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マイセン動物園展/肉食文化の美


ドイツのマイセン磁器製作所で作られた、動物をモチーフとした作品を集めた展覧会。またもギリギリセーフで観てきました。かなりの作品が撮影可でした。

トップの写真は、入ってすぐのところに展示してあった「女性像 四大陸の寓意」です。各大陸風の風貌と衣装の女性が、象徴的な動物に寄り添っているものです。向かって左からアジア=ラクダ、アフリカ=ライオン、ヨーロッパ=ウマ、アメリカ=ワニ! ラクダと馬はともかく、あとの二つはなかなか斬新です。

超絶技巧と肉食文化

展示品はどれも美しく(古い時代のものはtoo muchな感じもあるけれど)、衣装のひだ、水の動き、薄い花びらの重なりや、葉っぱの先の動きまで繊細に表現されていました。陶器でこんなことまでできるのか、と驚く超絶技巧です。

スノーボールのシリーズは、直径1センチにも満たないような小さなお花をひとつひとつ貼り付けて製作するそうです。よく見ると、器の形状に合わせて、小花のサイズも微妙に調整してありました。気が遠くなるような職人技。
器自体の丸いフォルムとも相まって、とても可憐です。

しかし、中にはこんなのも……。

かわいいスノーボールの上に、仕留められた鹿が載っている……。ケーキの上にステーキが飾り付けられているような違和感を覚えました。

そのほかにも、びっくりした作品がいろいろ。
淡い美しい色調の「シマウマを襲うクロヒョウ」は、ヒョウがシマウマの喉元に食らいついた瞬間をとらえたものです。
また、「野ウサギをくわえた猟犬」は、『ボクいいもの捕りましたよ!ご主人さま、褒めてください!』と訴えているような犬の表情が非常にかわいらしい。
カモがカエルを捕らえ、今にも飲み込もうとしている像なども。そのカモは、ドイツ人にとっては食材でもあります。

これらはどれも美しい作品なのですが、殺生の場面なのですよね。
生き物を殺し、肉を食べるということが隠されない、当然のこととして日常の中にあるのかな、と思います。
日本人は今ではよく肉を食べますが、血の匂いは極力遠ざけ、肉を生き物として認識する機会は非常に少ないと思います。
生き物や肉についての視点の違いを感じる作品たちでした。

自然を丸ごと受け入れる

昆虫のリアルさもすごいですよ。
優雅な人物が描かれ、花や果実で飾られた見事な壺。飾りの中心部には、とてもリアルな甲虫がいます。

自然を丸ごと受け入れる懐の深さを感じました。
生きているみたいな虫の様子は、美術館のガラスケースの中にある分には冷静に観られますが、もしホテルやレストランにこの壺があったら、個人的にはビビりそうです。

基本情報

会場●パナソニック汐留美術館
会期●2019年7月6日(土)~9月23日(月・祝)

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