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【Sマナ05】SNSで読まれるためには結局、マーケットと自分らしさ、どちらを優先するべきなのか

前回までで、なぜ発信が読まれないのか、SNSで読まれるためにはどうすれば良いのかを、経営理論に基づいて考えてきました。

読まれないのはSNSは競争が激しい市場だからであり、読まれるためにはユニークさを出す必要があります。

そしてユニークさを出すためには、市場から発信を考えるポジショニング論と、自分から発信を考える資源ベース理論があることを見てきました。

経営理論では結論が出ている

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結局、ポジショニング論と資源ベース理論のどちらが大切なのか。この議論には決着が付いており、私も大学院や実務でこの問いを聞いたことはありません。

数々の実証研究が行われてきました。結果、企業の結果を説明する力は、6:4で資源ベース理論が高いそうです。

そのため、資源ベース理論の方が重要と言うことができる…のではなく、結局両方大切ということです。6:4ですからね。殆ど差が無いのです。

実際に実務を考えてみれると、市場を全く見ないプレイヤーはいませんし、自分の能力を全く考えないプレイヤーもいないわけです。

そのため両方大切と言う、なんでもない結論です。ただ、強いて言えば自分をベースに考えるほうが多少重要と決着しているということてす。

競争の型の想定次第である

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とはいえ、ポジショニング論の方が合う競争と、資源ベース理論の方が合う競争があると言われています。競争には3種類あるのです。

1. IO型の競争
2. チェンバレン型の競争
3. シュンペーター型の競争

1. IO型の競争

IO型の競争とは、産業組織論(=Industrial Organization)に基づくと競争という意味でして、「環境」が結果に与える影響が大きい競争です。

つまり、製品の違いはそれほど重要ではなく、製品をいかに上手に作り、いかに上手に届けるかの方か重要だという競争です。

ジュース業界はこの競争と言われ、代替の製品が山ほどある業界です。そのため、いかに安く作るか、如何に多くの場所で売るかが重要になります。

2. チェンバレン型の競争

IO型の競争に対して、チェンバレン型の競争とは、製品の一つ一つに特徴があり、お客様から見ると違うものと見えるような競争です。

つまり、​​物としては違うものとして認識されており、その差に基づいて、どれが良いかをお客様が選ぶというような競争です。

化粧品業界はこの競争と言われ、一つの製品を他の物で代替することはできません。このの競争では、何の特徴を強調するかが重要になります。

3. シュンペーター型の競争

最後に、シュンペーター型の競争と言われるもので、​​環境の変化が激しく、不確実性が高い、将来を読めないような中での競争があります。

この競争では、次々とイノベーションが起こるため、環境が目まぐるしく変わります。今日の王者が明日の王者とは限らないのです。

アプリ市場がそうですね。YouTubeが絶対かと思いきや、TikTokやClubhouseなど次世代のアプリが短い期間で生まれてくる市場です。

この3つの競争の型には、それぞれに合った理論があります。

1. IO型の競争 = ポジショニング理論
2. チェンバレン型の競争 = 資源ベース理論
3. シュンペーター型の競争 = イノベーションの理論
(ダイナミック・ケイパビリティなど)

3のシュンペーター型の競争はまだ取り上げていませんで、またSNSとはちょっと遠いのて置いておきます。

そこで問題なのは、SNS市場はIO型か、チェンバレン型かということです。

発信スタイルとポジショニングの例

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これは絶対的な見方があるわけではないので私見ですが、私はSNS市場はIO型の競争であると考えています。

つまり、​​私の発信は誰かの発信に似ているものであって、読んで頂く方からすれば、代替的な発信は多数あるという見方です。

SNSは芸人さんの競争に似ていると考えています。あまりに魅力的な芸人さんが多すぎて、正直最初のうちは覚えられないのです。

一方で実力があって長い間露出してくると、​​その芸人さんのことを覚えて、他の芸人さんとは違うのだと認識できるようになるのです。

そのため、出たての芸人さんは「違い」を打ち出すこと必死です。強い先輩がいない路線を模索する。まさにポジショニングなのです。

このように、SNS市場も芸人さん市場も、無名なうちはIO型の競争であり、有名になるとチェンバレン型の競争に移るのだと考えています。

そのため、私にとってはやはり、ポジショニングが大切なのなかと思います。冒頭で資源ベース理論の方が多少重要と言ったにも関わらずです。

ポジショニングのために方針を一貫する

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ポジショニング論で発信を考えることは、第三回で見てみました。発信スタイルを固めることで差別化を図ることが有効だと考えです。

今回は実例として、3つのTwitterアカウントを挙げてみます。Twitterは本当に競争的な環境で、その中で頭一つ抜けることは凄いことです。

発信型 - カップヌードル

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カップヌードルの強みはその発信力です。とにかくTweetが面白い。一方で、フォローやリプライによるコミュニケーションは取らない方針です。

だからこそTweetの面白さが鍵なのです。発信に特化しようとすると、これぐらい面白い発信を創らないといけないと言うことですね。

中間型 - シャープ

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シャープは「シャープさん」と呼ばれるように、親しみやすい発信をしていることが特徴です。そのTweet自体もとても面白いです。

一方で、コンテンツを作り込むというより、コミュニケーションのための発信という位置付けです、​​フォロワーの方への返信にも熱心です。

コミュニティ型 - 東急ハンズ

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ハンズのTwitterは、本当に企業アカウントなのかと思うぐらいに返信します。返信も気張らず、コメントのトーンに合わせた返しをしています。

完全に個人のTwitter運用と同じようなスタイルで運営されており、徹底したコミュニティ型になっていると感じます。

この3社の例を出したのは、この3社が方針を定めて徹底しているからです。

連載の2-3回目であったように、差別化とは、壁を創って真似をできないようにすることです。この壁の創り方がとても上手な3社なのです。

方針を決めてそれを徹底すること。自分の守備範囲の外にあることは捨てること。それを徹底することで、特徴が際立ち、壁が出来上がります。

まずは、話題と発信スタイルを定めること。発信の頻度、発信の長さ、発信の強さ、フォロワーの方とのコミュニケーションの取り方を考えること。

それができて、初めて差別化の基礎が出来上がるのです。それは、目に見えないことですが、読んで頂くために大切なことです。

資源ベース理論で実例を考える

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では最後に、資源ベース論で見てみるとどうなるでしょうか。例として、VRIO理論に沿ってカップヌードルの発信を見てみます。

カップヌードルのSNSでは、エンターテイメント性を非常に強く打ち出しています。​​それは、カップヌードルがエンタメな食べ物だからです。

このエンタメ性がカップヌードルの価値(Value)です。そして、代替できない程の知名度を誇っています(Rare)

その知名度を活用してうまい棒とコラボしたり、SNSで映えるフタにしたりと発信だけでなく製品を巻き込んでエンタメを創り上げています

とにかく「楽しさ」で繋がる発信を徹底しているのです。これがマネのしにくさをさらに加速させます(Inimitable)

この発信が製品をさらに売れるようにして、面白い取り組みをするのでSNSがさらに楽しくなるという強い循環が出来ているのです(Organization)

要素と要素をつなげて、強さをフル活用している運用です。自分の強みを理解してそれを繋げていく。​​本当に上手な発信だと思います。

結局どうすれば良いのか

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まとめると、これまでの経営理論から考える、読まれる発信に必要な要素は以下の3点です。

1. ポジショニング理論:
差別化を意識し、話題・発信スタイルを決め一貫させる
2. 資源ベース理論:
自分の強みを活かすような、経験・体験を発信する
3. 資源ベース理論:
なるべく多くの強みを繋げられる、スタイル・発信を目指す

SNSの初期であるほど、IO型の競争環境ですので、差別化を意識した話題選びや、発信スタイル選びが大切になります。

そして、伸びていくにつれて、チェンバレン型の競争に移り、より資源ベース理論に基づく強みの結合が重要になるということですね。

SNSの発信を考える際にも使えたように、経営理論は、正解を出すための理論ではなく、考える基盤を与えてくれる理論です

使える理論を積極的に使うことで、選択肢を出すことや、決めることの基盤をくれるのです。

理論なき実践は空虚である

大学院で教授から頂いた言葉です。実践で結果が出たとしても、それが意図したものでなければ再現性がありません

また、たとえ失敗したとしても、実践の背景に理論があれば、失敗は理解出来た範囲を拡げる経験になります

理論を背景にSNSに取り組んでみると、理論の理解も深まり、実践からの発見も多くなるではないでしょうか。

皆さまの発信のご参考になりましたら幸いです。

ではでは。


<過去のシリーズはこちらから>


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