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「差別はしない」というマインドの落とし穴

ここ最近twitterをにぎわせていた、つるの剛士さんのツイート。

基本こういうことに対しては、「賛成だろうが反対だろうが何だろうが、反応してしまえば拡散に加担してることになるから」と、リツイートもせず黙ってる派だったのだが、今回はやっぱり思うことがあったので、超久しぶりにnoteを書いているでござる。

概要としては、つるのさんが庭で育ててたパクチーが盗まれて、調べたら犯人は外国人で、ということをツイートしたら「それは外国人差別を助長してるのではないか」という人と「つるのさんは被害者なのになんでそんなことを言われなきゃいけないんだ」「事実を述べただけじゃないか」という人と、まあいろんな意見があって、ってことなんだろうけど。

確かにパクチー盗まれたのは気の毒だし、窃盗は立派な犯罪なんだけど、わざわざ外国人って言う必要あるか?っていうのが最初のぼんやりした印象だった。

(全部書き終わってから追記:もう一回確認してみたら、この「外国人だった」っていうのもだいぶ憶測じみてるんですよね…。日本語が分からないって言ってる=外国人だ、みたいな。その思考自体が差別じゃないかって思ったの私だけ?時と場合によっては日本人でも日本語わからないふりすることありますよ by英語をそこそこ話す人笑)

そしたら、つるのさんがこんなツイートをしてたんですね。


これを見て私は、
あぁ…この人、なんもわかってないんだな…
と、思ってしまった。

何が?って、

①差別は、無意識にしてしまうものであること。
②有名人である自分の発言力が、そうでない他の人に比べて大きいということ。
③自分の発言が、他人の差別意識を助長してしまう可能性があること。

このあたりのことが、全くわかっていない。

つるのさんにとっては、「パクチーが盗まれて、犯人は外国人だった」という非日常的な出来事をツイートしただけなんでしょう。
だけれども、それを見た人たちは、いったいどう思うのだろうか。
「つるのさん大変だったんだなぁ」で終わればいいけど、「貧乏な“外人”が我々日本人のモノを盗んでる!」という風にツイートを拡散してしまうかもしれない。ツイートの内容はコントロールできても、見た人に与える印象までは、コントロールできない。

だから逆に言えば、つるのさんのキャラと行い(安倍さん大好き、日本国紀を愛読)も併せて考えて、「つるのさんはやっぱり外国人に対して差別的だ」という印象を持つ人もいるでしょうね。

さらに、つるのさんは芸能人なので、拡散力が大きい。
だから、今回のツイートとそれに対するリプライを見て、嫌な思いをしたり、日本での生活に不安を感じた外国の方もいらっしゃると思う。
「『外国人』って言葉でくくられて、自分たちも嫌な目で見られてしまうかも」って。
自分の発言がどこか遠くの人を不安にさせている、という意識は持っているべきだなと。

だから、「差別を助長しているのは紛れもなく犯人」という発言には、お前が言うか?!としか思えなかった。なんかもう、この一件のエッセンスが凝縮されている気がした。
こういうのナンセンスって言うんでしょうね…。

そして、何回でも言わせてもらう。
「差別は、無意識にしてしまうものである」
意識的にヘイトをまき散らす人もいるっちゃいるけど、それとは別に、何気なく言った言葉が誰かを差別していて、傷つけてしまうことはよくある。
「それ、差別じゃない?」って言われて気づく方が多いと思う。

…なんて偉そうに書いてますが、実は私もやっちゃったことがあります。
小学生から中学生に変わるとき、家族で上海に引っ越した時のこと。
両親がマンションのフロントで手続きをしてる間、私は妹と横で待ってたんだけど、その時にスーツケースが壊れてたことに気づいて。
「あー、もうこれ直らないね」と言った妹に対して、私は「まあでもしょうがないよね、中国で買ったやつだし。」と言ってしまった。

部屋に入った後、父からこんなことを言われた。
「さっき『中国で買ったから』って言ってたけど、フロントのお姉さんは日本語が分かるかもしれないよね?もし分からなくても、そんなこと言われてるって知ったらどう思う?これからは、『中国のものだから悪い』みたいに言うのはやめなさい。ね?」

それから上海で数年間過ごしたけど、私はできるだけ父の教えを守るように心掛けた。それは意外と難しいことだったけど、今思えば海外で生きていくにあたって大切なことだったと思う。「ガキの言ったことだし」としないで、しっかり向き合ってくれた父に感謝だ。
今隣の部屋でめっちゃいびきかいて寝てるけど。

ちなみに余談だけど、日本に一時帰国したときには、「日本人は礼儀正しい」とか、「日本人は優しくて丁寧」って言うテレビをたくさん見た。
けれど本帰国したら、ワンメーターの行先を伝えたタクシーの運転手には急にキレ気味な態度をとられたし、痴漢にもあったし、高校には暴言を吐く先生もいた。
「日本人だからこう」ということもないんだな、と痛感した。

「差別をしません」って有言実行できる人なんてそうそういない。
自分の中の思い込みや偏見に向き合って、それが差別につながる危険性を意識する必要があると思う。
そして「それ、差別じゃない?」って指摘しあえる空気ができるといいな。
相手のためにも、自分のためにも。


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