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【卒業式】

「こんにちは、お久しぶりです」

受付で在校生の女の子から案内され、
小ホールのロビーの椅子に座っていると、
A井君が歩み寄ってきた。

直接会ったのはほぼ3年ぶり。
昨日は彼の、高校の卒業式だった。

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A井君は、中学1年の時に友達と一緒に私の卓球クラブに
入会し中3の夏まで所属していた。

中学では体調の影響もあり、休みがちになったこともあった。

だけども卓球は大好きで、出来るだけ部活も、クラブも
頑張っていた。

その甲斐ありレギュラーにも選ばれ、団体戦で東北大会にも
出場した。

その後、近隣の私立高校に進み卓球部で頑張っている様子は、
顧問の先生から話を伺ったり、ときには大会での試合を遠くから
見守るぐらい。


高校2年の秋の新人戦で地区予選を突破し、県大会出場を決め
トーナメント表にも名前はあったが県大会の会場に姿は
なかった。

「長南さん、実は……」
顧問の先生曰く、中学時のように体調をくずし出席日数が足りず、
転校(編入)を余儀なくされてしまったということだった。

昨年末に、それまでその存在を知らなかった近県の高校から
封書が届いた。

開けるとそれは卒業式の招待状だった。

「え、なぜ、どうして私に」


我が息子の卒業式には出席したが、人様のお子さんの卒業式
は初めてだ。

受付に行くと私の名は恩師の欄に有った。
保護者ではないし他の肩書は思いつかないのでそこに連ねた
のだろう。

クラブに練習に来ていた中学時代も、格別目をかけた訳でもなく
高校時代はほとんど話をした記憶もない。(挨拶程度はあったか)

それでも彼の、晴れの場に招待してくれたことは嬉しい。



ブレザーにネクタイを締め、きりっとした姿のA井君は、
これからの進路のことなど明るく話をしてくれた。

専門学校に進み、福祉心理学を学び、福祉関係の仕事で貢献
したいと話すその姿はとても力強く見え、頼もしく思えた。

誰もが順風満帆とはいかないだろうが、新たな道に
一歩踏み出すA井君に幸あれと祈る。

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