【まとめ】ミステリーの書き方 有栖川有栖編
アイデアから作品へ
「ミステリーの書き方」に収録された内容を紹介していく第二弾。
今回は有栖川有栖がどのようにアイデアを作品にしているかまとめていく。
彼の場合は、広義の意味でのトリックを出発点に、そこからどのように設定や登場人物を膨らませていけば効果的になるかを考えるという。
推理小説は最後にトリックが明かされることが多いので、結末から書くタイプの作家だといえるだろう。
「蝶々の羽ばたき」ができあがるまで
本章で例にあげられているのは「ブラジル蝶の謎」という本に収録された「蝶々の羽ばたき」という短編だ。内容の性質上、ネタバレ要素があるので注意してほしい。
トリックのもととなるアイデアを思いついたのは、お風呂でタイルを眺めていたときだった。バスタブからあふれたお湯がタイルに広がっていく様子から、砂浜にのこった足跡が消えてしまうトリックを考えついたという。
しかし、それだけではまだ作品にならない。
Q.砂浜の足跡が消えてしまうくらいの波はどのように起こせるだろうか?
A.地震を使う。ただし、近場で起こった地震だとすぐわかってしまうので、地球の裏側からきたチリ地震をモチーフにする。
Q.チリ地震は1960年。どうやって現代の物語にするか?
A.電車で出会った老人に、不思議なことがあったと語らせる。それを名探偵が鮮やかに解き明かす。
Q.誰の足跡がどんな状況で消え、誰が不思議がるのか?
A.時代背景的に、学生運動で交際を禁じられた男女の逃避行にする。出題者の老人は、それに立ちあった友人ということにする。
Q.この作品のテーマは?
A.地球の裏側から来た自然災害が、誰かを幸せにすることもある。さながら、バタフライエフェクトのように。愛や友情の物語ではなく、希望の物語にしたい。
ざっと箇条書きにしてみたが、アイデアを論理的に展開し、連想ゲームのように解決していることがおわかりだろう。
最初からテーマを決めてしまって書く方法もあるのだろうが、このやり方のいいところは破綻が少なくなることだ。
個人的には、自分の創作方法はこのやり方に近いのではないかと思う。
感性で書きすすめるタイプの才能とちがって、理詰めで物語を作れるので、努力でなんとか身につけられそうなのが嬉しいところ。
そんな有栖川有栖の代表作といえば、火村英生シリーズだろう。
ドラマ化もされているくらいクオリティの高い作品ばかりなのでオススメだ。
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