サッカーがわからないので、強さをプロ棋士で想像してみた

サッカーがわからない。ゆえに日本がドイツに勝ったと聞いてもどれくらい凄いのかがわからない。

大会前から知っている日本代表の選手といえば吉田麻也、長友佑都、久保建英の三選手くらい。オールナイトニッポンのリスナーなので、吉田麻也選手についてはサッカー選手というよりはベラジョンのCMに出ている人という認識でいる。

そんな人間でもFIFAランキングというものがあり、ナショナルチームの強さが格付けされていることは知っている。最新版(2022-10-06版)を見てみると、ドイツは11位、日本は24位らしい。

さて、本家のランキングを見ると、右に1800とか1500とかいった数字が見える。これは何だろうか。強豪が1800くらいになる数値といえば、もしかして、イロレーティング……? と思い調べてみるとやはりイロレーティングであった。

将棋ファンにとってイロレーティングはなじみ深い数字だ。元々はチェスで使われる指標であったが、いつしか「ご近所」である将棋でも使われており、非公式ではあるがプロ棋士のレーティングも計算されている。

つまり、イロレーティングが公開されているということは、サッカーの強さが将棋の強さで何となく想像できるということになる。

そんなわけで今回はFIFAレーティングを棋士のレーティングに置き換え、W杯を妄想棋戦として楽しむという将棋ファン以外には訳が分からない遊びをやってみた。棋士のレーティングは11/26版(藤井竜王-広瀬八段の反映前)のshogidata.infoを参照している。

FIFAランキング上位を眺めてみる

手始めにFIFAランキング上位を見てみよう。まずは1位のブラジルは1841.3。将棋換算だと渡辺明名人の1842.1が一番近い。おぉ、ブラジルの強さが想像できてきた。

では2位のベルギーのレーティングはどれくらいかというと1816.71。将棋では菅井竜也八段の1815.2が近い。つまりブラジル対ベルギーの試合は渡辺明名人と菅井竜也八段の対局ということになる。対抗形の熱戦になりそうだ。

3位のアルゼンチンは1773.88。将棋では大橋貴洸六段の1789.9が近い。ちなみに初戦でアルゼンチンに勝ったサウジアラビアのレーティングは1437.78。将棋では近藤正和七段の1437.9が近い。つまり近藤七段が大橋六段に勝った対局を想像すれば良いことになる。全国のゴキゲン中飛車党が泣いて喜びそうだ。

ちなみにドイツ対日本はレーティング的にはどうなのか

11位のドイツ(1650.21)に最も近いのは船江恒平六段(1649.3)。24位の日本(1559.54)に最も近いのは中村修九段(1560.7)である。この二人の対局を想像してみると、中村九段が大いに勝ちうるような印象を持つ。少なくともサッカー報道ほど番狂わせという感じはしない。過去の対戦成績については後述するが、少なくともイロレーティング上は「割と勝てる」という感じがする。あれ、もしかして煽りすぎでは……?

将棋ファンなら、各国の強さがなんとなく想像できてきたのではないだろうか。そんなわけでグループAから見ていこう。決勝Tまで見たいので、勝敗については過去の対戦成績で勝ち越している方が勝ち、過去に対戦がない場合はレーティングが上のほうが勝利、という想定でいく。

グループA

カタール(1439.89)……平藤眞吾七段(1440.6)
エクアドル(1464.39)……長岡裕也六段(1464.4)
セネガル(1584.38)……今泉健司五段(1585.8)
オランダ(1694.51)……丸山忠久九段(1694.6)

丸山九段が3勝で一位通過。平藤七段、今泉五段がともに1勝1敗1分といきなりの接戦。本家W杯のグループリーグは勝ち点>得失点差>総得点>直接対決の結果>フェアプレーポイント>抽選というルールになっている。

いや、将棋の得失点差って何やねん。

持将棋になれば得点勝負になるが、そういう勝負は稀なので勝ち点が同じ場合は直接対決の結果ではかることにする。というわけで対・長岡六段戦の勝利数が多い今泉健司五段が二位通過。

グループB

イングランド(1728.47)……斎藤明日斗五段(1729.0)
イラン(1564.61)……井田明宏四段(1568.7)
アメリカ(1627.48)……大石直嗣七段(1627.3)
ウェールズ(1569.82)……古森悠太五段(1569.1)

この4人は井田○-●大石、古森○-●井田の2局しかないが、レーティング通りだと斎藤五段が3勝で一位通過。大石七段が2勝1敗で二位通過。

グループC

アルゼンチン(1733.88)……大橋貴洸六段(1789.9)
サウジアラビア(1437.78)……近藤正和七段(1437.9)
メキシコ(1644.89)……深浦康市九段(1646.0)
ポーランド(1548.59)……北浜健介八段(1549.3)

大橋六段が3勝で一位通過。深浦九段が2勝1敗で二位通過。ここまでだいたいレーティング通りである。

グループD

フランス(1759.78)……糸谷哲郎八段(1756.0)
オーストラリア(1488.72)……畠山鎮八段(1489.7)
デンマーク(1666.57)……髙野智史六段(1666.8)
チュニジア(1507.54)……小林裕士七段(1506.0)

意外にも髙野六段はこの中だと小林七段としか公式戦での対局がない。非公式戦ならAbemaトーナメントで糸谷八段と一回くらいはやっていると思うのだが、非公式戦を数えると大変なのでレーティング通りの勝敗とする。

糸谷八段が3勝、髙野六段が2勝1敗で通過となった。

グループE

スペイン(1715.22)……千田翔太七段(1718.1)
コスタリカ(1503.59)……阿部隆九段(1504.7)
ドイツ(1650.21)……船江恒平六段(1649.3)
日本(1559.54)……中村修九段(1560.7)

さて、日本である。実は中村九段、船江六段に2勝1敗で勝ち越している。なので日本-ドイツは偶然にも本戦のスコア通りで日本の勝利となる。千田七段は予想通り2勝1分で一位通過。ちなみに中村九段とは過去1-1で、直近では今年の1月に王将戦一次予選で千田七段が267手という長手数の将棋を制して勝利している。

さて、ここまでレーティング通りの結果が出ていたが仮想の勝敗を「過去の対戦成績」とした面白さがここに出ている。阿部隆九段といえば近年は若手に押されているものの、A級1期、竜王戦1組7期の強豪である。通算11-6で中村九段には大きく勝ち越している。サッカーで11-6が起こったら怖いが、阿部九段が2勝1敗で二位通過となった。

グループF

ベルギー(1816.71)……菅井竜也八段(1815.2)
カナダ(1475.0)……佐藤秀司八段(1475.5)
モロッコ(1563.5)……阿部健治郎七段(1562.1)
クロアチア(1645.64)……佐々木慎七段(1646.2)

菅井八段、佐藤八段がともに2勝1敗。佐々木七段は菅井八段に勝ち越しているものの佐藤八段、阿部七段には負け越しており1勝2敗で惜しくも敗退となった。

直接対決では菅井八段が佐藤八段に勝ち越しているため、菅井八段が一位、佐藤八段が二位で決勝T進出。実際にカナダには勝ち上がってほしい。

グループG

ブラジル(1841.3)……渡辺明名人(1838.5)
セルビア(1563.62)……村田顕弘六段(1562.5)
スイス(1635.92)……屋敷伸之九段(1632.5)
カメルーン(1471.44)……森下卓九段(1464.9)

渡辺明名人、圧倒的に強い。全勝で一位通過となった。屋敷九段と森下九段が1勝1敗1分で並んでいるが、直接対決では森下九段が勝ち越しており森下九段が二位通過となった。

グループH

ポルトガル(1676.56)……杉本和陽五段(1676.8)
ガーナ(1393.0)……髙野秀行六段(1393.4)
ウルグアイ(1638.71)……渡辺和史五段(1639.1)
韓国(1530.3)……伊藤真吾六段(1529.8)

この組も杉本五段が全勝で一位通過。渡辺五段と伊藤六段がグループGと同じく1勝1敗1分で並び、直接対決も1-1。これは……どうすれば良いのだ……

http://kenyu1234.php.xdomain.jp/ で確認した

全部サッカーのスコアっぽいので勝敗を得失点差と扱って伊藤六段の二位通過とします。

決勝Tの組み合わせ

というわけで決勝Tの組み合わせは以下のようになった。

https://terus.jp/ にて作成した

リアルなんだかリアルじゃないんだかよく分からない決勝トーナメントだが、どの対局も面白そうに感じるのは私だけだろうか。決勝トーナメントを行うかは未定。

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