オフィス家具の買い替えサイクル

皆さんはオフィス家具って何年くらい使うものだと思いますか?3年?5年?10年?それとも、もっと長く、でしょうか。家具メーカーが定める製品の保証期間は、構造体に関わる部分でも3年程度が一般的ですが、JOIFA(一般社団法人日本オフィス家具協会)が定める「標準使用期間」は、デスクで8~10年、タスクチェアは8年、木製椅子で5年、などとなっていて、メーカーの保証期間よりもだいぶ長い期間使えることが分かります。ただ、実際にオフィスで使われる年数としては、もっともっと長期に及ぶケースが多いのではないでしょうか。私がオフィスづくりの営業をしていたときには、お客様のオフィスで見かけた家具の中には「20年以上使っている」というものもありました。陳腐化のスピードが非常に早い家電製品などと比べれば、オフィス家具は非常に寿命の長い製品であると言えるはずです。
 
つまり、オフィス家具は「一度買ったらそうそう買い替えることはない」のが当たり前のものだったと言えるでしょう。日本の主要なオフィス家具メーカーは、各社ともほぼ毎年、新しい製品を世に出し続けており、その中には非常に優れた製品が多々あるのですが、「1~2年前に移転に合わせてオフィス家具を買い替えた」という企業では、どれだけ新しい家具を使ってみたくても、次の移転のときまで買い替えられないのが一般的です。

「Kaggレンタル」に感じる大きな可能性

ところが、オフィス家具をすべてレンタルで揃えられる、となったらどうでしょうか。もちろん、毎年のように家具を新しいものに入れ替えるのは、入れ替え時にかかる経費がかさむのでコスト的にはメリットが少ないかもしれませんが、今までのように「購入後、5年たっても10年たっても、ずーっと同じ家具のまま」というオフィス環境を刷新するハードルはかなり下がるはずです。
 
「Kaggレンタル」で現在対象となっているのはチェアだけですが、今後、デスクや収納などオフィス内の様々なアイテムを気軽にレンタルできるようになったとしたら、これまでオフィス改装/移転の主な理由であった「人員が増えたから」「組織が変わったから」だけでなく、「従業員のモチベーションをあげたい」「季節に合わせて色を変えたい」「常に最新の家具を使ってみたい」といった理由での家具入れ替え需要がでてくるかもしれません。
 
オフィス家具を購入(リース含む)するのではなく、レンタルするという選択肢が加わることは、オフィス業界にとって大きな可能性を秘めたチャンスだと思えます。

「Kaggレンタル」への疑問と心配

「最低1脚からでもレンタルできる」というのは非常に魅力的な特長ですが、逆に、レンタル可能な数量の上限が設けられていないようなので、例えば数百脚・数千脚単位の大口レンタルが突然「返却」となった場合、さまざまな課題が生じてくることが容易に想像できます。
 
すぐに思い浮かぶのが、レンタルアップ品の保管に大きなコストがかかりそうだということです。オフィス家具は、一部のワークステーション(デスク)やパーティションなどには解体してコンパクトに積み重ねて保管することができる製品もありますが、チェアや収納などはそもそも分解することが難しく(仮にできても再度組み立てるのにコストがかかる)、中古品としての売却先や再レンタル先が見つかるまで保管をするのにかなりの広さの倉庫が必要になってしまいます。
 
「Kaggレンタル」では、最低利用期間がなく "いつでも返却できる" ことが特長の一つのようですが、この返却タイミングが読めない、というのが困るところです。もし「レンタル終了の●ヶ月前に事前連絡をしないといけない」というルールがあれば、保管場所や再販先を探す時間が確保できるものの、ある日突然、「今月で500脚の椅子のレンタル、終わりにします!」と言われたら、なかなか大変だと思います。

オフィス家具レンタル市場を広げるために

レンタルアップ品の再レンタルや中古品としての売却がスムーズに行えれば、上述の心配は緩和されるのではないかと思います。そのためには、どんなオフィス家具が、何台くらい、いつ頃、レンタルアップしてくるのか、という情報を、ユーザー間や新規の家具を供給するメーカー側とで共有できる仕組みが必要なのではないでしょうか。新品家具の在庫状況をメーカーに問い合わせるのと同様、レンタルアップ「予定」品の状況を知ることができれば、効率的&計画的に移転や改装の際に家具レンタルを使っていくことができるのではないかと思います。
 
また、短期のレンタルアップ品が、二度三度と別のユーザーに渡って再利用されていく、というケースを考えると、オフィス家具自体に相応の耐久性がなければなりません。「新品レンタルはいいんだけど、中古レンタルはすぐに壊れちゃってダメだ」と評価されてしまうと、新品レンタルしか需要が生まれず、レンタルアップ品の行き場がなくなり、事業としての継続性が保てなくなってしまう気がします。デスクやテーブルなどの壊れにくい製品はまだしも、可動部の多いチェアや収納には長期に渡って一定の品質が保たれる耐久性がないと、レンタル事業には不向きだと言えるでしょう。
 
いろいろな心配を勝手にしてしまい、完全に余計なお世話だ、という感じになってしまいましたが、家具レンタル事業の普及はオフィス業界全体の市場拡大にとっても非常に意義のあることだと思いますので、「Kaggレンタル」さんには大きな期待をしています。応援してます!

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