狩猟の想い出〜経験がコツとなる〜
こんにちは、長老大学オンライン支店スタッフのあいかわです!
今回は、U様の聞き書きをさせていただきました。かくしゃくとされているU様は控えめな笑顔がとても素敵な方ですが、なんと昭和9年生まれで90歳に近いということで、本当に驚きました。そんなU様は昔、山で趣味として猟をされていたとのことで、今回は、U様からお聞きした猟に関する貴重なお話を紹介したいと思います。
U様:猟は、三十歳にならんばあから始めました。子どもが小学校の上級生になるころまではやってたと思いますね。狩猟をやろうと思ったのは、人がやりゆうのを見たり、話を聞いたりして、自分もやってみとうなってやったんです。(猟は)近くに何人もやる人がおりました、犬をつこうてやる人が。部落の歳のいった人に、ビーグルを飼いよる、猟のうまい人がおってね、その人について。誘うてくれて、習うたんですけんど。うちは山だけんど、周りに家はぼつぼつある。部落に、三十軒ばあはあるね。猟犬は、わたしが使いよったのは、いうたら雑種というのか、日本犬というのか。耳が垂れちょったけんどね、ふとい犬だった。犬の名前は、黒いからクロ。男の子。
犬を飼ったあと、夜の山に行って、ウサギが穴から出ちょるけ、犬は、この匂いを知るのが早いで、勉強さして、訓練する。犬の稽古には夜行くんです。
「クロくんってかわいいですね」というわたしに、「かわいいよ」と笑いながらU様は答えてくださいました。犬と人間との信頼関係があって初めて、猟は成立するんだなとひしひしと感じました。
わたし:銃はどういう銃を使われていたんですか?
U様:散弾銃で、猟銃は猟銃です。最初は単発銃だったんです、一発撃ったら弾をこめ替えにゃいかんやつ。終いには、二連の出るのを持っとったけんど。銃は、柿本商店で買うた。いまは売りよるかはわからんけんど。
わたし:いまは、狩猟の講習を受けて免許をとらないといけないと思うんですけど、当時はどうでしたか?
U様:その時分もそうやったよ。講習があって、免許をとって。本山にちょうど行きとうて、けど大豊の役場でやりよったときがあって、大豊で話を聞いて受けたんです。
銃にもいろいろな種類があるとのことで、やはり講習をしっかり受けて取り扱いを行なうのだなと勉強になりました。
下記のサイト様で、U様がお話しくださった猟銃についての解説がなされています。
「一般社団法人 大日本猟友会」様(2023/05/29)『狩猟への誘い 狩猟用具』(http://j-hunters.com/intro/goods.php)
また、猟ではどんな動物かとれたのか、獲物についての話も伺いました。
U様:獲物は、犬で猟するのはヤマウサギ。野ウサギですね。ウサギを穴から追い出して。そのウサギが逃げるところをだいたい想像して、走りそうなところへよってったり。何匹も追い出して。
獲物の大きさは、そんな大きいのはとったことはないです。でも白ウサギよりは大きい。あと(ヤマウサギは)走るのが早い。やっぱり稽古とかせんと、最初はええとこには当たらんね。けど稽古してね。
あと、飛びゆう鳥も。鳥は、飛ばにゃあ撃たん。飛ぶまでに寄っていきよって、飛んだときに撃つ。それをやり始めてから、動きものにも当たるようになりました。そうせな、なかなか動きゅうものには当たらんね。弾は、腹巻きみたいなのに仕舞ってます。
わたし:獲物は、1日何匹とれたりするんですかね?
U様:1日2匹獲ったことが最高じゃの。犬に追わせるけんね。
犬がようないと、とれんから。ウサギを追い出して、そのウサギについていける犬じゃないと。(長いときは)半日ばあ(犬がウサギを)追いよったけんど。
わたし:なにか怖い思いをされたことはありますか? 弾が変なところに飛んでしまったとか。
U様:あはは、そりゃあないですよ。
自分が気をついちょらないけんきね。矢先(銃を向けた先)に人がおったら大ごとやき。
猟に関して、やってはいけないと言われてた決まりのようなものはない。でもだいたいが、人の山には無断では入ってはいけないと言われてるね。
獲物を半日も追い続けるという話に、わたしはとてもびっくりしてしまいました。すばしっこいウサギをずっと追いかけるというのはすごいことですよね。逃げ続けるウサギの体力もさることながら、猟犬というのは本当に忠実なんだなと感じます。それに、自分自身で稽古をつんで、信頼できる犬とともに猟を楽しまれるというのは、とても素敵なことだと思いました。
そして、そうやってとれた獲物について、とったあとどうされるのかについてもお話を伺いました。
U様:とれたウサギは、食べたり、人にあげたりね。
わたし:ウサギは鍋にすると美味しいと聞いたことがあります。
U様:そりゃあ、ウサギは臭みもないし、油もないしね。あと鳥は、いろいろやけんど、ツグミなり、あと鳩もおったけんど。キジバト。鳩も、撃ったあとは、人にあげたり。キジバトはね、ねずみ色というようなね。ところどころ白い所もあるような。
U様のお話を聴いたあと、ハトについて調べてみましたが、ひとくちにハトといっても、じつは何種類もいるということを初めて知り、とても勉強になりました。また、U様に猟のコツについて伺ったところ、とてもよい話を聴かせていただくことができましたので、最後にその部分を紹介したいと思います。
わたし:Uさんが思う、獲物を仕留めるコツみたいなものはなにかありますか?
U様:獲物を仕留めるコツはね、ふふ……走りよるもの、動きものを撃つときは、前を撃たないかんという人もおる。けんど、前を撃ったら当たらん、やっぱり獲物自身を撃たにゃあ、走りゅうものは当たらんという人もおるけん、ハハ。そうやって、自分の経験で語るようにはなって。とにかくはように構えにゃあ、銃を。獲物が走るように走ってね。森のなかではなかなか撃ちにくいけんど。
確かに、おなじ物事に取り組んでいるとしても、その取り組む人によって、物事に対して感じることがまったくちがうということはよくありますよね。U様のように、人の意見を聞いた上で、自分の経験によって、自分にとってのいちばんよいやり方を見極め、勘を養っていくのがたいせつなんだなと大変勉強になりました。なにごとも経験だとよくいいますが、本当にそのとおりなんだなと感じます。
U様、貴重なお話を聴かせていただき、本当にありがとうございました!
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