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楽器と自然とバグパイプの話

今日、商店街の近くを歩いていたら、バグパイプの音が聞こえてきたのよ。
バグパイプって、外で演奏してても1区画先くらいまで音が届くのね。
あー懐かしいなーと思って、通り道だったので商店街に入って行ったら、演奏のイベントやっててちょうどバグパイプのターンだったの。
演奏していたのが若い女性で、低音がやや不安定だったから、
「わかるー、バグパイプ肺活量めっちゃいるもんねー。がんばれ」
と思って通り過ぎたのだけど、それでふと、昔スコットランドでバグパイプの演奏を聴いたときのことを思い出したのよ。

あ、バグパイプってこういう楽器です。

これはスコットランドの首都、エディンバラで夏に行われている軍楽隊のコンサートなんだけど、これは大勢で吹いてるやつ。
バグパイプは、脇に抱えた大きな袋からパイプが突き出てて、それとは別に手元にも笛があるという、現物見ても構造がよくわからない、スコットランドの伝統楽器。
この脇の袋には空気が溜まっていて、それを脇に挟むことで低音を出しつつ、手元も笛で高音のメロディと奏でる、という、空気どれだけいるねん、という楽器です。
観光シーズンは、街の至る所でおじさんが演奏しているので、どこでも聞けるんだけど、ある程度の年齢がいった男性ばかり吹いてるのよ。
多分若すぎると肺活量がマジで足りないんだと思うの。

で、この動画を見てもらうとわかるんだけど、バグパイプの演奏って、メロディラインは全て高音で出されていて、低音はずっと一定なのね。
だから初めは「低音がある」ということに気がつかないくらい。
で、この低音があることでバグパイプは成立するんですよ。

エディンバラの街の中で聞いていたバグパイプは、「あっちこっちで演奏してるとうるさいな」くらいまであって、「伝統楽器」なんだなあ、という感想の域を出なかったんだけど。

それを、海辺の崖の上で聞いたことがあって。

スコットランドは、都市部を除けば広大な草原というか、丘の広がる地域で、海岸線も多いので風が結構強いんです。
わたしはそのとき、フェリーに乗っていたんだか、なんだったか。
出港する船を見送るように、バグパイプの演奏をしている人がいたのね。
で、海岸は砂浜じゃなくて切り立った崖があって、そこを強風が吹いているから、風の唸りがうるさいくらいだったのよ。

その、風の音。

その音が、バグパイプの低音をピッタリかさなっていたの。

ああ、バグパイプはスコットランドの、この荒々しい大自然の中で生まれた楽器なんだなって、ものすごく腑に落ちたんです、その時ようやく。

バグパイプの低音を聴くと、その時感じた「自然が奏でる楽器」という感覚が蘇ってきます。
あの風の音は素晴らしかったな。
日本ではどこでああいう音が聞こえるんだろう。
風が強い上に、どこか荒涼とした自然が似合っている気がする、バグパイプ。

いつかまた、風の荒れ狂う場所で聴いてみたいなと思います。

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