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クロテッドクリームの作り方を2種類試してみた

クロテッドクリーム。

スコーンとは切っても切れない関係のアレ。

黄金に輝くさくさくのクラストと、ねっとしりとしたクリーム。

それをスコーンにのせ、いちごジャムをのせ、口に運ぶ。

口内調味ができるのは日本人だけ、というのは嘘ではないかと、スコーンを食べるときだけは思う。

だって、スコーンとクロテッドクリームといちごジャム。

そしてミルクティー。

この4つが合わさって、はじめて「スコーン」の味と食感のバランスが整うのだから。

クロテッドクリームとはなんぞや

日本では馴染みのない「クロテッドクリーム」なる乳製品。
これはイギリスの焼き菓子「スコーン」を食べる際には、なくてはならないものです。
どのくらい必要かというと、お刺身の醤油。
ワサビやガリではなく、醤油。
そのくらい大事です。

日本人にありがちなのは、「クリームは脂肪分が高いから、スコーンにはつけないで食べる」という人。
これは大きな間違いで、というのもスコーンは焼き菓子でありながら、脂肪分も糖分も極端に低いのです。
自分でクリームとジャムを好みの量つけることで味が完成するので、そのままで食べたのでは食パンだけのサンドイッチを食べているようなものです(つまり具なしのパン)。
まさに個人主義の国イギリスの食べ物。
味付けさえも、食べる直前に各自で行え、ということです。
クリームジャムなしのスコーンは、パサパサだし甘くないし、とても食べられたものではありません。

もし、クリームジャム紅茶なしでも美味しい、というものがあったら、それはイギリスのスコーンではなく、イギリスのスコーンを魔改造した別物です。

同じ理由で、クロテッドクリームをちょっとだけしかつけない人もいますが、それも間違いです。
スコーンに対するクロテッドクリームは、いわばスパゲッティにかけるミートソースのようなもの。
粉チーズではないのです。
考えてもみてください。
スパゲッティミートソースの黄金バランスは1:1、どんなに少なくたって2:1です。
ミートソースの量がスプーン1杯で、スパゲッティが美味しく食べられるでしょうか。

個人的には、スコーンとクロテッドクリームといちごジャムの黄金比は、1:1:1です。
どんなに譲歩しても、2:1:1です。
これ以下ではいけません。
なぜなら前述の通り、スコーンには脂肪分も糖分もほとんど含まれていないからです。

ダイエット中だからクリームもジャムも控えめにする、というような人は、そもそもスコーンを食べてはいけないのです。
パサパサのスコーンを食べても、幸福にもならなければ心も満たされず、無駄に炭水化物を摂取するだけになってしまいます。


さて、それだけ「スコーンを食す」際に重要な部分を担うクロテッドクリームですが、日本ではほぼ売っていません。
専門店に行けば、あるいは通販で探せば、輸入のものや国産のものが見つかります。
が、めちゃくちゃ高いです。

先程から書いている通り、スコーンとクロテッドクリームは同量あるのが好ましいのですが、日本で買えるロダス社のクリームは容量がわずか28g。
スコーン半分程度の分量しかありません。
しかもそれでいて、1パック340 円もします。
もはや横暴です。
これでは正しいスコーンライフが送れません。
国産では中沢乳業が1パック100g340円ほどのものを出していますが、こちらは基本通販なので、送料がクール便で高く付きます。

そもそも、イギリスは酪農大国なので、乳製品がとても安く手に入ります。
バターは250gが1ポンド(140円)もしません。
感覚としては、バターは100円玉で買えるのがイギリスという国です。
安いバターなら50円くらいです。
クロテッドクリームはバターよりは高いとはいえ、それでもロダス社のものでさえ、2ポンドで1パック230gくらいは買えます。
こればかりは、食文化の差なので仕方がありません。

とはいえ、できるだけ安くクロテッドクリームを食べたいじゃないですか。

そんなわけで、外出自粛で乳製品も有り余っている今こそ、クロテッドクリームを作るべきなのです。


で、作りました。


ざっとネットで調べたところ、作り方は2種類あります。

ひとつは、生クリームをオーブンで温めること。
もうひとつは、生クリームを湯煎にかけること。

オーソドックスなのは湯煎なのですが、まずはオーブンを使う方を試しました。
ついでに湯煎でも作ることになりました。
そして、湯煎の方が断然楽でした。

では、それぞれの作り方を簡単にご説明します。

1.オーブンで作る

材料:出来上がり100g分くらい
生クリーム(45%以上) 2パック(400ml)

道具:
オーブンにかけられる容器(浅目のもの)

手順:
1.オーブンを余熱70〜80度に温める。
2.容器に生クリームを入れる(クリームの深さが3センチくらいが目安)。
3.オーブンに入れ、8〜10時間加熱する。
4.途中で様子を見て、表面が膨らんだり、色がついてきているようだったら、オーブンの温度を下げる。
5.表面に脂肪分が集まってくるので、よさそうかなーと思ったら静かにオーブンから出し、室温に冷ます(1時間くらい)。
6.ラップをして冷蔵庫に入れる。絶対に揺らさない。一晩(8時間ほど)冷やす。
7.上部の固まったクリームの端をそっとめくると、下に残りの液状のクリームが残っているので、別のボールなどに静かに移す。このクリームは料理などに使う。(たぶん泡立たない)。
8.固まったクリームを更に数時間冷やして、完成。

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2.湯煎で作る

材料:およそ80g分
生クリーム(乳脂肪45%以上) 1パック(200ml)

道具:
湯煎にかけられる容器(ボウルやタッパーなど、口の広いもの)
湯煎用の鍋
キッチンタオル
温度計(あれば)

手順:
1.容器に生クリームを入れる。
2.鍋の中にキッチンタオルを敷き、水を適量注ぐ。
3.1の容器をタオルの上に乗せる。水の量はクリームの位置と同じくらいまであるといいが、容器が浮力で浮かないように注意。
4.弱火にかける。
5.5〜6時間ほど湯煎で温め続ける。途中、水の量が減ってきたら足す。クリームに水が入らないように注意。温度計があれば、クリームの温度が70〜80度になるように火力を調節。(弱火だと60〜70度くらいまでしか上がらないが、それで十分)。
6.表面に脂肪分が集まってくるのを眺めてニヤニヤする。
7.クリームを揺らさないように静かに湯煎からはずし、室温に冷ます(1時間くらい)。
8.ラップをして冷蔵庫に入れる。絶対に揺らさない。一晩(8時間ほど)冷やす。
9.上部の固まったクリームの端をそっとめくると、下に残りの液状のクリームが残っているので、別のボールなどに静かに移す。このクリームは料理などに使う。(たぶん泡立たない)。
10.固まったクリームを更に数時間冷やして、完成。

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いずれの場合も、食べるときに容器を移さない方がいいので(クラストを残すため)、そのまま食卓に出してもいいようなガラスの器などで作るといいかも。

倍量を一気に作る場合は、器の口が広くなるようにしてやれば、時間はほとんどそのままでいい。
(クリームの厚みを増やすのではなく、表面積を増やすようにする)。

3.オーブンと湯煎の比較

結論としては、湯煎の方が楽です。
というのは、まずオーブンで60〜80度というのがなかなか難しいからです。
発酵機能がついているオーブンならこれだけの低温が出せますが、ガスオーブンだと温度調節が難しくて、結果クリームの上部が焦げました。
また、最低でも8時間は必要なため、家庭用の電子レンジオーブンだとその間レンジが使えません。
あと部屋の中が暑くなります。

湯煎の方は、クリームに直接熱が当たることがないため、表面が乾いたり焦げたり、ということがありませんでした。
ガスをつけっぱなしになるので、暑さでいったらこちらもあまり変わりないかな……とは思いますが、オーブンよりは勝手がいいかと思います。
仕上がりも、こちらのほうが綺麗でした。
(ただ単に熱し加減が分かっただけかも。)

3月に「家庭で蘇を作る」のが流行りましたが、ずっと練り続けないといけない蘇に比べて、基本的に放置しておけるクロテッドクリームはとても簡単です。
必要なのは、ずっと家にいてたまに様子を見ること。
これは現状ではクリアするのがとても楽です。

4.クリームティーのすすめ

クロテッドクリームを作る傍らで、いちごジャムを作ってもいいでしょう。
どちらも冷蔵庫で冷やして、翌日にはスコーンを焼いてはどうでしょうか。

スコーンは生地を寝かせる必要がないので、時間がかかりません。
レシピは様々ですが、バターなしのレシピもあるので、比較的リーズナブルです。
作り方も簡単なので、そして形が歪でも一向に問題ないので、お菓子作り初心者にもおすすめです。
クッキーやホットケーキよりもよっぽど楽ですよ。

スコーンが焼けたら、クロテッドクリームといちごジャムを出して、紅茶とミルクを用意して、早速いただきましょう。

スコーンと紅茶の組み合わせを、イギリスでは「クリームティー」と呼びます。
イギリスのどのティールームに行っても、「クリームティー」は定番メニューで、必ず食べられるほどです。
だから、「アフタヌーン」じゃなくても、朝から食べてもいいのです。

あ、紅茶はぜひ、アッサムやセイロンなどのミルクティー向きのものを用意してください。
スコーンとクロテッドクリームといちごジャムの比率は1:1:1から試して、お好みの比率を探してみるといいでしょう。
たっぷりの方が美味しいですけどね。
だって美味しいものは、脂肪と糖でできていますから。

どうぞのんびりと美味しく優雅なひと時をお過ごし下さい。


今回作ったスコーンのレシピは、こちらの本から。

いろんなタイプのスコーンが載っていますが、わたしは洗練されたホテルっぽいスコーンよりも、田舎のティールームで食べられるような大きくてゴツゴツしたものが好きです。



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