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【ネタバレ】シャーロックホームズシリーズ「恐怖の谷」読書感想文

読んでない人はこの記事は読んじゃダメ!

何作目なのか......いっぱい読んできましたよ。

シャーロックホームズ。

もう、

おしもおされもせぬシャーロキアンと言っていいんではないでしょうか。

「最後の谷」は最後の長編とされています。

そして、「緋色の研究」「四つの署名」に続く

2部構成となっています。


第一部のはじまり、

まず、暗号文が届き、

それをあざやかな手法でホームズが読み解いていきます。

「ミステリと言う勿れ」で

同じ方法でしゃべる子が居ましたね。

「版が違うと意味がない」

と言ってる当たり、作者もシャーロキアンでしょう。

実は警告文も手遅れ、

被害者はすでにころされていることが

マクドナルド警部によって知らされます。

ここでちょっとモリアーティ教授の話が出てきます。

ライヘンバッハの滝の事件の前のことですから、

教授は生きており、

ホームズはモリアーティについて疑惑の目を向けていました。

モリアーティの話をさっさと切り上げると、

現場となったバールストン村の領主館へと向かいます。

館には二重に堀を巡らせてあります。

ここの主人は大変用心深い質の男で、

夜になると、堀に渡した橋をあげてしまうとのことでした。

たまに何かの影におびえ、

夫人はそれを聞きだそうとするのですが

「余計な心配をかけたくないから」

と決してそれを漏らすことはありませんでした。

そんな主人が顔を切り詰めた散弾銃で吹き飛ばされた姿で

発見されました。

発見したのは友達のセシル・バーカー。

どうも生前は夫人と仲良くしゃべると嫉妬して

暴言を吐いたりした模様。

主人ダグラスは夫人に嫉妬していた様子ですが、

バーカーと夫人の関係が、あやしく思えます。

バーカーにその関係に不純なものがなかったか尋ねますが、

彼を怒らせただけでした。

第一発見者はバーカー。

夫人は部屋の中の様子を見に降りてきましたが、

バーカーに説得されて部屋に戻るよう言われます。

夫人は弱弱しくも生前の様子を語ります。

時折ダグラスは、「恐怖の谷」に居たことがある。

もしかすると一生抜け出せないかもしれない。

と言ったことがあると証言します。

またうなされながら「マギンティ支部長」と

何者かの名を口にします。

谷が何を指すのか、

ここへ来る前バーカーと働いていた鉱山のことをいうのか、

ここではわかりません。

マギンティについても夫人にはごまかしたような返事をするだけでした。


死体には不審な点がありました。

結婚指輪が抜き取られていたこと。

それを外すにはまず金塊指輪を外して、結婚指輪を抜き取り、

また金塊指輪をはめる必要があること。

バーカーが銃声を聞きつけて、

駆けつけるまでにそんなことをしている暇があるのか。

しかし死体には、

焼き印のような黒いマークが腕にあり、

執事も本人と証言している。

またひげそりに失敗して、

顎にばんそうこうを貼っていました。

窓に血の跡を残して堀を渡って犯人は出て行ったのか。

しかし、堀は浅く不可能ではない。

近くで自転車が発見されます。

これこそ犯人の遺留物と思いますが、

ホームズは

「自転車を利用して逃げ延びなければならない。

捨てていく意味がわからない」

と言います。

さすがホームズ。

それに遺体のそばに残されていた、

「V.V.341」

と書かれた謎のメッセージ。

これはなんのためのものだろうか。

部屋からは片方だけのダンベルがみつかりました。

ケチって片方しか買わない人も居るかもしれませんが、

本来なら二つで一つのものです。


ワトスンが一人で庭を回っていると、

バーカーと夫人が談笑しているのを発見。

旦那が死んだというのに、

バーカーが何か言ったのに対して笑みを浮かべている。

ワトスンは二人に対して軽蔑の感情を持ちます。

筆者もこの二人があやしいと思いました。


しかしこの二人が隠していたのはもっとほかのとんでもないことでした。

ホームズが現場に泊まり込み、

「明日、堀の水を抜く」

と予告したところ、

夜に堀から何かを引き上げている人物が現れました。

それはバーカーです。

やはり、あやしいと思った。

紛失した鉄アレイを重しに沈めていたものを引き上げにきたのでした。

しかし中身は何?

ここでとんでもない事実が発覚。

隠し部屋から亡くなったはずのダグラスが現れたのです。

顔のない死体は入れ替わっている可能性!

こんなセオリーに筆者はなぜ気が付かなかったのでしょう。

三人で示し合わせ、

ダグラスを狙い入り込んだ被害者が

もみ合っているうちに銃で顔を吹き飛ばされてしまったのをいいことに、

死体をダグラスに見せかけたのでした。

結婚指輪はどうしても外せなかったこと。

被害者は元、同じ組織に所属し、腕に焼き印があること。

自分を突け狙っている一味の一人を近所で見かけたこと。

あの晩もみあいになっているうちに、死なせてしまい、

偽装することで、自分は死んだことになり

永遠に追手から逃れる計画だったことをホームズに話しました。

沈めたのは被害者の衣服です。

バーカーと夫人が談笑していたのは、

この計画を知っていたからなのです。


つづいて第二部「スコウラーズ」が始まります。

ヴァーミッサに向かう列車に

人好きのしそうな好青年が乗っています。

同乗の男に話しかけられ、

自分が「自由民団」というところに所属していると明かすと、

男も合言葉を交わし、「341支部のスカンランだ」と名乗ります。

その後、スカンランは去りますが、

鉱山巡査に「あの男と仲良くしないほうがいい」

と警告されます。

青年は歯をむき

「だれと付き合ったって勝手じゃないか」

と威嚇します。

青年の名はジョン・マクマード。

筆者の印象はよくありませんでした。

脛に傷のある、喧嘩好きそうな青年、というイメージでした。

やがて

スコウラーズというのが「自由民団」を指すのがわかります。

そしてスコウラーズは他の自由民団とちがい、

殺人でもなんでもやってのける悪質な集団だとわかります。

これにはマクマードも動揺しました。

自由民団は慈善事業こそすれ、

殺人集団などとは程遠い組織だったからです。

マクマードは下宿の娘を巡ってスコウラーズの幹部テッド・ボールドウィンとひともめします。

スカンランのアドバイスに従い、

スコウラーズのトップ、マギンティ支部長のところに顔を出して、

挨拶をすることになりました。

マギンティは議員と呼ばれ、ふんぞり返っています。

結果はてきめんで、

ボールドウィンはマクマードに手出しできなくなりました。

しかし、ボールドウィンはあとあとまでこのことを引きずり、

なにかあると憎々しそうな顔でマクマードを眺めています。

マクマードは入団の証、あの焼き印を腕に押されます。

決定権は女にあるということで下宿の娘エティーは

マクマードを選んだようでした。

もともとエティーはボールドウィンのことを好きではありませんでした。

ただし、おやじさんに自由民団だということが知れたために、

宿を出ていくように言われてしまいます。

マクマードは支部で自分の悪行を告白しました。

シカゴを出て、なぜこんな谷に落ち延びたのか。

それは贋金を作り、

それを告発するという同僚を撃ち殺したためでした。

のちに元シカゴ警察にいたマーヴィン巡査に出会い

証拠不十分でシカゴに帰っても安全だとからかわれます。

マクマードのやったことが裏付けられ、

酒場では一気に人気者になりました。

マクマードは話も歌も上手く、

上手にその場に溶け込んでいました。

いけすかないお調子者だと思いました。

やがて支部に他の支部から殺人要請が舞い込み、

マクマードの犯罪本能は刺激され、

支部に染まっていきます。

我先にと手を上げ、

犯罪に加担していきました。


ある日、

マクマードが手紙を書いているところにこっそりエティーが近づいた時、

マクマードは手紙を握りつぶしエティーの首を締めあげました。

支部に関する手紙でも書いていたのでしょう。

マクマードはエティーとわかると慌てて手を放し

「仲直りしよう」と手を差し伸べます。

反吐が出るほど悪党です。

エティーはマクマードには奥さんが居て、

そこへ手紙を書いていたと勘違いし嘆きます。

エティーもちょっと頭お花畑です。

エティーはさらにマクマードにスコウラーズから手を引くように

お願いをします。

それは当たり前のことでした。

下宿でも「スコウラーズのマクマードが」と噂になっていたのです。

マクマードはなんども別の場面で言っていますが、

「おれはここを離れられないのだ」

と言います。

ただ

「どんなに長くても1年以内にはエティーを連れて

恥ずかしくなくこの谷を出れる」

と約束します。

エティーはその宣言に縋るように笑います。

後日、

マクマードはエティーの手を握った手で

標的の家を爆破します。

標的は助かりました。

たまたま家族で旅行に行っていたため空き家だったのです。


調子にのってるスコウラーズについに暗雲が垂れ込めます。

世界的に有名な探偵局

「ピンカートン探偵局」がスコウラーズを一網打尽にしようと

していると情報が舞い込んできました。

探偵局随一の腕利き「バーディ・エドワーズ」が調査しているとのこと。

情報元はモリスでした。

マクマードはエティーに谷を出ることを宣言します。

ここをでたらおそらくお尋ね者になるでしょう。

二度と戻ってこれず手紙も出せません。

一緒に出なければいけないのです。

そうやって脱出の手立てをしておいてから

マクマードは手紙を支部に持っていき、

情報元を伏せたまま手紙を支部員たちに公開します。

マクマードはここで今まで聞いたことのないようなことを言い出します。

自分に新聞記者だと偽って

スコウラーズのことをあれこれ聞き出そうとしてきた輩がいると。

新聞記者だというのがうそだとわかったのは

電信局がその男が頻繁に暗号文を打っていると

マクマードに愚痴ったからです。

マクマードは適当な嘘を相手に握らせ20ドルをせしめました。

「聞きたいことをみんな教えてくれたら、この10倍やるよ」

と言うのです。

そこでマクマードはマギンティ、ボールドウィンを含めた5人で

委員会を作ることを提案し、

下宿に彼をおびき寄せ、

みんなでそこで袋にするという計画を持ちだしました。

当日みんなは隣の部屋で待機し、

マクマードが偽の書類を見せて油断させたところを

腕に武者ぶりつき、

みんなを呼ぶというもの。

当日、待機する皆は

マクマードが来客を迎え入れる足音を聞いて、

笑いをこらえるのが大変でした。

低い話し声が聞こえ、みなにはそれが

いらいらするほど長く感じました。

そしてマクマードがくちびるに指をあて部屋に入ってきました。

態度に大きな変化がありました。

目が燃えるように輝き、

今まさに大仕事しようとしているものの態度でした。

しかし、彼は一同を見まわしているだけで

何も言おうとしません。

いらいらしてマギンティが言います。

「どうだ、来たのか。バーディ・エドワーズはどこにいる?」

彼はゆっくりと答えました。

「来た」

「バーディ・エドワーズはここに居る。俺こそバーディ・エドワーズだ」

ホームズシリーズ始まって以来の最大の鳥肌シーンです。

次の瞬間

窓から無数の銃口が飛び込んできました。

マギンティは怒号をあげ、

半開きの戸めざしてかけていきますが、

ピストルを構えたマーヴィン巡査に狙いを定められ、

元の椅子に腰を落とすしかありませんでした。

「そこにいたほうが安全だよ議員さん。

この家は武装した巡査40人で取り巻いているのだ」

そう言って一人一人からピストルを取り上げます。

「俺がこの仕事にかかったことを知るものは、

どんな親しいものでも一人も居ない。

俺に依頼したものと、

マーヴィン巡査だけだ」

まずはシカゴの自由民団に入団してみたこと。

善行こそすれ悪質な組織でなかったこと。

依頼は三文小説じみたうわさ話にすぎないのではと思ったこと。

この谷にきて真実を知ったこと。

贋金づくりなどしたことはないこと。

よって人を殺したこともないこと。

人気を博するため法に追われてる身を装ったこと。

爆破したときに空き家だったのは、事前にバーディが警告したからだということ。

「思い出してみてくれ。襲撃が次々失敗したことがあっただろう。

あれは全部おれがやったことなのだ」

今回のことは予想外にバーディのことを書いた手紙が舞い込んでしまったので、

もうぐずぐずしてられず、実行にうつしたことを明かした。


次の日

鉄道会社提供の特別列車に

美しい女性と、顔を包んだ男が乗り込みました。

エティーへの愛は本物だったのです。

マギンティと主な部下八人は絞首刑になりました。

およそ50幾人が投獄されることになったのです。

残党はバーディの命を狙いました。

シカゴに帰りましたが3度命を狙われたため

名を変えてカリフォルニアに移り住み、

そこで、エティーに先立たれてしまいます。

そこでもまた殺されかけたので、

名をダグラスと変え、寂しい谷あいで働きます。

そこでバーカーと出会い、少なくない富を築きました。

そこでまた警告を受け、

鉱区を売り払いイギリスまでやってきました。

そこで良縁を得て再婚し、

バーディーともども、

田舎の紳士としておだやかにくらしていました。

それも5年目にして破綻したのです。


さて、

ホームズが現れたため、

ダグラスたちの計画は泡に帰してしまいました。

ダグラスは正当防衛で釈放され、

ホームズは

「このままここに居ると危ない」

と警告します。

しかし恐るべきときは来てしまいました。

夫婦で南アにむけて旅立ったはずの夫人から

電報が届いたのです。

「セントヘレナ沖で暴風に会い、ジャックは甲板から

波にさらわれた模様。見ていたものがいないので、

事情は一切不明。アイヴィ・ダグラス」

なんと口惜しいことでしょう。

これが事故であるはずありません。

ホームズは背後にモリアーティが居ることにすぐ気づきます。

ホームズはモリアーティを葬ることを決心します。

この立派な二部作。

第二部だけでも十分にミステリと言えた二部作で、

非常に残念なラストをむかえました。


マクマードが突然新聞記者の話題を持ち出した時、

たしかにおやと思いました。

そんな話があったのなら、

一度くらい話題に上ってもおかしくないはず。

だから違和感を感じましたが、

まさかあの展開と繋がっていくとは......。

また、

秘密を暴こうとする正義の敏腕探偵

バーディ・エドワーズと正反対と思われる性格を

持っていたことにもまんまとだまされました。

あのシーンは何度読んでも鳥肌です。


第一部では

「顔のない被害者は入れ替わっている可能性」

というセオリー中のセオリーを突かれ

自分の中のアンテナが腐ってきているのを感じました。

もっとミステリを読んで

新しいものを取り込んでいかないとと思いました。

バーカーと夫人が談笑していたのも、

ワトスンにつられて不快感を覚えました。


読む前は普段通り、まったりと古き良きミステリの世界に

引き込まれるのだろうなと思っていましたが、

とんでもない作品でした。

この作品が今日の本格ミステリに大きな影響を与えていることは

間違いないでしょう。


ホームズも残り3冊となりました。

私は「思い出」を買い忘れているので、

アマゾンで買わなければいけません。

ホームズを読み終えたら、

横溝正史がぎっしりと待ち構えているのですが、

ここ最近で有名になったミステリを挟んでみてもいいかもな

と思いました。


古い作品だから、大したトリックは出てこないだろうと思っていたら

うれしい見当違いでした。

久しぶりにいいものが見れました。

ありがとう、コナンドイル先生。













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