圧倒的本屋不足

もうすぐ、近所の本屋が閉店することになった。


元々、私の自宅から自転車で行ける範囲に、本屋は四店舗あった。

これはあくまでも私が把握している数で、

個人の小さな書店も含めれば、実際はもっとあったかも知れない。

けれど、把握している四店の内、一店はもう何年も前に閉店し、

昨年の夏には、二店が立て続けに閉店してしまった。

それ以降、たった一店だけ残っていた本屋。

それも、とうとうあと数日でなくなってしまう。


私は子供の頃から本が大好きだ。

絵本、漫画、小説、エッセイ……辞書だって立派な読み物になる。

文章を読むことが好きというのもあるのだけれど、

本を読んでいる感触も、とても好きなのだ。


装丁によって違う、カバーや表紙の手触り。

本文の紙質。

ページをめくるときの、紙が擦れる音と、インクの匂い。


本を読むことも、「ああ、今本を読んでいるんだ」と五感で実感することも、私はとても大好きだ。


けれど、昨今の電子書籍ブームにより、

紙本の売れ行きは年々悪くなり、

恐らく今後も下降する一方だろうと思う。


電子書籍は便利だ。

本屋へ足を運ぶ必要もないし、読みたい本が即座に必ず手に入る。

携帯にも便利で、置き場所にも困らない。

端末一つで管理出来るし、紙本のように色褪せたり破れたりしてしまう心配もない。


……良いところだらけやないか。

そりゃあ電子書籍を選ぶ人は増えるだろう。

そんなことは私だってわかっている。

わかっているけれども、それでも私は、紙本の文化は決して廃れて欲しくはないのだ。


買ったばかりの本を、パラパラとめくりながら、新しい紙の匂いがする風を浴びる感覚。

「あの場面、好きだったなあ」と、何度も読み返して少し開きやすくなったページを、また見返す感覚。

色褪せた表紙や、ちょっと変色してしまったページに懐かしくなる感覚。

折れたり、破れたりしてしまったページに、罪悪感と切なさを覚える感覚。


どれも、紙本でしか味わえないものだ。

この感覚を、私は決して忘れたくないし、何なら死ぬ直前まで味わっていたい。

電子書籍時代の我が子にも、紙本ならではのこの味わい深い一面は、是非とも知っておいて欲しいと思う。


最近、あちこちの大型書店が閉店する知らせを聞く。

実際に身の周りでも消えていく本屋を目の当たりにして、

何となく、大好きな本がどんどん遠ざかってしまうような寂しさを、私は感じてしまうのだ。

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