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【Sマナ06】YouTuberから考える、発信の面白さは個人の能力か仕組みの力か

前回までで、経営理論と言えばという、ポジショニング論資源ベース理論を見てきました。ただ、現代では様々な方向に議論が広がっています。

その中の一つが、前回に少し出てきたダイナミック(=動的な)・ケイパビリティ理論です。これはまだ非常に若い理論です。

一方で、そんな理論の若さと想定する環境が共にSNSの発信に合った前提とも言えるわけで、知っておくことは発信の役に立つかなと思います。

ダイナミック・ケイパビリティの議論が生じた背景

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ダイナミック・ケイパビリティは二つの理論を基にしています。一つは前回までで話してきた資源ベース理論。もう一つはルーティンの理論です。

資源ベース理論は、企業の「資源」を競争の源泉としています。ただ、実はそれは「安定した環境」を想定しているのです。

長年を掛けて培った資源が競争の源泉になるということは、逆に言えば、それが通じる程に競争の環境があまり変わらないということでもあります。

一方、現在の環境はご実感の通り、同じ環境が長く続くことなんてほとんどありません。想定する環境の前提がズレてきてしまっているのです。

この激しい競争は「ハイパーコンペティション」と呼ばれます。このような変わり続ける環境では、「持続的な競争優位」は起こり得ません

むしろ、「一時的な競争優位」を何回も何回も繰り返すことによって、「持続的な競争優位」っぽくすることが求められているのです。

そのため資源ベース理論から一歩進んで、元となる資源を環境に合わせて組み替えることが大事だよね、と考えたのが議論の始まりです。

他方で、変わり続ける環境を想定すると、そのような組み替えは一回で終わるものではなく、継続的に組み替え続けないといけないことになります。

そのための考え方がルーティンです。ルーティンは「慣習として埋め込まれた、​​繰り返しの行動プロセス」と言われます。

このルーティンをを変化させる、「ルーティンを変化させ続けるルーティン」が、ダイナミック・ケイパビリティであるとされます。

ティース型とアイゼンハート型

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このように、ダイナミック・ケイパビリティには組み合わせの力ルーティンの力という二つの要素があります。

そして二つの要素があるということは、例に違わず、どちらをより重視するかによって考え方の違いが生じます。

その二大潮流が、ティースさんを筆頭とするティース型アイゼンハートさんを筆頭とするアイゼンハート型です。

組み合わせる力の方に注目したのがティース、ルーティンの方に注目したのがアイゼンハートです。

組み合わせる力そのものに着目すると、それは属人的な能力であって、センスの問題となります。

一方、ルーティンの方に着目すると、それは仕組みの力であって、ルールの問題となります。

発信者な私たちは、二つの見方を知った上で、発信に上手く活かすことが大切だと思っていまして、今回はYouTuberを例に考えていきたいと思います。

ティース型のYouTuber

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ティース型では、ダイナミック・ケイパビリティを高める要素は、チャンスを見つける能力と、それを捉える能力であると言われます。

前者は「センシング」と呼ばれる認知を拡げる活動で支えられます。例えば、①流行の理解、②データの分析、③成功事例の把握などです。

一方後者は「サイジング」と呼ばれる新しいことを始める活動で支えられます。例えば、①別枠でする、②カニバリを厭わない、③投資するなどです。

言われてみるとその通りなのですが、実行することがとても難しいのがティース型の考え方です。その難しさから、ティース型は属人的と言われます。

そして、YouTuberでこのティース型なのが、『Hikakin TV』『はじめしちょー』と言った、トップYouTuberです。

彼らの特徴は「やってみた」です。巷で流行っていることを敏感に感じ取り、自分にできることをとにかくやってみる。その感性が最大の売りです。

彼らも最初はメントスコーラ、ハンドスピナー、激辛ソースの焼きそばなど、流行っていて簡単にできることから始めています。

そこから得たお金で、ボールプールを作ったり、オーケストラとコラボしたりり、普通でできない買い物をしたりと、次々と投資していくのです。

ウケる領域を感知して、新しいことをすることをためらわず投資も怠らない。さすがフロントランナーだと感じます。

アイゼンハート型のYouTuber

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一方、アイゼンハート型は「シンプル・ルール」の大切さを説きます。

「シンプル・ルール」とは変化が激しい環境の中では、数を絞ったシンプルなルールだけを徹底して、後は柔軟に対応しようというものです。

変化が激しい時代に何でもルールで対応しようとすると、変化について行くことができないのです。​​そこで敢えてシンプルなルールで対応します。

YouTuberで言えば、あっちゃんを筆頭とした「教育系」 YouTuber、「ゲーム実況系」のYouTuberといった、「〜系」とテーマを持った発信者です。

彼らの特徴は、「自分の軸に沿ったことなら新しいことを何でもやるということです。逆に言えば、軸以外のことには手を付けません

これは、​​発信者としてみれば「やる・やらない」のルールが極めてシンプルですし、そのジャンルが好きな視聴者には深く刺さります。

テーマを絞るためトップYouTuberに登録数は敵わないのですが、リピート率が高く出る発信ではないかと思います。

一般的に参考になるのはアイゼンハート型

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このように、「やってみた」のティース型「〜系」のアイゼンハート型がダイナミック・ケイパビリティの二大潮流です。

まとめると以下の表です。そして、どちらが参考になるかなのですが、多くの人にとって参考になるのは、アイゼンハート型ではないでしょうか。

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ティース型の欠点は、やはり属人的であるということです。つまり、個人のセンスによるものなのでマネしようにもマネできないのです。

ただ、センシングとサイジングという二つの活動を回すことであると定義もできますし、マネのしにくさは圧倒的な差別化の要因にもなります。

一方、アイゼンハート型は、自分の中でルールを決めてそのルールに基づいて新しいことに取り組んでいくというシンプルなものです。

ただ、このシンプルさがむしろ変化の激しいSNSの環境に合っているような気もしますし、仕組み的なので多くの人の参考になるのです。

ということで、①シンプルなルールを決めること②その中で新しいことには積極的にチャレンジすることが多くの方の参考になるのではと思います。

まだやれる、明日があるんやから

最後に明石家さんま師匠の言葉です。環境の変化の激しいお笑い業界で長年フロントランナーを走るということは、変わり続けることでもあります。

SNSでも伸びる時もあれば詰まるときもありますよね。それは環境の変化に合わせて自分も変わる必要性を教えてくれているのだと感じます。

ダイナミック・ケイパビリティというまだ新しい領域。それは、変化の激しさになんとかして抗おうとする人々の知恵の結集でもあります。

本当に、SNSにぴったりな考え方だと思いませんか。

ではでは。


<過去のシリーズはこちらから>


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