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『くもをさがす』読書感想文

自分のことでもない。仲良くしているnoterさんが、二度目になる乳がん手術を前に、隠し切れない不安を滲ませていたのは8月の終わり。その日の空が青過ぎて、悔しくて泣いた。

テレビに録画してあった映画は『シャーロットのおくりもの』だった。蜘蛛のシャーロットは、春生まれの子豚ウィルバーが、クリスマスのご馳走にならないように、奇想天外なアイデアで子豚を救った。

乳がん手術をする彼女の部屋にも、たまたま入ったデパートのトイレでも小さな蜘蛛が横切り、西加奈子さんは初エッセイ『くもをさがす』の宣伝のためテレビに出演していた。

『くもをさがす』
2021年コロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者西加奈子さんが、乳がん発覚から治療を終えるまでの約8 ヶ月間を克明に描いたノンフィクション作品。カナダでの闘病中に抱いた病、治療への恐怖と絶望、家族や友人たちへの溢れる思いと、時折訪れる幸福と歓喜の瞬間――。切なく、時に可笑しい、「あなた」に向けて綴られた、誰もが心を揺さぶられる傑作です。

河出書房新社ホームページより

わたしが生死をさまよったのは子供のころだから、治療への恐怖や絶望みたいなものは、あまり覚えていない。40代前後の頃、わたしの右肩の骨の中に腫瘍がみつかった。骨にドリルで穴をあけてまで精密検査をすると、社会生活に支障がでるため、もう10年以上ずっと経過観察ということで放置している。当時は骨が爆発するんじゃないかと思うくらいの強い痛みがあったが今はない。ストレスがかかると痛みが強くなるのでストレス回避は大事だと思う。

その立場で経験しないと本当の気持ちはわからない。

西加奈子さんが体験した内なる感情を、すべて引用した本の一文を使って表現していたことは、余計に胸にきた。

言葉にするのも恐い向き合いたくない感情は、
『ああ。これこれ、こんな感じ』くらいのほうがいい。

カナダ、バンクーバーのミールトレイン(ご近所の友人たちが、順番にごはんをお届け)などの助け合いが治療の支えになり、カナダの医療従事者のみなさんが、明るくて関西的なおおらかなノリだったことに、とても救われたと西さんは、テレビで仰っていました。(助けてもらえるのは、西さんのお人柄によるところも大きいとは思うけれど・・・)

実務が伴えば、空気を読まない明るさも振り切れば愛だな。

今日は西加奈子さんが闇落ちする寸前に踏みとどまった曲
ボニータアップルボムを貼ってみます。

いつも読んで下さりありがとうございます。



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