何故デッサンをするのかを考える

何を勉強するにもそうですが、まずは何故それをするのか。何を身につけたいために勉強するのかを考える事がとても大事です。

 

では何故デッサンを勉強するのか?

 

私はデッサンをろくにやってこなかったので、これは私の個人的な意見になると思いますが、


3次元を2次元で表現する技術 と

3次元の形の理解 


という技術知識を得るためだと思います。

 

観察力を鍛えるというのもありますが、これは知識の部類とします。

 

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しかしながら多くの人が、こうやって絵を描くという「技術・アウトプット」のやり方だけに囚われて、立体はこうなっているんだという「知識・インプット」を得ることを疎かにしてしまっている人が多いと感じています。

 

そういう「技術」だけを磨いてきた人たちは、前回書いた、デッサンはうまくても彫刻をしたら出来ないという人になり、形を「理解」しながらデッサンをしてきた人は、彫刻をしてもそこそこ出来るのだと思います。

 

石膏デッサンなど、せっかく過去の偉大な彫刻家たちが遺した分かりやすい人間構造の造形物を目の前にしているのに、人間の形の知識を得ないなんて実に勿体無いことです。

 

多くの美術の教育機関がなぜデッサンをさせるのかという理由が、「デッサンが出来るようになるため」ということに収まってしまっているのではないかと感じております。

 

つまりデッサンのためのデッサンです。

 

美大に受かるためという目的のためにデッサンがあり、テスト合格の基準として、及第点を身に付けるためにデッサン教育がある。

 

そこには、「デッサンによって何が出来るようになりたいのか」が抜けていると思います。

それがわかった時に初めてデッサンが基本になりうるのだと思うし、逆にデッサンが必要のない人も出てくるのです。

デッサンで訓練する、「観察する目」「全体を捉える目」「大きな塊からじわじわと細かくしていくやり方」

それらの能力をデッサンを通じて鍛えたら自分の目指す仕事に大いに役立つと思うのであればすればいいのです。

 

しかし、そのエッセンスを理解できれば、造形だけしていてもその能力は鍛えることはできるし、自分の描きたいものをひたすら勉強して描いていけば、その能力は上がるのです。

 

エッセンスが理解できるのであれば、円錐やボール、ピーマンや石膏像を模写する必要はないのです。

 

これが基礎だからやらなければいけない、と無理やり努力している人達、

一旦デッサンの勉強をやめていいですよ。

 

そして好きなもの、上手くなりたいものを思い切り造るなり描くなりしてみましょう。

 

そして上達していく過程で、今やってることがもっと上手くなりたい、そのためにはデッサン力をつけた方がいいと自発的に思えた時にやってみたらいいのです。

 

訓練方法としては非常に優れている技法だとは思うので。

 

その時はデッサンをポジティブに捉えられてるはずなので、上達も遥かに早いはずです。

 

私がこのような記事を書いたのは、何もデッサンに反対しているからではありません。

それを勉強していないからって、引け目や劣等感を感じる必要が全くないということを伝えたいからです。

仕事内容によっては必ずしも必要な能力でもないし、必要性を感じたとしても今からでもできるのですから。

 

しかし美術の基礎=デッサン という考えは明確に否定しておきます。

 

では何を持って基礎としたらいいのでしょうか?

 

多くの生徒を指導していく中で、基礎となる効率の良い勉強方法を発見しました。

 

それはデッサンよりも彫刻です。

 

デッサンを通じて立体を理解するのであれば、初めから立体を作ったほうが理解度は断然早いのです。

 

実に当たり前のことなのです。

 

そして面白いことに彫刻が上手くなると、自然にデッサンがもっとできるようになってきます。

形を立体的に捉えられるようになり、頭の中に、その形の立体が浮かんでくるようになるからです。

頭に浮かんだ3次元の形を2次元で表現すると、自然に立体感を出せるようになってくるのです。

 

多くのイラストレーターや漫画家が私のセミナーで彫刻にチャレンジしていますが、皆一様に、セミナー後は絵が格段と上達したと言ってくれています。

 

皆それぞれ上達したいもの、描きたいもの、作りたいものが違うと思いますが、「デッサンは基礎だからやらなければいけない」という強迫観念でするのではなく、単なる上達方法の一つとして捉えればもう少し気楽に出来るのではないでしょうか?

 

デッサンは義務でなく権利なのです。

 

その前に一度彫刻する事をお勧めしますが。笑↓

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