残暑のころ

枕にうずめた顔と反対側、襟ぐりの上あたりが少しずつ焦がされていくような感覚で目が覚めた。大きく伸びをしてからベッドの上で半回転して窓の方を見ると、カーテンの隙間から強い光線がこっちの方へ差し込んでいる。そのまま手を伸ばしてカーテンを開けると、窓の外には彩度の高い青空が広がっていて、8月ももう終わるのに、すっかり夏だなと寝ぼけながら思った。

思い返すと、大学生の頃、夏っぽいことをするのは9月だった。夏休みが長い大学生にとって、酷暑と混雑を避けられ、宿の値段も下がる9月は夏を満喫するのにぴったりな月だった。半袖のTシャツでは少し冷えるようになった遠くの山へ出かけたり、夜の公園で半額の湿った花火に無理やり火をつけたり、大学生っぽい夏の思い出は、真夏のピークが去った寂しさと、それでも夏休みが追わらない無敵感が混ざった不思議な気持ちとともにあった。ベッドの上で今さら夏を覚えたのは、その頃の名残だと思うと少し切なくなる。

久しぶりの晴れた休日だし、このまま起きて出かけようかとも思ったが、昨日までの出張の疲れが抜けておらず二度寝してしまい、日が暮れるまで部屋でひたすらダラダラして過ごした。20時を回った頃に外へ出ると湿度のやや低い秋の訪れを告げる空気が辺りを覆っていて、それが気持ちよくて少し離れたコンビニまで散歩する事にした。途中、視界の上の方を明るい流れ星が横切って、びっくりして見上げるとすぐに消えてしまって、それでも嬉しくてずっと夜空を見上げて向かった。今年の夏もまだ終わらない。



ご覧いただきありがとうございました!