教員志望者は非常勤講師になるべきか

年に1度の教員採用試験。試験に落ちた後の道は2つだろう。

①私立の教員採用試験を受ける

②臨時教員、講師となる


①の私立の教員採用については公立の教員試験の結果が出る10月あたりから求人が増え始める。私の見るところでは私立の教員採用は基本的に3年ほど常勤講師(契約社員扱い)であり、1年目から正規の教員になることは少ないのではないかと感じる。

私は社会人2年目から中途として私立教員になったが、2年間は契約社員扱いでありボーナスは年2回で10万円と物足りなかった。長年勤めていけば給料は上がり、進学校ならばもっと待遇は良いと思うが、やはり公立の正規教員の安定感には及ばないと思う。

教員は長時間労働にも関わらず残業代が出ない。私立も同様で全額残業代が出ることはなかった。

教員採用試験に落ちた後、②の臨時教員、講師になって勉強を続けていく道はスタンダードである。

教員採用試験の発表後、講師名簿の登録ができ、欠員次第で公立の教員の声がかかることがある。常勤講師(フル)か非常勤講師(教科のみ)かを選んで登録できる。また、私立も非常勤講師を募集している場合がある。

私は非常勤講師の経験がある。

非常勤講師になる人間は大きく分けて二種類である。

①正規の教員を目指している人、

②定年退職、結婚後もフルではないにしろ働きたいと考えている人

である。

1コマ(授業)の給料は、公立ならば2500〜2800円、私立ならば3000円ほどである。だいたい週に15コマ入るとして月に17万円ほどの収入になる。

授業準備、印刷に少なく見積もっても1授業につき1時間はかかる。テスト作成や丸付けも負担である。(非常勤講師にテストを作らせない学校もあるが私は作らされていた)通知表の評価作成のときは給料も出ないのに18時以降も残っていた。

また、時間の負担にプラスして非常勤講師は悩みが多かった。実際、2020年3月に私立の常勤講師を辞め、非常勤講師をしていた2020年4月~に悩んでいたことをメールに数通下書きとして残していたのでそれを以下に引用する。

単元テストが年に5回、定期テストも年に3回あり、給料も出ないのに自分がテストを作らないといけない。テスト作成には毎回何時間もかかり、できたテストをチェックしてくれる先生もいない。

再テストもしないといけない。単元テストの再テストも毎回作らなければいけない負担、丸つけの負担もありついていけない。
5月はオンライン授業で、6月からの授業であるにもかかわらず教科主任の先生から授業の進み具合が遅いと言われた。
責任が重い。それにも関わらず、なかなか他の先生も目に向けてもらえない。

この下書きを見たとき、かなり非常勤講師としても悩んでいたことを思い出した。

割りに合わない給料に加え、収入も安定しない。夏休み、冬休み、春休みは授業がないため無収入である。特に8月は補習を任されない限り収入はゼロであり、アルバイトを探す苦労がある。また教員採用試験の2次試験の時期でありアルバイトをフルに入るわけにもいかない。

この時期に受けた公立の教員は心労で辞退してしまった。それでも悩みながら私立の教員を受け続け合格をもらった。

その後は体調も回復していった。アルバイトも3月末で辞めることを伝えた。4月からは正規の教員として収入は安定するはずだったが

2021年2月25日に不当に内定を取り消された。

そこからずっと躓いてばかりだ。2020年代の私は今と比べても努力しようとする気はあった。今は努力する気も起きない。

非常勤講師の話に戻る。待遇は時間を食う割りに給料も不当である。職員室ヒエラルキーも最下位だ。以上の理由から正規の教員志望者にはお勧めしない。

定年退職、元教員の主婦、主夫など、ある程度生活の安定がありながら教えることが生き甲斐だと考えている人にはいいのではないと思う。


割りに合わないことを承知しているならば。


今後も教員のなり手はどんどん減っていくと思う。♯教師のバトンプロジェクトは教職を目指す学生や社会人に向けた真向きなメッセージのはずがブラック労働、やりがい搾取のSOSとなってしまった。臨時教員になれば教採の1次試験を免除できる自治体も多く臨時教員になることは推奨されているがその目的はただの欠員埋めであり必要とあれば教員採用試験の勉強に影響が出るところまで時間を奪ってくる。きっと何年経っても変わらないだろう。時代錯誤の給仕法だってなくなる気配がないのだから。


1個、非常勤講師をしているときに印象に残っていることがある。

同僚には、20年以上非常勤講師として働いている年配の女性の先生がいた。物腰は柔らかく頭の回転が速かった。英語ペラペラ、高3の受験生から尊敬され、常勤の先生からもかなり頼られていた。そんな先生も結婚や親の介護のために常勤にならず非常勤講師をしているという。

そんな先生に言われた言葉がある。


あなたが職員室に入ってくると空気が柔らかくなる。春風のようです。と。


私は今でも春風だろうか。待遇にも貧困にも苦しんだ。荒んだ心が戻るときが来るかはわからない。


読んでくれてありがとう。




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