映画ログ 美術館を手玉にとった男(2015)

Amazon prime videoで鑑賞

原題 ART AND CRAFT
監督 サム・カルマン、ジェニファー・グラウスマン、マーク・ベッカー
製作国 アメリカ
上映時間 89分

出演者
マーク・ランディス
マシュー・レイニンガー
アーロン・コーワン
ジョン・ギャッパー

アートの世界はとても奇妙だ。
本当の色は誰にもわからない。みんな間違っている。大切なのは想像力だ。

この作品の主人公はマーク・ランディス。慈善活動を行っている、と本人は言う。彼の言う慈善活動とは、過去の名だたる著名な作家の作品を模写し、それを美術館に寄付すること。人々はこれを犯罪と言うが、彼は金銭を一切受け取っていないので、罪には問えない。
というかなり引きの強い出だしで、この作品はスタートする。ドキュメンタリーではあるが、全体的にエンターテイメントな仕上がりにまとまっているので、すごく楽しめた。

マーク・ランディスは、とても繊細で危うく、大胆な人だと感じた。
彼は自分自身の裁かれることのない罪をよく理解している。だから、自らの行動を慈善活動と言っているのではないか。とても純粋な悪である。

演出の良さもこの作品の魅力だと思う。
母親の死について語るシーンはとても生生しく、模写をするシーンはとてもスリル感を、とてもよく描写していたと思う。

彼の絵を描くタッチは迷いがなく、自分の方法で仕上げていく。まるで、自分自身のオリジナルの作品のように。
彼は純粋に絵を模写するのが好きである。そして、それを人に評価してほしいと思っている。彼が普通の画家として活動していたら、今ほどの注目を浴びて評価されただろうか。成り行きとはいえ、彼は時代に画家として名を残し、大成を収めた。
彼の行為が悪だと、額面通り受け取るのは間違いなのではないかと思う。言うなれば、彼自信が技術と美術の化身なのではないだろうか。しかし同時に、それが彼の業だということも、また事実である。

ランディスの言葉は本当に興味深い。デザインの世界にいる人には、是非見てもらいたい。

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