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完敗ロールケーキ

大阪にて。

中之島美術館へ行った後、
パティスリー「モンシェール」へ。
一世を風靡した、

"堂島ロール"

を生み出したお店です。

"堂島ロールが食べたい"
その一心だけで向かったはいいが、
イートインがない。

外は灼熱の暑さ…
2切れだけ買い、保冷剤を入れてもらう。

向かいのコーヒーチェーンで
アイスコーヒーを買い、
人通りの少ない日陰を見つけ、
食べてみる。


"あぁ、これが、そうなのか。"



クリームの美味しさは、言うまでもない。

私が圧巻だったのは、
キメが均一に細かく整ったロール生地。

これが、本物なんだ。
こんなの、敵うわけない。

溶けないうちに急いで食べる。
美味しいケーキは人を幸せにする。

でもそれ以上の幸せは、
自分にはこんなの作れないってモノに
出会うことなのだ。


身の程をわきまえずに、
何でそんなにプロのケーキと
張り合ってたわけ?

って話ですよ…



今まで私が一番たくさん作ったのが、
ロールケーキだと思うのよ。

欧州に3年、
南米に3年、住んでいた。

食べ応え重視な現地のどっしりケーキは
時に、日本人を萎えさせる。

試行錯誤を重ねて、
現地の材料でも、フワフワで
口溶けの良いロールケーキを目指して、
毎日、毎日作った。

1000本とまでは行かないかもだけど、
とにかく、ロールケーキ作りに明け暮れた。

友達や、子どもたちにも好評で、

「堂島ロールみたい」

と褒められたりもした。
堂島ロールをたべたことない私は、
良く分からなくて曖昧にお礼を伝えていた。

周りに、こんなアホみたいにお菓子を
作る人もいなくて、
ちょっといい気にもなっていた。

堂島ロールだか、
何だか、知らないけどさ。

なんて具合に。


確かに、当時。

現地の材料を比較して、
最適な小麦粉を見つけて、
型や敷紙も現地調達。
工夫して、改善しながら
温度も設定出来ないボロボロのオーブンで
作っていたあのロールケーキは、

"堂島ロールみたい"

と、褒められる価値があった気がする。

それくらい
みんな、フワフワケーキに飢えていたし。

食べやすく個包装していた。


あの頃から、10年以上経った。

やっと本物を食べて、
あの頃、最高の褒め言葉をもらっていた事に
今頃気がついたのだった。

寝る間も惜しんで作っていたあの頃。
日本の便利さにすっかり情熱を失ったかも。

堂島ロール…

前の私なら、なんとしても、
作りたいケーキだったはず。

今の私は、食べたいケーキ。

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