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ソーシャルビジネスの主人公はだれか?

ムハマド・ユヌス氏『貧困のない世界を創る』を読んで

2021年6月より、ユヌス&ユー ソーシャルビジネスコンテスト(YYC)に参加しています。現在10月の予選プレゼン審査に向けて準備を進めているところです。自身の社会課題を最終化する前に、このコンテストの創始者であるユヌス氏の考えをより深く理解したく、著書を読みました。

YYCでどんなことを学んでいるかは、以下をご覧ください。

プロシニアの取組みが本当に社会的インパクトがあるのだろうか?

最初に私の取組みとプレゼンに向けて抱えている悩みを共有させて頂きます。

私が解決した社会課題は「シニアの孤独」です。地域、年齢、職業に縛られない、多様な友人を持つシニアを増やしたいと思っています。その為には、周りから学び続け、変化する60歳未満の大人を増やす必要があると考えています。

課題の設定には、30人のシニアまたはシニアに接する職業をされている方にインタビューし、さらにチームメンバー(医師、理学療養士、整体師、プロコーチ)ともかなり議論してきたので、明確になってきました。しかし、解決策を考えた時に、「プロシニアのコンセプトを広げるコミュニティをつくる」では、社会的インパクトが弱いと悩んでいます。そこで、ユヌス氏から何かヒントが得られないかと思い本を読みました。

ソーシャルビジネスには2種類ある

2種類の可能なソーシャルビジネスを提案しようと思う。
①所有者に対する最大限の利益を追求するよりはむしろ社会的な利益を追求する企業で、経済的な報酬より心理的、精神的な満足のために、貧困削減、貧しい人々のヘルスケア、社会的な正義やグローバルな持続性といった社会的な利益を求める投資家によって所有されるもの。

②貧しい人々や恵まれない人々によって所有されるいる、最大限の利益を追求するビジネスである。このケースでは、PMB(利益最大化ビジネス ※筆者追記)が生み出す配当と株式の成長を貧しい人々の利益になるようにしむけ、そこから社会的な利益を得るものである。その結果、彼らの貧困は軽減する、あるいは社会全体として貧困から脱出することさえ助けることになる。

本書より抜粋

ソーシャルビジネスは①しかないと思っていたのですが、社会課題の対象となる方が所有するビジネスがあるというのに驚きました。確かにユヌス氏のグラミン銀行も貧しい人たちによって所有されています。

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グラミン銀行を生んだ、一人の女性との出会い

グラミン銀行のきっかけとなったエピソードが印象的でしたので紹介したいと思います。

この問題の本質を私に教えてくれたのは、ソフィア・べガムという名の村の女性だった。村の多くの女性と同じく、ソフィアは夫と子供とともに、雨漏りしやすいわら葺き屋根の朽ちかけた泥の小屋に住んでいた。夫は日雇い重労働者として働き、1日数セント相当の金を稼いでいた。どんな仕事をしてもその程度だった。家族の食い扶持を稼ぐために、彼女は1日中家の土間で竹の椅子を編んでいた。目をみはるような技術で作った、美しい使いやすい工芸品だ。しかし、彼女が一生懸命に働いても、家族を貧困の淵から引き上げることはできなかった。

本書から引用

この後、一生懸命働いても貧困から抜け出せない社会構造の仕組みに触れられています。もっとも驚いたのは、同じような境遇の家が村に42世帯あり、その人たちを貧困から救い出す方法はたったの27ドルという事実でした。ユヌス氏がこの27ドルを融資すると、融資を受けた方は貧困から脱する事が出来ただけでなく、毎回きちんと決まった日時にローンを返済したそうです。効率を求める大手銀行では、非効率かつリスクのある小口融資は考えられません。しかし、リスクを減らしながら、多くの人の貧困脱出という社会課題を解決する方法があったのです。

ここで私が学んだことは、新しいシステム(仕組み)で社会に価値を提供していくという規模感です。既存の応用では、目新しい取組みを始めてもすぐに模倣されてしまうでしょう。また、既存の組織で解決できることも多くありそうです。せっかくYYCで取り組む機会を頂いたので、既存のシステムにない、または既存のシステムを組み合わせた新しい取組みが考えたいと感じました。

もう1つの学びは、課題だけでなく解決策の構築についてもストーリーで語る大切さです。シニアの社会課題をテーマに決める時は、自身の原体験に戻り本当にやりたいことをとことん考えましたが、解決策についてまだ人に訴えるストーリーがないと言うことに気がつきました。YYCワークショップで50人にインタビューするようアドバイスを受けましたが、ストーリーを生むのは、圧倒的に高い現場の解像度だから、現場を知ることは大切だと思いました。

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共同体思考こそ、社会にインパクトを与えることができる

本書ではグラミン銀行の共同体思考思考にも触れられていました。自分で利益を上げることが出来るようになった貧困層の親たちは、次に自分の子供に教育を受けさせてたいと思うようになったそうです。自分たち家族の貧困だけでなく、子供たちの教育を提供する機会を得たいという、多くの当事者に支持される目標が社会的インパクトを上げると思いました。次の言葉にソーシャルビジネスのあり方が書かれていると思いましたので、共有させて頂きます。

グラミン銀行は単なる金融機関以上のことをしている。家族が貧困の手から逃れられるためのものを身につけるであろう、まったく新しい世代を私たちは生み出しているのだ。私たちは貧困の歴史に終止符を打ちたい。グラミン銀行は、そのためのツールである。

本書より引用

プロシニアの活動も、社会にシステムを提供できるように考える

今まで考えていたプロシニア解決策を、コミュニティで行う単純なセミナービジネスとしてとらえると、これからシニアが増えてるほど競合環境が厳しくなることが予想されます。本書を通して課題解決をどのようにシステムで提案するかが大切だと気がつくことが出来ました。

また、シニアに向けて必要なコンテンツを組織が考え、ターゲットとなる60歳未満の方にセミナーの受講料として提供するのは、すでに紹介した①のモデルでした。この①ソーシャルビジネスモデルでは、広げるためには、コンテンツを保有する組織が出来るだけ多くの参加者を集め、多くの回数のセミナーを開く必要があります。

一方で、シニアに向けて必要なコンテンツをターゲットとなる60歳未満になる人に所有してもらい、自分の周りの人に広げてもらうやり方もありそうです。資格認定ビジネスに近いとも思いますが、これを金儲けではなく、社会課題の解決に活かせないかという考えています。私の社会課題の対象である60未満の会社員が主人公になる取り組みが提案できれば、社会的インパクトが大きくなると思うようになりました。まだアイデア段階ですので、これからじっくりと考えていきたいと思います。

あなたの取組みは、社会的インパクトを与え多くの人にメリットを提供することが出来ますか?

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