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choice!インタビュー vol.10 今までの人生経験の全てがキャリア。脇若明美さん【後編】

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choice!では、働き方やライフスタイルを自分の意思で選択している、ちょっと先ゆくchoice!する人(通称choicer!)に焦点をあて、その人がどのようにはじめの一歩踏み出したのか、そこにはどんな想いがあったのかをインタビュー形式でお届けしていきます。
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主婦として、また一児の男の子の母として忙しい毎日を過ごす傍ら、IT企業で働いた経験を活かし“ウーマンメディアプランナー”として活動中の脇若さん(前回のインタビューはこちら)。
後編となる今回は、彼女の考え方や働き方の背景となる部分を含め、リアルな思いを話していただきました。

今までの人生の中で選択や決断をした瞬間について教えてください。

会社を辞めると決めた時です。会社を辞めるか否か決めるまではノイローゼになりそうなぐらい悩みましたね。朝起きた瞬間から、寝るまで「どうしよう」という思いで頭の中がぐるぐるしていました。会社を辞めると言うと、「大企業なのにもったいない」、「キャリアが終わってしまう」、「主婦なんてやりがいもなくて暇」、「育児だけだと参ってしまいそう」などと言われることもあって。主人からも自分だけが大黒柱となる重責から大反対されました。自分の子どもを自分の手で育てたい、その中のバランスで仕事もしてみたいというだけなのに、何か悪い選択をするかのようで罪悪感がありました。会社を辞めると決めた時です。会社を辞めると決めた時です。

そんな中、同じチームで働いていた同僚に相談したら、あっさりと「辞めたって大丈夫だよ。今まで明美ちゃんがした経験やスキルは生かそうとする限り続いていくし、明美ちゃんなら自分の選んだ道を切り開いていけるから。一緒に女性向けのメディアを作ってきた仲間として、いろんな女性の人生や選択があることを尊重するよ。」という内容のことを言ってくれて、とても救われたんです。自分のことを信じてくれている人がいたのも嬉しかったですし、「キャリア」というのは会社の中だけで続けるものではなく、たとえ途中で主婦をしたり子育てに専念していても、その経験さえも自分の糧にして何か生かそうとすれば決して無駄にはならないと確信できて、背中を押されました。

大変な決断でしたね。会社員として仕事をすることよりも子育てをしたいと思ったのはどういう経緯があったのですか?

預けるはずだった保育園に見学に行った時、お友達と上手に遊べるようになる4歳ぐらいの子どもたちとは対照的に、やはりまだママといたい年頃の乳幼児クラスでは、ママの姿を探してどこか不安そうだったり、泣き叫んでいる子どももたくさんいました。保育士さんたちはプロとはいえ、子ども3人に対して保育士さん1人とかしかついてもらえないので3人同時に泣いていたら、1人しか抱っこしてもらえていなかったりする姿を見てしまったら、なんだか複雑な心境に。もちろん、子どももいずれ慣れるし保育園のいいところもあるだろうけど、ママに抱っこしてほしい時期はとことん抱っこしてあげたいなと思ったんです。そしてやはり、子どもの成長を自分の目で見届けてあげたいと強く思いました。

それに育休中に少しだけ仕事をしてみたら、別に会社員として週5、決まった場所に行かなくても仕事はできるな、むしろ子育て中なら会社員という働き方は合っていないなという確信に変わったんですよね。

その保育園探しで感じたこと以外に、考え方や生き方に影響を与えたものってありますか?

児童精神科医の佐々木正美さんの著書「子どもへのまなざし」です。
本の中の言葉を借りると、“子育ては最高に価値のある、誇りのある仕事だと思います。なぜかというと、本当に価値のある仕事というのは、今の時代と次の時代を生きる人たちが、よりよく生きることができるように、何をするかということだと思うのです。”というフレーズに、今、育児に専念できていることは私にとって立派な1つのキャリアだと誇りを持てるようになりました。

子育て中の女性にとっては非常に励まされる言葉だと思います。多忙な毎日だと思いますが、家庭や育児とご自身の活動を両立させるために心がけていることはありますか?

今の私には本業は育児であると思っているので、育児に影響がないようにしています。当たり前ですが、子どもといる時は急を要するメール返信などを除いてはスマフォやパソコンを見ない、直接人と会ってミーティングなどが必要な場合は可能な限り子どもを連れて行ける環境かどうかも確認します。子どもが参加できない場合は子どもも安心して遊べる祖父母に預かってもらっています。一時預かりの託児所などは子どもにとっても慣れない人や環境に不安を感じることもあると思うので利用していません。

あとはむやみやたらに仕事を請け負わないこと。私の中でいくつか基準を決めています。1つは、「そのメディアが持つ情熱や社会的意義、ターゲットの女性に向けて伝えたいメッセージに共感できるか」。どんなに条件がよくても自分が興味のないことや共感できないことに取り組んでも、後で何も身にならないと思って。そして2つめに「私にしかできない仕事か」ということです。貴重な時間を割くからこそ私の経験や能力、アイデアなどがきちんと買われて対価をもらう仕事ではないと、意味がないと思っています。

3つめに「いくら稼げるか」が目的ではないことです。お金を基準にしてしまうと、ただ量をこなしたりするだけになってしまいがち。ただ、これは私の場合、主婦で、生活の主たる生計者は主人だからという後ろ盾があってこそできることなのかも。4つめは、知り合いからの受注しかしないということです。クラウドワークなど間口を広げればいくらでも仕事は手に入りますが、私という人間を知ってくれている人経由でしか今は仕事を請け負っていません。私という人となりや得意なことなどをわかってくれている人だと、私も仕事がしやすく、仕事を依頼する側も私に合った仕事をふってくれるようになります。そういう意味で、お互いにwinwinの関係が築けるのだと思います。私がしてきた経験やスキルを把握してくれて、かつ子育て中であるというライフスタイルを尊重してくれる知り合いと仕事ができるからこそ、おかげさまで子どもとの時間を大切にしながら仕事ができています。

仕事を受注する知り合いというのは前職からお付き合いをされている方ですか?ご自身を理解してもらうための工夫はありますか?

引き続き続けている前職での仕事は、前職から付き合っていた同僚などから広がった人脈です。仕事ぶりなどは同僚などが身近で見て知っていてくれていたのでお互いに信頼関係が築けているからこそ仕事を生み出すことができています。同僚たちとは定期的にコミュニケーションは取っていて、仕事のことだけではなく家族観だったり、子どもの成長もFacebookなどで知らせているので私という人となりはもちろん、子どもの成長も一緒に喜んでくれています。そういったプライベートな部分を見せることも仕事につながる信頼関係につながるのかなと思います。

ママ向けサイトの仕事の方は別の質問(※前編参照)にもあったように大学時代の友人です。その友達だけでなくけっこうお互いの近況はfacebookで追っていて、どんな仕事をしているのかとか、どんな生活をしているのかとかをお互いに知っておくことで意外な接点ができることがあるのかなと思います。

会社員時代、周りとの信頼関係を築くために何か意識していたことはありますか?

チーム一丸となって同じ目標に向かって仕事をしていく時に、チームの中で求められている自分の役割を意識し、目標に向かって自分ができることを一生懸命やることです。その姿を周りが見ていてくれたことが、もしかしたら今の仕事につながっているのかもしれません。

会社員ではなく、フリーランスだからこそできていることやフリーランスの良さはどんなことがありますか?

会社員だと、やりたくない仕事も部署や会社の方針などによってしなくてはいけないこともあると思います。フリーランスでは、自分から仕事を選ぶことができるのが何よりメリットかなと思っています。心の声に従って、やりたいことはやる、やりたくないことは初めからやらないということを選ぶことができます。あとは、時間も選べるということです。私の場合は日中はやはり子どもとの時間を大切にしたいと思っているので、思う存分それは満喫して、今は寝静まってからの時間しかありませんが、仕事にあてるということを自分で選べているので会社員時代に優先していた「会社の都合に自分をあわせる」のではなく、「自分の都合に会社や仕事をあわせる」ということを実現できています。

逆に、会社を辞めなければ良かったなと後悔することはありませんか?

会社というのはやはり福利厚生だったり税金や年金などの社会的な保証はちゃんとしているのでそこはフリーランスには敵わないとは思いますが、ライフスタイルにあわせて自由に働けるということが私にとっては重要なので後悔はしていません。

今後の展望や目標、目指す姿について可能な範囲で教えてください。

その時その時のライフステージや、興味関心、子どもの成長に合わせた働き方を考えながら進んでいきたいです。今後ウーマンメディアプランナーをやめて全然違うキャリアを持つ可能性もありますし、もう1つ何か違う肩書きの仕事が増えるかもしれません。

あとは、自分の母のような母性や愛情を持った女性になりたいと思っています。どんなに辛い境遇にいても、どんな時も私を信じて、勇気付けて、共感して、寄り添ってくれた優しい母がいたからこそ今までやってこれたと思うんですよね。それと同じ愛情を子どもにもあげたいし、私が母にもらったような大きな安心感を子どもにも与えてあげたいと思っています。

最後に、パラレルキャリアに興味はあっても一歩を踏み出すことができない人に向けて一言お願いします。

キャリアというと、なんとなく賃金が発生する労働だったり、本業は会社に属している中で他の仕事をするというイメージを持ちがちです。でも、パラレルキャリアの「キャリア」の定義は自分がやりたいと思ったことをやっていたら、それは全て立派なキャリアなんです。私のようにママとして育児を一生懸命していたっていいし、資格の勉強だっていいし、ブログを書いたりすることだっていい。とにかくそれをやっている時に、居心地がよく自分を輝かすことができる「居場所」を感じられる活動であれば。私の場合はたまたま育児の傍ら、今までの経験を生かしてできることが、お金が発生する仕事という形でチャンスをいただいていますが、とにかくやってみること。お金にならないから辞めよう、とかではなく自分が心からやりたいということ見つけ、それを気が済むまでやってみればいいだけのこと。始めてみても、途中でやめても何も失うものはありません!

脇若さんの場合は、育休中にブログをされていたことがきっかけとして大きいと思うのですが、そんなきっかけすらつかめない、何が自分にできるのかもわからないレベルでもやもやしている方から相談を受けたとしたら、どうアドバイスされますか?

仕事につながらないかもしれない、意味がないかもしれないなどと考える前にとにかく本能にしたがって行動することかなと思います。それが大きいことだけではなくて、例えばお部屋のインテリアをちょっと変えてみようとか日常のちょっとしたことを変えてみるとか身近なこととかでも。そんな積み重ねがいつか点から線になってキャリアになるのかなと思います。 


いかがでしたか?
“子育ても一つのキャリア”。
子育て中の女性全員が、そう捉えられるわけではないと思います。妊娠や出産を機に大好きな仕事を辞めなければならなくなった方については、今までのキャリアがなくなってしまったら自分には何が残るのかと、落ち込んでしまうこともあるかもしれません。

脇若さんのように育休中に感じたことをブログに書いて記録しておくも良し、何らかの形でアウトプットしてみる。今の自分にできることや今やりたいことを積み重ねてみる。すると、それがいつか誰かの役に立ち、仕事にさえ発展することもあるのです。

まずは、目の前のことや今あるものを大事にしてみること。そして自分以外の人と比べないこと。ないものばかりに気を取られて、焦っていても仕方ありません。キャリア=今までの人生経験全てと捉えられるようになるまでに時間はかかるかもしれませんが、いろんな人生の選択肢があるのも女性だからこそ。いろんなパラレルキャリアの形があっていいのです。

今後もchoice!インタビューでは様々なパラレルキャリアの実例を取り上げていきます。皆さんのキャリアを考える一助になれば幸いです。

#パラレルキャリア #働き方 #インタビュー #主婦 #育児 #ママ

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