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新しい扉をたたいて
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ずっと気になっていたカフェへ出かけた。
夫に娘を見てもらい、ひとときの休息。
カフェまでは歩いて行った。
イヤホンをつけて好きな音楽を聴く。
冬の冷たい風に吹かれても、心は温かかった。
これまでは普通に出来ていたことが、今となっては贅沢な時間になった。
はじめて来たそのカフェは店主が一人で営んでいるらしく、席数も限られていて空間も狭かった。
扉を開ける時、楽しみな気持ちよりも緊張が優った。
どんな形式で注文するのか、どんなメニューがあるのか、来てみないと分からないのが少し怖かった。
(相変わらず手間取ったり失敗することが怖い)
だけど私は新しい体験が欲しかった。
出産してからというもの、ずっと家にいて夫と娘だけを中心に世界が回っている。
会話の内容も気づけば単調だ。
今の生活はとても穏やか。
育児に対する不安はあるけど、仕事のストレスから離れられているのがとても気楽だ。
それなのに急に息が詰まった。
赤ちゃんが眠れば自分の時間はやって来るけど、結局家からも赤ちゃんからも離れられない自分がいた。
新しい空気、新しい場所、新しい人、新しい刺激。
渇望とはこのことか。
新しいものに触れることは緊張して少なからずストレスを伴うのに、それでも欲しいと思った。
そしてそれは、赤ちゃんの為ではなく私が私のためだけに出来ることだ。
よし、家を出よう。
冷気の中、自分のペースで歩き、好きな音楽に浸る行為はまるで放電のようだった。
満たされるというよりも、淀んでいたものが放たれていく感じ。
苦しい気持ちが冬の曇り空に吸い込まれていった。
店主は穏やかな表情で私を迎えてくれた。
無事に注文を終えると、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。
紅茶といちごのタルトケーキを選んだ。
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温かい紅茶の香りを心ゆくまで味わい、いちごのタルトケーキを少しずつ崩して食べた。
娘が生まれてからというもの、ご飯はかき込むように食べることが普通になってしまっていた。
温かい飲み物を用意してみても、何かしらがあって中断されることばかり。
気づけば冷めている飲み物を一気に飲み干してしまうのが常だった。
だから久々にゆっくりと食事を楽しめたように思う。
母親になる前の生き甲斐や自分そのものもまた大事にしていきたい。
きっとそれが大切な人を守れる自分に繋がると思うから。
ずっと気になってたカフェに行けたことはその第一歩になった気がする。
とても素敵なカフェだったのでぜひまた行こうと思う。
ご馳走さまでした。
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