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#19 退化する自分と言葉のチカラ

ALSになり、自分の運動ニューロン神経が壊死していくと、神経伝達が筋肉にいかなくなり、筋肉は脂肪化する。

私は、とても進行が緩慢で、10年以上経った今でも、大きな呼吸苦もなく、ご飯も口から食べられて、しゃべれている。

当初は、3〜5年で呼吸苦が起こり、生死の選択をすることになると思いながら生活していたから、

「今、できることは自分でやりたい」

との思いが強かった。
しかし、現実は厳しかった。

足先から始まった二足歩行から杖歩行、杖が1本から2本になり、車椅子へと形が変わっていくと、その外見が変わるたびに挫けてしまう。
買い物中、ショーケースに映る自分の全身を見て、愕然とする。

杖をついて歩く自分が嫌い。
車椅子に乗っている自分も大嫌い。

退化していく自分を、受け入れることがすぐにはできなかった。

情けない。悔しい。みっともない。恥ずかしい。
なんで自分だけがこんな目に遭わなきゃならないのか…

負のスパイラルには底がない。
でも、いくら深い負のスパイラルに落ちたとしても、生きていくしかない。
それは、自分自身が

「動ける間は、誰かのために生きる」

と、決めたから。

時間がかかっても、退化した自分に言い聞かす。

「大丈夫。えしこになる!」

これは、ペップトークの手法のひとつで、自らを奮い立たせるために、自らを励ますための言葉かけをすることで、「セルフペップトーク」と呼ばれている。

「えしこになる」は、方言で

「うまくいく」

という意味。
そう呟き続けることで、壊れゆく自分を少しずつ受け入れてきた。

言葉のチカラは本当にある。
魂を揺さぶり、感動する。
「感じるから動く」ことができる。

そのために、今ここにある自分の事象を受け入れる。
でも、ALSによって徐々に動けなくなっている自分を、そう簡単に受け入れられるものではない。
先の不安に負けそうになる毎日。

だから、私は言葉のチカラを使った。
自分への言葉かけを、凹みそうになる時に必ず使った。

そのおかげか、動けなくなった今もなんとかかんとか

「えしこになっている」

そんな気がしている。

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