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コロナ日記⑨:周りの景色を書いてみる。2

※このシリーズは『ペスト』(カミュ著)の内容が出てきますので、ネタバレが嫌な方は見ないでください。

4/26。日曜日。
夜勤と外出自粛が相まって夜更かしが増えたこの頃。
今日も昼過ぎに起きて、昼ご飯を食べてからふと書き始めてみる。

起きた直後、曖昧な意識の中、外から聞こえたとある音をきっかけに、周りの景色をまた書いてみようと思ったのだ。

窓から外を眺めると、やたらと晴れている。
ここ1週間くらいの傾向だ。


17時のチャイム
どこの地域でもあるのかも知れないが、自分の住んでいる地域だと、17時になるとチャイムが鳴り出す。小学生の頃は、そのチャイムを聞くと遊びに一区切りをつけて帰宅する。そんな合図だった。

普段チャイムを鳴らしているのは、震災など緊急事態が発生した時に放送機能が使えないという事態を防ぐため、毎日機能していることをチャイムを鳴らすことによって確かめているのだそう。

だから、それが使われる時は、何かしら地域全体に周知事項がある時。
外出自粛はまさに周知すべき事項であった。

朝、何時かは分からないが、その放送は寝ている自分を起こして、周知事項を確実に伝えていた。
意識はぼんやりしていたが、
「外出自粛」「ウイルス」この二言で内容を把握するには十分だった。

何週間前にも放送があったことをぼんやり覚えているが、内容までは覚えていない。時間帯からしても同じ内容であると考えられるが、前よりはっきり聞こえた。

ウイルス騒ぎで「外出自粛」「ウイルス」の二言をあまりにも聞きすぎたのかも知れない。


鶯谷
誰もいない、日を跨ぐか跨がないかくらいの遅い時間、そんな時間に少し散歩することがある。

日中だと人がまだちらほらいる。加えて、元々人が多い場所自体嫌いなため、なるべく人がいない時間帯を選ぶ。ウイルスのせいだけではく、自分にとって人のいない時間帯を選ぶことは自然なこと。

自転車にまたがり、誰もいない住宅街を走りながら上野方向へ進み、上野公園を過ぎて坂道を下ると鶯谷に到着する。

ここは自分にとって思い出深い街でホームの一つ。

思い出のある場所の前に行くと、当時を思い出して少し止まってしまう。ひたすらに楽しかったその思い出を振り返ると、目の前に思い出を共有した人たちの影が見えるようであった。

でもそこには自分しかいない。
自分しかいないことへの虚しさと、またその人達と会えるのことの希望が入り混じる。

よく通ってた駅近くのカフェには、長期休業の張り紙が貼ってあった。店の内情は詳しく知らないが、おそらくチェーン店ではないカフェなので、このままなくならないか少し心配になった。またここに来れればいいな。

少し進んだ先にある銭湯は営業していた。
おそらく地元の人たちで風呂を銭湯通いにしている人達に向けて開けているのであろう。

この場所に限らず、週2回は銭湯に通ってたから、銭湯で安心して汗を流せる日々がとても恋しい。
今はひたすら耐えだ。

入り口の張り紙をよくみると、銭湯と一緒になっている食事処は閉めているようだ。


財布
あくまでも自分の例だが、出費が先月に比べてかなり減った。基本的に外で活動していたので、家の中での過ごし方にあまり慣れていない。だから何をしたら良いかよく分からないのだ。だからお金もどう使えばいいか分からないのだ。変な話だが。

大きく変化した出費内容はお菓子代と衛生用品代。家にいるとふとお菓子が食べたくなり、徒歩3分のコンビニに行ってお菓子を買い込む。衛生用品を買う場合は、薬局でお菓子を買うことも増えた。

なぜ家でだらだらしていると、こうもお菓子を口に運びたくなるのだろうか。

数日前、国から一人あたり10万円支給されることが決定した。
補償についてはかなり前から色々と言われていたが、やっと政府も重い腰をあげたのだろうと、会見を見て思った。

その翌日あたりからか、職場では10万円の使い道の話題で盛り上がった。ボーナスが近いこともあるので、今まで手が出なかった高額な商品を買おうと色んな人が考えていたのであろう。

ただ、あくまでも使い道は”物の購入”であるが。

その話の中では、何処かに行って何かをするという話題は一切持ちあがらなかった。むしろ旅行好きの方が多い職場なのだが。


まだ序盤かもしれない
ペストを読みながら、今周りで起きていることをみると、少し冷静でいれることがある。しかし、ペストを一つの指標とすると、収束まではまだ時間がかかると認めざる負えなくなる。それは、冷静でいれる一方でじわじわと辛くなる。

作中でのペストの脅威は、
対処ができないということも勿論なのだが、一定の力を発揮し続けること、という点も挙げられている。

毎日毎日、感染者も死亡者も減らないのである。
増える一方。しかも、ある一定の数を必ず超えて増えていく。
少し下がったと思っても、その数値はペストにとって誤差でしかないのだ。

現状はどうであろう。
感染者の上下はあっても、講じた対策に効果があったと自信を持てるほどの結果は出ていない。ウイルスは一定の力を発揮し続けている。

ペストの登場人物、医者のリウーは、先が見えない状況でも患者とペストと向き合い続けることが自分の職務で、自分の職務を全うすることが、今自分がすべきことである。と、思いながら日々ペストと格闘している。

だから、現状、医療関係者の方々はの苦労は、ありきたりの言葉になってしまうが、自分の想像を遥かに超えていると確信している。本当に凄いと思う。

自分はごく普通の一般人。突然何かできる訳じゃないけど、せめて自分の生活くらいは向き合って面倒をみようと思う。

我慢という言葉はあまり好きじゃないけど、今は、自分のやれるすべきことをやって耐える時期なのだろう。

ただ、耐え続けるのではなく、その中で上手く幸せを見つけて、ウイルスに負かされないように順応していくことはできると思う。

希望が持てれば、長い格闘も少しは楽になるものだ。
たとえ、収束するのが半年後でも1年後でも。

いつか、快晴の空の下、心地よい風を受けながら安心して歩ける日を待ちながら。

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