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『鬼滅の刃』は素晴らしいが、そのアニメ製作会社の『ufotable』も経営理論的に素晴らしいぞというお話

『鬼滅の刃』の『無限列車編』をご覧になって、素晴らしいと思われた方も多いのではないでしょうか。そう『鬼滅の刃』はとても優れた作品です。

私も『鬼滅の刃』のファンですが、製作会社である『ufotable(ユーフォーテーブル)』の作る映像は本当に凄く、昔から「会社」の大ファンです。

今回は『鬼滅の刃』ではなくその制作会社の『ufotable』について、経営の視点からその凄さを3点お話したいと思います。

ちなみに、社名『ufotable』の由来はこのテーブルで、「やりたいことを人に伝えていこう」との意味が込められているそうです。

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1. 選択と集中が凄い

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映画のストーリーのみならず、アクションの素晴らしさに感動された方も多いのではないでしょうか。ufotableの明らかな強みは、アクションです。

ufotableのアクション表現の質は異常です。あまりに速く、あまりに綺麗。しかも、それを週次のアニメでやってのけてしまうのです。

これは、ufotableが当初より、ゲーム関連の作品に注力して製作を請け負ってきたことが一因です。

以下は、ufotable製作のテレビアニメの一覧です。

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Info: wikipedia

会社の名が広く知られたきっかけは『Fate/Zero』でして、人気のゲームを元にしたアニメ作品です。熱烈なファンが多いことで知られています。

ゲーム関連のアニメには、炎や水などファンタジーな表現が多く出てきます。それに対応し続けたことが、今の美麗なアクションに繋がっています。

生き抜く分野を決めることは大切なことです。それを早くからゲーム分野に絞って伸ばしてきたことが、圧倒的な表現力として開花しているのです。

2. 自社製作による品質管理が凄い

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皆さまの会社でも、多くの仕事を外注されているのではないかと思います。それはアニメ業界でも同じ。基本的に外注で製作が進みます

アニメ業界は大きく、3つのプレイヤー、①製作委員会、②製作会社、③外注協力会社で成り立っています。

①はTV局や広告代理店等のスポンサー、②はシナリオやアニメーター等の作品を作る人たち、③は背景・美術等のサポートをお願いする人たちです。

このような構造なのですが、通常製作会社はそこまでの資本力がないため、③のサポートを依頼する割合が高くなります

結果、スケジュール管理が極めて難しくなります。以下の図はアニメーター協会の資料です。相当入り組んでますね。

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Info: アニメ業界の現状と課題・支援策とは

このように各所で問題が生じるので、後の工程に悪影響となり、結果として全体の品質の低下が起こってしまいます。

関わる人が多ければ、それだけスケジュール調整は大変になるのです。

一方で、ufotableは一貫した製作体制を採っているので、外注割合が低く、スケジュールのすり合わせが他の会社よりも上手く進みます。

つまり、他社がスケジュール調整に費やす時間や労力を品質に向けることができるのです。それが、品質の高いアニメの製作に繋がっています。

これは日本のお家芸である自動車産業と同じ構造です。トヨタがタイムリーな在庫管理を実現できるのは、全てを自社で管理しているからです。

アニメ業界のスケジュール管理は本当に大変と有名です。それを減らす経営努力をしているufotableは、投資の見極めが上手なのです。

ちなみに、『SHIROBAKO』というアニメが、アニメ業界の内輪ネタを作品としており、分かりやすく面白いのでお勧めです。

3. リスクテイクが凄い

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2からも分かるように、ufotableはリスクを取る会社と言えます。自社でリソースを抱え込んでいるので、売れないとすぐに経営が厳しくなります。

それは、製作体制にも現れます。先ほど「製作委員会」とスポンサーの形を取るが一般的と言ったのですが、ufotableはその体制を取っていません

オープニングやエンディングで流れるスタッフロールでは、会社名を並列して表記する表現となっています

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Info: 『鬼滅の刃』オープニング

これは関係する会社を可能な限り少なくすると共にそれぞれの会社が作品に責任を持っていることを表現する演出と言われています。

このように、少数のスポンサーで製作を進めるため、大きく当たったときのリターンは、他のアニメよりも大きいのです。

そのため当たっている限りは、次々と大きなことを仕掛けられる体制であるとも言えます。ハイリスク・ハイリターンなのです。

それは、素晴らしいものを作り続けることが会社の成長に直結するとも言え、非常に良いサイクルが回っている状態にあります。

ufotableの攻めの姿勢を見習う

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今は変化の激しい時代、リスクを減らすことが求められている時代です。自社で大事な部分だけを担当し、なるべく外注を増やそうとする時代です。

ただ、外注では到達することができない品質があるのだなと教えてくれるのがufotableです。外注はリスクを減らすと共に、制約も増やします。

自分の得意な分野に取り組みを絞る覚悟を持ってリスクを取るどこが投資どころか見極める。勝負師な会社だなと感じます。

素晴らしい作品には、素晴らしい背景があるものです。そんな背景を知ってから作品に触れると、より味わい深くなるものではないでしょうか。

一つのことしかできないなら
それを極め抜け
極限の極限まで磨け

善逸のお師匠さんの桑島慈悟朗さんの名台詞です。悩んで、絞って、磨いた先に極地がある。色々出来なくたっていい。出来ることを極めれば。

一回限りの人生。心を燃やせ。

ではでは。


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