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支援学級って実際どんなことしてるの?

「支援学級」を勧めるのはなぜ?

SNSや、いろいろなネットの記事を見ていて、「支援学級」か「支援学校」で迷っていますとか、「通常の学級」か「支援学級」かで迷っていますとか、そういう記事をよく見ます。

学校に勤めていると、保育所の先生や幼稚園の先生が保護者に「支援学級」を勧めたり、お医者さんに「支援学級に入ったほうがいい」と言われる場合もあります。

そういう話を聴く度に、私は同僚の先生と、「どういうところだと思って勧めてるんですかね。」と話してました。

私は、これまである自治体で3校の支援学級担任をし、別の自治体で2校の支援学級を担任したことがあります。支援学級の経験としては5校と、割と多いほうかと思っています。
そこで感じることは、「支援学級」での指導や取り組みにはかなり差があるということです。

通常の学級であれば、検定教科書があり、通知表があり、一応それに則って1年間が進むはずなんですが、「支援学級」に関しては、正直、何もありません。
教科書も使っても使わなくてもいいし、「特別の教育課程」というのは、「絶対にこれをいつまでにしなくてはならない」というようなものはないので、教師の裁量による部分がすごく大きいということです。
その子に合わせて教材を作ったり考えたりできるので、この仕事のやりがいを感じるところなのですが、中には自分で教材を考えたり作ったりするのが苦手な先生もいるのが現実です。
確かに、通常の学級にもいろいろな先生がいるので、どの先生が担任になるのかで子供の成長に大きく影響するのは同じなのですが、「支援学級」は先生の考えと力量がもろに出てしまうと言えます。

自立活動は必須

この記事に詳しく書いてありますが、「自立活動」は必須です。

ただ、「支援学級」を勧める保育所や幼稚園の先生、保健センター、病院の先生から、「自立活動をしっかりやったほうがいいから、支援学級に入ったほうがいいよ。」と言われましたというのは、私は聞いたことないです。

ほとんどの人は、「支援学級に入ったら、支援の先生が授業中横に付き添ってくれると聞きました。」とか、「個別にみんなから遅れないように勉強を教えてくれると聞きました。」とか、「教室と同じ内容を個別で授業してくれると聞きました。」とかいうものが多いです。

もしかしたら、そうしている学校があるのかもしれないですが、、、。

「支援学級」はどんなことをしているのかは、実はよく知らない人が多く、管理職もチェックしないし、見てもわからない人がほとんどなので、学校によっては「えっ」と思う状況もあったりするし、学校によって、ほんとにやってることが恐ろしく違ってたりしますが、それでも「支援学級」という一括りで「入りたい」というのはどうなんでしょう。

「自立活動」を工夫してがっつりやってます!ってところを見せてもらったら、「支援学級」を希望してもいいような気もします。

じゃあ、支援学級って何してるの?

支援学級は、一応こんな風に書かれてますけど、実際はみんな何してるんでしょうね。

以前、「勉強できないからきてるんでしょ。自立活動なんてする時間あるわけないじゃない!」と言った支援担の先生がいました。
通常の学級の先生たちからは、大量の付箋のついた漢字ドリルと計算ドリルを持たされてくる子もいるし、「教科書使わないでなにしてるんですか?」と言われたこともあります。とある保護者は、「無料の塾だと思って入級しているだけで、うちの子に障害があるとは思ってません!」と言ってました。

その度に同じ支援担の先生と首をかしげて「私たちって何してる人と思われてるんですかね。」と言ってました。


私たちが「支援学級」でしていること

これから書くことは、私が同僚の先生と相談して実践していることですが、もしかしたら賛否両論あるのかもしれませんが、知的障害の子の将来の自立と社会参加をイメージしてその時のメンバーに必要な内容を考えて取り組んでいます。

①集団での取り組み

1時間目は「朝の会」というものをしています。
参加メンバーは、療育手帳を取得している知的障害の児童のみです。
知的障害学級に在籍していても意思の疎通に問題がなく、会話も流暢で療育手帳も持っていない子は(なぜ知的障害学級に在籍しているのかは疑問ですが、、、。)参加していません。

「朝の会」では、
①カレンダーを使っての日付の確認。一人ずつ声に出して言ってもらっています。
②お天気の確認。窓の外を見ながら確認。一人ずつ声に出して言います。
③質問コーナー 「お名前は何ですか?」「何年何組ですか?」「何歳ですか?」「何小学校ですか?」「誕生日はいつですか?」「好きな果物はなんですか?」「好きな野菜は何ですか?」「好きな給食は何ですか?」「今日の朝ごはんは何でしたか?」などなど、毎日少しずつ変えてますが、名前やクラスは毎日聞いてます。結構難しいですが、年齢が答えられない子には「7さい」とか書いたカードを見せたり、野菜がわからなかったら、いくつかの野菜カードを見せて選んでもらったりして何とか、質問には答えてもらい、教師の方は「へー、そうなんだ!」とか、「あっ、それ今日の給食にでるよ。」とかちょっとしたリアクションで応えるようにしています。
④絵本。身近なものをテーマにした絵本を読んでいます。季節感のあるものとかを中心に福音館書店の「こどものとも年少版」ぐらいの読みやすいものを教師が読みながらみんなに質問したり、食べる真似をしたりして楽しんでいます。
⑤ダンス。簡単なリズムダンスを大きなテレビで動画を見ながらやっています。定番の「エビカニクス」はもちろん、「ばななくんたいそう」とか「ラーメン体操」とかいろいろやってます。ノリノリで歌いながら踊る子もいます。
⑥ゴム跳び、縄跳び。縄跳びは跳べる子は100回。練習中の子は30回、50回と回数を本人と決めて飛んでいます。回数は100玉そろばんで数えてパッと見てわかるようにしています。全く飛べない子も、縄を回す練習や下にきた縄をぴょんと跳ぶ練習をしています。縄跳びはマンツーマンで一人ずつ呼んでやっているので、それ以外の子は、ゴムを椅子に引っ掛けてゴム跳びをしています。その時の先生の指示でいろいろな跳び方にチャレンジしています。縄跳びに関しては、全員が効果絶大でした。
⑦腕立て姿勢保持。体幹を鍛えるためにしています。腕立て伏せの姿勢で腕を曲げずにキープします。脚を椅子にあげているのでやりやすいようです。でも、身体はまっすぐになるように気を付けています。その時に、今はアイパッドを前において音読をしながらやっています。
⑧最後に、床に引いた線に沿って立ち、2分ほど静止します。これは、かなり難しいです。黙って、2分も同じ姿勢で立つなんて、なかなかできません。でも、みんなタイマーを見ながらよく頑張っています。静かに止まらないといけない時にこの練習を思い出して止まれる子が増えています。

と、盛りだくさんですが、45分間で毎日やってます。
今は6人の児童を2人の教師でみています。

これだけしっかり身体を使うと、その後の学習がスムーズですよ。

結構がっつりといろいろ取り組んでいますが、みんな楽しんで参加しているし、やっている私たちも日々の変化が感じられてすごく楽しいです。

②個別の学習

それ以外の時間は主に個別の学習をしていますが、この件に関しては、本当に書きたいことが多すぎて、次の機会に。

私は割と重度の知的障害のお子さんを担任することが多いですが、引継ぎで「この子は、字が読めないし、まったく書けません」とか、「数の意味が理解できないし、数も数えられません。」とか言われると俄然やる気がでます。(笑)その子とゼロから積み上げられるのは楽しくて仕方ありません。
話出すと止まらなくなるので、もう少しまとめてから書きたいと思います。

まとめ

こんな風に、支援学級の授業に関しては、自由の利く分、指導者による差が大きく出るのかなと思っています。
そして、いろいろと偏見があるのも事実です。
「支援学級が減ったら、育休復帰組の教師の受け皿がなくなるから、学級数は何とか増やさないと。」と会議で言った教師もいたそうです。
そりゃあ、周りの教師がそう思ってたら専門性を付けていこうという人が増えるのは期待できないなと思ったりします。
でも、支援学級で、のびのびと力を伸ばす知的障害のお子さんをたくさん見てきた私は、何とか、重度の知的障害があっても地域の学校で過ごせる子が増えるといいなと思って止みません。そして、支援学級の教師が自信をもって専門性を高められる偏見のない学校社会になってほしいなと思います。

結局、「支援学級」は入ったほうがいいのか、どうなのか。と言われると、指導者による部分が大きすぎて、「こっちです!」ということは言えないです。
ただ、一般的には重度の知的障害のお子さんは、入級もありかと思います。ボーダーのお子さんは、安易に入級するとゆっくり授業が進みすぎて(教師にもよりますが)、学習空白(習っていない部分が多い)ができる可能性があります。支援学級は特別の教育課程が編成できるので、当該学年の学習で抜けが出る可能性があります。すべての教育課程を学びたい場合は、通常の学級の中で合理的配慮を受ける方がいいのかと思います。

本当は、通常の学級においても「合理的配慮」は受けられるし、発達障害といわれるLD やADHDのお子さんは基本は通常の学級で学ぶ対象となっています。しかし、それでもまだまだ「支援学級」を勧める教師や希望される保護者がたくさんいるのが現状です。

そして、軽度の子で支援学級が溢れ、教育予算の多くが少しの教師の工夫で通常の学級で学べる子のために大量に使われ、本当に重度の障害のあるお子さんへの予算配分が不十分なのではないかなと思っています。

支援学級の入級と運営が文科省のガイドラインにある程度沿ったものになれば、支援学級の数、教師の数、教育予算が大量に通常の学級にまわり、30人学級も夢じゃないような気がします。
コロナが始まった時、30人学級の話が盛り上がりましたが、その時に、財務省が「子どもの人数に対しては、平均すると教師の数は十分に足りている。それが年々増加する支援学級に大量に使われているだけだ。」というような趣旨の発表をしていて、「あ~、そうなんだろうな。」と妙に納得した記憶があります。
必要なところにはもちろん人員はいるけれど、「そこまでの支援がいるかな?」という子どもたちが大量に支援学級を利用しているのには疑問を持っています。


もちろん、ボーダーの子が通常の学級で学ぶためには、発達障害の子を含めたクラスづくり、授業づくりを当たり前だと思って工夫して取り組む教師がいるってことが前提ですけど。


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