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マンガ家の篠丸のどかさんに聞いてみた1/3「篠丸さんの好きなものとの距離感」

こんにちは。「ちょど研」研究員の巣内です。
「ブランドと生活者のちょうどいい距離感研究所」の3回目の取材、今回のインタビューイはマンガ家さんです。
「ちょど研」は企業も個人も両方取材対象ですが、今回は個人ブランドがテーマになります。

最近のブランディング文脈で、ブランドのユーザーのことを「ファン」と呼ぶこともあります。しかし、そのずっと前から、エンターテイメントのジャンルはファンビジネスを展開してきました。
古くは、安土桃山時代の出雲 阿国(いずものおくに)のかぶき踊りなどもファンビジネスの走りだと思います。

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今回お話を伺うのは、マンガ家の篠丸のどかさん。篠丸さんは、2012年にマンガ家デビュー。現在は、講談社発行の女性向けマンガ雑誌「BE LOVE」で「恋じゃないなら名前をつけて」を連載中です。
そんな篠丸さんに、ブランドとユーザーの距離感について、色々聞いてみました。

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取材は千川駅近くにある「Tea Shop Parvati」でやらせて頂きました。

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篠丸さんの好きなもの

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巣内 今日は「恋じゃないなら名前をつけて」を鋭意連載中、マンガ家の篠丸のどかさんの取材です。篠丸さん、今日はよろしくお願いします!

篠丸 よろしくお願いします!

巣内 僕らは、ブランドというモノを「服とか映画とか食べ物とか人とか」いろんなものがあると解釈しているんですけど、篠丸さんの好きなモノや人はなんですか?

篠丸 マンガや映画、あとは服とかお酒ですね。マンガは仕事なのでまた違うかな。映画は最近観に行けていなくて…継続的にずっと好きなのは、服とお酒ですね。服は、ドメスティックブランドばっかり追いかけてて、「THE RERACS」とか「Mame Kurogouchi」とか「HYKE」とかが好きです。

巣内 ドメブラの、どういったところが好きですか?

篠丸 新規気鋭のブランドが好きなんです(笑)。「出来たての頃から知ってるぞ、私は」っていう。「すごいブランド出てきた、応援したい!」っていう気持ちだと思います。

巣内 アイドルとかを、デビューしたての頃から応援してるみたいな感覚ですかね。

篠丸 そうそう、それに近いです! だから、Mameは最近もう人気者になっているので、チェックはしますけど、もうそっと見守るくらいなんです(笑)。

巣内 どうして、そんなに服が好きなんですか?

篠丸 小さい頃、親に好きな服をあまり買ってもらえなかった記憶があるんです。それが辛くて、半日くらい机の下に潜り込んで抗議したり、泣いたりしてて(笑)。その反動もあって、大学生頃から自分で自由に使えるお金ができたら、好きな服をどんどん買うようになりました。ファッションデザイナーに憧れてた時期もあって。でも、それも親に「なれるわけないから、辞めておきなさい」って言われてて。

巣内 マンガを読むことは、怒られなかったですか?

篠丸 父親がマンガ好きだったので、欲しいマンガは買ってくれました。父親のマンガも、たくさん棚にありましたね。『キン肉マン』と『島耕作』と『がんばれ元気』、あたり。

巣内 僕も、親がマンガ好きだったので『カムイ伝』とか『美味しんぼ』とかありました(笑)。社会人になって人と話すと、意外と同世代のみんなが自分と同じものを読んでないな、って思いませんでしたか?

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篠丸 思いました! 「みんな『島耕作』読んでないの!?」とか。でも、その頃に読んだマンガは、大人になっても買い直したし、未だに読み返しちゃいますね。『島耕作』に出てくる女の人は、みんな自由奔放で強いというか、今読んでも生き生きしていて魅力的なんです。あと、『クッキングパパ』は今読むと、働き方が現代っぽいなと思ったり。

巣内 クッパパは、どちらかというと処世術に近い『島耕作』と対象的ですよね。「家族のために働こうぜ!」というマンガで、改めて読むと確かに、結構ブラックな働き方してたり。マンガの話は止まらなくなっちゃいますね…(笑)。話を戻しますと、ファッションデザイナーになる夢を親に反対された、という話がありましたが、マンガ家になりたいと伝えた時は、どうでしたか?

篠丸 ノートにマンガばっかり描いてた頃は、「そんなことせずに勉強してほしい」と言われてました。でも、高校2年生頃に、初めて『別冊フレンド』に投稿したんです。それがたまたま賞に引っかかって、賞金がもらえて。それを親に言ったら、好感触で(笑)。そこからは結構応援してくれてましたね。

巣内 仕事として成り立つかもしれない、という可能性が見えてきたんですね。好きなものとしてもう一つ挙げていただいた、お酒の話も聞いていいですか?

篠丸 お酒は、あって当たり前というか(笑)。でも、だんだん弱くなってるので、最近は作画中の2週間は全く飲まないようにしてます。昔は、担当編集者さんと、マンガの話をして泣いたり怒ったりしながら、神楽坂で朝まで飲んでました。

巣内 お酒は、どんな銘柄が好きなんですか?

篠丸 日本酒が大好きなんです。『夏子の酒』のドラマが好きで、その影響でお酒のマンガが描きたかった時期もあったんです。酒蔵巡りもしていました。でも、日本酒って太るんですよね…私の体質もあると思うんですけど。だから最近は、もっぱらハイボールです!

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巣内 篠丸さんの作品『うどんの国の金色毛鞠』でも、篠丸さんの出身地である香川県の日本酒が出てましたよね?

篠丸 小豆島の「ふふふ。」という吟醸酒ですね。あんなに小さなコマから、よく気づいてくれましたね! めちゃくちゃ嬉しい。そのお酒をつくっている「MORIKUNI」という酒蔵は、もともと私の実家の近所にあったんです。その方が小豆島に移住されて、今も続けているんです。ラベルが素敵で、美味しいお酒ですよ。

巣内 神楽坂にも、高知県のお酒だけを集めた立呑み酒場ありますよね。

篠丸 昔、担当の編集さんと行ったことあります! こんなご時世じゃなければ、また飲みに行きたいですけど。


好きなものとの距離感

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巣内 好きだとおっしゃっていた服やお酒ですが、普段どのくらいの頻度で接していますか?

篠丸 以前は、お酒を飲んでない時の方が少ないくらいだったんですけど、最近は月の半分ですね。作画中の二週間は飲まないようにしてます。服は、インスタでよくチェックします。今は、コロナもあってふらっと買い物にも行けなくなちゃったので、季節ごとに、年に4回くらい一気に買う感じになりました。

巣内 店での、偶然の出会いがなくなってきますよね。

篠丸 そうなんです! 神楽坂の現在ラカグ(AKOMEYA TOKYO)があるところの1階に、昔は好きなセレクトショップがあって、打ち合わせで神楽坂に行く度に、帰りに寄って服を買ってたんですけど。そこもなくなっちゃったので。

巣内 そういう好きなものをふらっと買う時間が、篠丸さんの気分転換にもなってたんですね。

篠丸 そうそう。服を買っても、今は着て外を出歩くことも減っちゃったし。マンガ家って、もともと引きこもりがちな職業なのに、更に減っちゃったなと思ってます。

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巣内 好きなものも、ご時世によって楽しみ方が変わってきますよね…。篠丸さんが好きな服やお酒は、自分にどんな影響を与えたと思いますか?

篠丸 ほんとに息抜きなんですよね。マンガを描くこと以外、やらずに生きてきたので(笑)、それ以外で大きな趣味ってないんですよ。マンガを読んで映画を観て、お酒飲んで服が買えていれば、大体満足するし。どちらも娯楽だから、お酒は多分断つことはできるし、服もユニクロでも快適に過ごせるとは思うんです。でも、それだと、私にはつまらない人生だろうなって思います。

巣内 今はコロナ禍でもあって、外に出て好きなものに触れる機会も減りましたよね。オンラインは便利だけど、リアルなものを触ったり見たりするのとは全然違う。現物を触った時の情報量って、やっぱりすごいじゃないですか。

篠丸 お酒も、居酒屋で飲むと、店員さんに話を聞いたりして、同じ酒蔵のものを飲んでみたりとか、発見があるので楽しかったんですよね。自分でネットで探すと、目的のものは便利に探せるけど、思わぬ方向からの発見がないというか。

巣内 あと、ネットで調べて買い物するプロセスって、結構疲れませんか? 自分で全部探して選択していくから。店でふらっと買うのは楽しいんですけど。篠丸さんは、最初にお聞きしたように新しいブランドを攻めていくタイプだから、本当は出歩いて見たいところですよね。

篠丸 そうなんです!


巣内 今お話に出たコロナ禍の影響という意味では、お好きだと言っていたマンガや映画も、関わり方が変わった部分はありますか?

篠丸 映画館に行けなくなったのは大きいですね。マンガも書店に行けなくて。私はずっと紙派だったんですけど、コロナでついに電子書籍を解禁しました。電子は…いいですね! 場所も取らないし。ちょっと気になるな、と思うものは、電子だと手を出しやすい。半年に200冊くらいは買うので。

巣内 すごい数ですね! それだと、紙で買っていたら確かに棚に収まらないですね。でも、マンガの見開きの構図とかは、やっぱり紙で読んだ方が面白いですよね。

篠丸 そうなんですよね。でも最近は、「あまり見開きを意識しないで描いてください」というご指示をいただくこともあります。最新作の『恋じゃないなら名前をつけて』も、実は見開きはあまりないんです。『うどんの国』は背景を大きく見開きで、という演出をこだわりとしてやっていたんですけど、今回は、なるべく若い層の方にも読んでもらいたかったので、電子で読む人もターゲットにしていて。だから、見開きはとらないようにしてます。

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巣内 電子書籍は、携帯の画面サイズをベースで考えると、そんなに細かいコマ割りもできないですよね。

篠丸 文字とかも小さいと、読んでもらえないって言いますもんね。あとは、今はみんなせっかちだから、しょっちゅう何かドラマを起こさないと、読み続けてくれないとか。大変です…。

巣内 マンガの電子化は、マンガ好きの篠丸さんとしては、気軽に買うことができて嬉しい反面、作家さんとしては、演出などに頭を悩ませるものでもあるんですね。

篠丸 そうなんです。

巣内 ありがとうございます。服やお酒、マンガなど、篠丸さんの好きなものに対する距離感が、お話を聞いてわかってきた気がします。今回は、篠丸さんのパーソナルな部分からお話を聞きしましたが、次回は、いよいよマンガ家視点での距離感について、色々探っていきたいと思います!

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(サインいただきました。)

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