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『いつか、虹の向こうへ』読書感想文

🎃Trick or Treat🎃

【読書感想文】
読書の秋ですね。ミステリー作家、伊岡瞬さんの新刊『仮面』を読んだ流れで、家にあった古い作品も再読しています。

伊岡氏といえば、やっぱり緻密に作り込まれた『悪』が魅力の作家さんです。

『いつか虹の向こうへ』は、2005年横溝正史ミステリー大賞を受賞したハードボイルド小説で、伊岡氏のデビュー作です。他の作品と比較すると『悪』は控えめかなと思います。

お人好しの元刑事、尾木遼平がそれぞれに闇を抱えた同居人たちと共に、ヤクザ絡みの殺人事件に巻き込まれてゆくお話です。

物語の冒頭の方にあった主人公の言葉に『罪』の本質を感じ、しばらく『罪』について考えていました。

自業自得というのはたやすい。

~中略~

『魔が差す』という言葉でしか説明しょうのない人生の深い闇が存在することは、痛いほどわかっていたはずだった。後悔することに意味はない。

~中略~

自分で止められないこそ『魔』の瞬間なのだ。落ちるべくして落ちた穴だった。

加害者も被害者も特別な人だけがなるものでなく、昨日まで普通に暮らしていた人が、ほんの些細なことがきっかけで、いつでも、どちらの立場に成りうるということ。

『罪』とは、起こるべくして起きてしまう運命なのだということを思い出していました。

ちょうど少年の軽微な『罪』を目にしました。

『罪』が運命で、魂を成長させるために必要な課題としての出来事だったとするならば、その『罪』に関わる全ての人の課題でもあるのかなと思いました。

もちろん少年自身もその課題を放置すれば、犯してしまった『罪』よりも大きな『代償』を被るかもしれません。

常識が課題の正解でもないですし、なかなか簡単に答えは出ないかもしれませんが、自分自身の心に静かに向きあい続ければ、きっといい答えを見つけることはできると思います。

今の事は今のうちにひとつずつクリアにして前に進めるようになったらいいなと思いました。

タイトルになっている『虹』は、悲しいほど大きな虹ができるという絵本の物語になぞらえて、登場人物たちがいつか『悲しみ』の向こう側へという願いを感じます。

最初から容疑者が逮捕されて犯人は別の人ってパターンは、伊岡氏の人気作品には多い設定なんですが、デビュー作もそうだったんだですね。

テンポもよく、キャラ設定もお話の軸も面白いです。ドキドキしながら1日で一気に読めました。

猛毒ミステリーが好きな方には物足らないかもしれませんが、ハードボイルドも素敵でした。

興味のある方は、
お試しくださいませ。

いつも読んでくださり
ありがとうございます٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

🎃Happy Halloween🎃


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