デッサンは必要なのか?
美術の基礎はデッサンだという言葉をよく聞きます。
そしてそれによって、今までデッサンをしてこなかったから自分の絵や造形に自信がないとか、上手くなるためにはデッサンをしなければいけないのかというプレッシャーを感じている人が多くいます。
多くの人がデッサンに対してコンプレックスを持っているようです。
あれこれ言う前に、私のデッサン経験をお話ししたいと思います。
粘土で造形することを生業としているこの私。
自慢じゃないですが、ハリウッド映画の主役級のキャラクターを任されたりもします。
しかしながら、ぶっちゃけ自分の生涯デッサン枚数をここに告白しますと、
それは
3枚(誤差+ー1)
いや〜ん(私の絵ではありません)
高校の時の選択科目は音楽だったのですが、3年生になってクラス変更ができたので、美術をとることにしました。
そこで初めてデッサンなるものの存在を知りました!
しかしながら、描いてはみたもののどうもうまくいきません。
そして正直全く面白くなかったです。
面白くないものが長く続くわけがありません。
結果として、この高校3年の頃に描いたデッサン3枚ほどが、私の生涯デッサン枚数となったのです。
結論を言ってしまえば、造形が上手くなるのにデッサンは特に必要ありません。
場合によっては絵に関してもそうです。
私がアーティストとして仕事をしているアメリカでは、私の知りうる限り誰もデッサンはやっていないのです。
しかし日本ではデッサンが全ての芸術活動の基本だと思われている節があります。
果たしてそうなのでしょうか?
私が主催する彫刻セミナーにデッサンがめちゃくちゃうまい人物が受講した事があり、彼はとてつもないデッサン力を持っていましたが、彫刻はからっきしだめでした。
デッサンが上手くても立体は出来ないのか? と言う疑問が生まれました。
しかしながら、デッサンがめちゃくちゃ上手い人が初めて彫刻をしたら、造形もすごくうまかったと言う事例もあります。
この違いはなんなのでしょうか?
デッサンは多くの技術を必要とします。
形を捉える目や測り方、鉛筆(木炭)の微妙な強弱などのテクニックなど。
そして練習を重ねていけば、洗練された模写能力が身についていきます。
しかしそれが出来たからと言って、自由自在に思ったものが描けたり造形できたりするのかと言えばそんなことはありません。
なぜなら、ありのままを見たままに描くという技術だけに集中してしまうと、形を理解するという知識を得ることができないからです。
例えると、この像を反対から見たらどうなるのか、下から見たらどうなるのかという想像が出来ない。
表題の、デッサンは必要なのか? と言う問いに対する答えですが、これは職種によっては必要で、必要でない職種も結構あると言う少し曖昧な答えになります。
しかしデッサンをやらなければ、一定のレベル以上に上手くならないのか? と聞かれれば、明確に否定しておきます。
デッサンをやらなくても皆さんの絵、造形は上手くなります。
じゃぁ何のためにデッサンがあるのか?
そこで次回は、その事について解説していきます。
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