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香りのタイムマシン

はじまり

香りとは不思議なもので 嗅ぐだけで記憶がフラッシュバックしたり 酸いも甘いも全部思い出しちゃうような、そんな力が秘められている。

どうやら香りだけは 脳の中の本能的な行動や感情に直接作用できるんだとか。
とある小説の作者の名を取って プルースト効果、なんて言ったりもするらしい。

今回は私のプルースト効果のお話を、少しだけ綴らせてほしい・


私と香水の出会い

私が生まれて初めて身にまとった香水は ジバンシィのプチサンボン。

この香水はベビー用香水と有名で、
香水やコスメが好きな母の影響をばっちり受けた私に よく母が吹きかけてくれた香水であり いまでもたまに使ったりする。

実際に 妹も使っているので 我が家に今あるこの子は何代目なのだろうか。私の香りというより 家族の香りという方が正しい気もする...

そして、普段はロクシタンのヴァーベナや 最近なんだか有名になっちゃったドルチェ&ガッパーナなどの 爽やかな香水を好むことが多い私を

(推しのイメージ香水やデート用香水 寝香水なんかは違うけど 話し出すと長くなるので今回は割愛させてほしい)

唯一トリコにしたローズの香水がある。


ローズの香水

その香水は母が昔使っていたもので、箪笥の上の香水コレクションに精一杯背伸びして こっそり使おうとしてはバレて怒られていた。
涙目の私に対し 最後の方はあきらめ顔で 特別だよと振りかけてくれたあの香水。
今思い返せば 大きくなったら貰うんだなんて口約束をしていたような気もする。

しかし、気づけば母はその香水を使わなくなっていて、私の記憶からもすっかり抜け落ちてしまっていた。

でもローズ系の香水に手を伸ばすたびに「なんだか違う」という違和感があって、
ブルガリもクロエもディオールも試したけど矢張り なんだか違う。

私の求めてるローズって何だろう?

一番それがなかったロクシタンのローズを 偶につかってみたりもした。

再会はドラッグストア

そして先日、美容院の帰りにふらりと立ち寄ったドラックストアで、
私は一本のコロンに出会った。
それと同シリーズの中のパウダーだかリップだかを母が昔使っていたような気がして、
懐かしいしお土産にでも買って帰ろうと、手に取ったそのコロン。

それこそが、
私をトリコにしたローズの香水だったのである。

その香水はどこの国とかデパートがとかそういうのはなくて 
そこそこ近所のドラックストアの片隅に、ポツリと置いてあった。

ああ、それでこそ母の香水だなあと なんだか笑ってしまった。

ノートとか関係なく純粋なローズ。
ずーっとローズ。

持続力も普通で、シンプル。

それゆえ
日常にスッと溶け込んできて飽きがない。

だからこそ母のコレクションの中でも手前に居て、私の記憶にも溶け込んでいたのかもしれない。溶け込んでいたからこそ今まで思い出せなかったのかも。


これから

再会を喜ぶと共に思うが 
矢張りこの香りは母の香りだ。

今は違うとはいえ、これをいまさら「私の香り」とするのは厳しいものがあるだろう。

母と私は思考や好みが似ていて、姿や体型も似ているのもあり 昔から服やコスメのシェアをすることがある。それはシンプルに楽しいし嬉しいのだが、矢張り香りくらいは自分だけのものをもっておきたい。

自分の原点となる香水が見つかった今なら 違和感なく本当の「自分の香水探し」に取り掛かれるような気がする。

このコロンを一吹きさえすれば

いつでも原点に戻れるのだから。

このコロンは 私だけのタイムマシンだ。

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