『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう』はトンチキに見えてちゃんと推理小説している良作

「大江戸」に「科学捜査」という文字列は普通続かない。江戸時代には科学的捜査は存在しないのだから。書店で見かけてインパクトに惹かれて読んでみたが、なかなかに良い推理小説だった。

主人公、関口優佳はミステリマニアの元OL。祖母から相続した家に文政年間の江戸に通じるタイムトンネルがあり、江戸と現代を行き来して同心たちと犯罪捜査に挑む……という突拍子もない設定。時代物はこういう突拍子なさを受け入れる素地があるジャンルなのだ。

現代の科学捜査で無双!かと思いきやそうはいかない。科学捜査(分析は都合良く存在する分析マニアがやってくれる)で得た証拠は奉行所では使えないのだ。江戸時代に指紋は証拠能力を持たない。優佳は答えを知った状態で、江戸時代の人間が納得するように捜査を導かなければならない。ここが推理モノとして秀逸なところだ。

江戸時代と科学捜査の妙な組み合わせによって、ホームズから連綿と続く推理の醍醐味が強く出ているというのは不思議だが面白い。シリーズ化も納得の面白さである。

終盤では優佳とともに捜査にあたる同心、伝三郎について気になる引きもあり、時間ができたらシリーズを読みたいなと感じた。積み本が多い……


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?