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ある日のあの夢の話
エレベーターで地下に降りていく。
ひんやりとしていて静かなその空間に私は1人だった。
少しの不安が心をよぎる。私はいま、何をしているのか、と。
私の横には長い、桐でできた質素な箱が横たわっている。私はこれを、ついさっき買った。
買ったのは、この建物の地下1階。
建物は表面上はデパートになっていて、でも内部にはある秘密が隠されているようだった。
なぜ、私にはこの長い桐の箱が必要なのか。
わからない。
エレベーターが地下5階にとまった。
私は桐の箱とともにエレベーターを下りる。
誰にそう言われたわけでもないのに。
私は、私が何をしたいのかはわからない。でも、さもわかっているかのようにこのよくわからない状況を現実として捉え、受け入れている。
エレベーターを降りた先もまた、薄暗かった。
音もなく、誰もいない空間が広がっていたけれど、不思議と不気味さや怖さはなかった。
そういうものだと言わんばかりの空気を、私はやはり受け入れる。
でも私が何をしたいのかは、やっぱり私にはわからなかった。
何が始まるのかも、もちろんわからないままだ。
私は桐の箱とともに薄暗い空間を進んでいく。
すると扉があった。
迷わずその扉を開けたその時、眩しい光が私に降り注いだ。
そして、私は目覚めた。
何が起こっていたのかを理解するのに数秒かかった。
数秒経つと、さっきの出来事が夢であったことを理解する。
私は朝日を浴びて横たわっているだけ。
さっきまでいた空間の、冷ややかな空気や静けさをありありと思い出せるのに、私がそこに居たという事実はない。
あの、秘密が隠されているデパートも桐の箱も、結局何だったのだろう。
桐の箱とともに向かう先はどこだったのだろう。
考えても仕方がないけれど、あまりに鮮明な夢だったせいで、私は何度も思い出してしまう。
そんな、とある日のあの夢の話。
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