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親の醍醐味

この道ってこんなに広かったっけ?
こんなに世の中って見やすいもんだっけ?

イオンの駐車場で戸惑っている私。

年長になったこんちゃん。
「ひとりで歩けるもん」なんて格好いいこと言っちゃって
今日は私の前を歩く。

多少ドキドキしている私。
でも最近急激に身長の伸びた彼女の後ろ姿からは、年相応のドギマギ感はあまり感じられなかった。

それにしても左手がスースーする。
「ママと手を繋ぐの!」って、しつこいくらいに私の隣を陣取ろうとするこんちゃんは、今日は前にいる。

あっそことまらないと危なくない?
もうすこし早く止まらないと運転手さんに迷惑じゃないか。
うしろみたの?後ろから来てるよ?

そんな言葉たちをグッとこらえる。こらえてみる。

それにしても視界が広い。
いつもコンちゃんに合わせて若干かがみながら歩いていたなんて、今更気がついた。

たどたどしくもちゃんと自分で道路を渡るこんちゃん。
その後ろにただ「私は保護者です」という顔をしてついていく私。

車にたどり着いたこんちゃんは「ほーら、できるでしょ」と満面の笑み。

うん、できたね。

本当は知っていたよ。もう君ができるってこと。

たどたどしくも自分で一生懸命前に進もうとしていることも。

君の後ろ姿も、左手の寂しさも、視界の広さも、私が感じたくなかったんだ。

あの小さい手をなんとか必死に守ることは、君のためと思っていたけど、本当は私のためだった。

ごめんね。手放すのが苦手なもんで。

嬉しくないわけがない。安心してないわけがない。

でも君のその笑顔が、私を少しだけ寂しくさせる。

これが親の醍醐味なんだと
そんなふうに思いながら、今日も夜が更ける。





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