熱海の外湯が好きなんです(熱海外湯巡り)
関東圏からもっともアクセスが良い大温泉街、熱海。かつては新婚旅行の選択肢の一つ、その後、社員旅行のご一行の方を多く迎え、最盛期は1960年代後半で年間、500万人を超える宿泊者数。その後は社会の変化と共に、下り坂になるものの、再び持ち直し、コロナ前には300万人まで回復。ようやくコロナも落ち着きそうなところで、若者もかなり足を運ぶ場所になって来てます。
熱海に外湯はあるのか!?
ということで、熱海なんですが、休日ともなれば、ご覧の通りの盛況ぶり。お祭り並みの混雑、いつからこんなに若い人が足を運ぶようになったのかと思うほどです。
温泉好きとしては、熱海のお湯は半分海水じゃないかとか、加水・加熱でしょ、とかいろいろあるかもしれません。が!、しかし、「家康」も熱海の湯を愛して、江戸まで運ばせたほどなんで、熱海の温泉は伊達じゃない!だろうということで、その底力を拝見するにはやはり外湯ではないかと。いくつかご紹介すべく、出発です。
それにしても、熱海に外湯があるのかというところですが、他の温泉場と同様、どんどん潰れてしまい今は、まともな公衆浴場は2,3だけのようです。まずは、熱海の外れにある山田湯から。
まずは山田湯へ向かいますが…
熱海の次の駅、「来宮」から徒歩15分ほどの山田湯へ。
東京からだと、来宮までは同じ金額です。熱海で伊東線に乗り換えます。ちょうどこの日は、リゾート21の車両。先頭車両は展望車、窓は海側を向いているという観光列車です。
そうそう、以前踊り子号も推しましたが、熱海から下田方面にはこの列車も大変楽しめる列車です。
来宮下車。この駅から伊東線は左手に伊豆方面に進み、東海道線は右手を直進していて、丹那トンネル(7,804m)を直進して、目の前に立ちはだかる箱根の山を潜り抜けます。
こちら、熱海の梅園の最寄り駅、ちょうど見どころで、結構な乗降客。しかし無人駅となっており、お問い合わせ窓口は列が出来てました。
と、ほとんど人通りの無い所を歩いていると、向こうに人だかりが…。入り口にいた年配の方に、
「無料だから、是非どうぞ、是非」とか言われて、詳しい案内も見ずに、入りましたが、双柿舎という坪内逍遥の旧居とのこと。「小説神髄」とか名前しか知らないですが、どれどれと思いながら拝観。
別荘かと思いきや、旧居ということで、晩年15年をこちらで過ごしたとのこと。もともと、熱海の銀座通りという繁華街のあたりに住んでいたのですが、観光客が増えてあまりにも騒がしくなりこちらに引越してきたということです。旧居全体、設計にも自分で携わっている大正時代の建物。
こちら、土日だけ開園ということで、スタッフの方が2名ほどいて、丁寧に案内してもらいました。旧居の歪んだ感じのこちらの薄いガラスは「大正ガラス」だそうで、壊れたら、もう同じものはないそうです。
柿の木が二本あったところから、「双柿舎」と名付けられ、最近まで、早稲田の学生が合宿でも使われていたようです。筆塚の奥には、朽ちた柿の木がそのまま残されてます。
庭園の向かいには、ご夫人が住まわれた「離れ」があったり、さらに庭園の少し下には、「書屋」まで作っている。こちらも逍遥が自ら設計した、和洋折衷の建物。昔の文豪は違う!
こちらの書屋、松本清張が訪ねて来た時に、「慰霊塔」かと思ったと揶揄されたらしいですが、74歳でシェイクスピア全集を配本して、全40巻完結、75歳で他界しており、着想、バイタリティーは普通じゃないです。
ということで、思わぬ寄り道。遠方に熱海の海も眺めながら、下って行きます。
たどり着けない山田湯
ようやく山田湯のそばに来たもののたどり着けない…。
川沿いの人ひとり通れる道をくねくねと歩いて、ようやく到着。
私の後にもう一人女性の方が、「ようやく見つけた!」と息を弾ませて到着。そのあとに地元の方ですが、久しぶりにだいぶ遠くから歩いてこられたおじいさん到着。さらに、常連の近隣のおじいさん、おばさんも到着。
外湯の話になり、昔はあそこにもあった、ここにもあったと聞かせてもらいました。山側にもいい温泉があったり、海の方でも濁った湯が沸いていたとか…。営業時間になっても開かずに、
「おばちゃん、また居眠りしてんだろう、ここで話してたら、そのうち降りてくるわ」とおじいちゃん。のん気な感じで、6,7分過ぎたら開きました。300円払って、入ります。
素敵なタイル絵と綺麗な浴場です。お湯は当然、かけ流しで、塩気があり、湯の花も浮いています。3人で仲良く並んで、湯舟に浸かり、外湯の話が続きましたが、「このあたりも二つしかない、あぅ〇×◎▲□、、、」と、声が響いて良く分からない…。
水かけて出てきましたが、上がった後も、しばらくは汗が出てくるほど。
家の風呂じゃ温まらないからここ(銭湯)に来る、と言っていたおじいさんの言っていた通りのお湯でした。
これぞ熱海!「湯~遊~バス」
山田湯から熱海駅周辺まで行くには、東海バスの路線バスと「湯~遊~バス」があります。湯遊バスは一律250円で、熱海駅を起点に巡回しているので、おススメです。
こちらのバス、ガイドさんがついており、ちょうど乗ったバスには、おばさんガイドさんの案内、これが熱海の歴史も含めて、かなりお詳しい解説。
大湯間歇泉では、こんな解説を流暢に話されました。
「大湯間欠泉の隣には、六角形の市外通話の電話ボックスが残されています。なぜ、熱海に市外通話の電話ボックスが初めてできたかと申しますと、そのころの政治家は、みんな熱海に別荘をおもちでした。近衛文麿さん、秀麿さん、大久保利通さん、黒田清隆さん、大隈重信さんと数えたらきりがないほど、(略)明治14年、熱海会談というものが行われまして、その時決まったことを東京に知らせるために、市外通話の電話ボックスが初めて熱海にできました。
今も昔も政治家は密談が大変お好きでございます、どのような密談が交わされたのでございましょうかね。次は、咲見町でございます。」
車内もそこかしこで苦笑。
そりゃ、政治家、「人には言えねぇこと」があるでしょうけど、それにしてもこれは、熱海の方にしか、言えない笑
この温泉街にふさわしい流暢なガイドは一見の価値あり!
こちら、ちょうど、吹いているところでしたが…、昔は「地が鳴り響くほど」と書かれているので、こんなもんじゃなかっただろうなと。
日帰り温泉なら、大湯「日航亭」、「竜宮閣」
熱海には当然ながら「日帰り温泉」はたくさんあり、ゴージャスな海沿いのホテルもありますが、こじんまりと二つ紹介。
ひとつは、先ほどの間歇泉のすぐそばにある大湯「日航亭」こちらはかつては旅館だったようですが、今では日帰り温泉のみ。露天風呂はとても立派で、海は見えないですが、開放感あります。熱すぎず女性にも入りやすい温泉です。
そして駅前に行きまして、駅から徒歩5分にある竜宮城ならなぬ「竜宮閣」。こちらは、駅前の通りを少し下ったところに忽然と現れる温泉旅館。
後述する駅前温泉が故障中の時に、ふらっと訪ねたら、40分で、1000円で入れてくれるとのことで、浸かりました。熱いお湯ですが、「熱海に来ました~」というお湯で、こちらも湯上りに汗がたらたらと流れました。
ご主人によれば、宿泊はいつでもどうぞ!ということで、かつてTVでも何度か取り上げられたことがあるということでしたが、「混むのはTVの放送の後しばらくの間と夏の花火大会の時くらい」とのことでした。
アクセス良し、お湯良し「熱海駅前温泉」
こちらは、先ほどの竜宮閣と同じ通りにある「熱海駅前温泉」。駅改札から徒歩2分。熱海に立ち寄った時はほぼこちらにお世話になっております。
こちら、Na-Ca-塩化物・硫酸塩泉で濁りがあり、初めて入った時には熱海にもこんなお湯があったのか!と思いました。加水有りとなっていますが、蛇口があるといことだけで、基本はかけ流し。
この日は、結構混んでいましたが、初めて来たお客さんは、
「海岸沿いのお風呂と全然違う!」と喜んでおりました。
ということで、熱海。本当に若者向けのお店も立ち並び、変貌を遂げていく温泉街ですが、温泉自体は歴史もあるだけに調べて行けば、もっと出てきそうです。外湯も復興して行けば良いのになぁと願いつつ、また他のお湯も探してみます。
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