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コミュニティはなぜハブ型からメッシュ型に進化するのか?(2/2)

以前の記事では、ハブ型コミュニティとメッシュ型コミュニティの特徴について分析しました。ハブ型は中央集権的で効率的である一方、リスクも抱えており、メッシュ型は分散的で創発的で、より強靭なコミュニティを形成できる可能性があることがわかりました。

今回は、コミュニティがハブ型からメッシュ型へと進化していくメカニズムについて掘り下げていきます!




ハブ型からメッシュ型への進化

コミュニティは静的なものではなく、時間とともに変化し、進化していきます。多くの場合、コミュニティは初期段階においては、立ち上げの容易さや求心力からハブ型をとることが多いです。しかし、コミュニティが成熟し、メンバー数が増加するにつれて、メッシュ型へと移行していくケースが多く見られます。

その背景には、技術の進化、とりわけインターネットとソーシャルメディアの普及によるコミュニケーション手段の双方向性が高まったことが背景にあります。一方的な情報伝達がメインだった頃は情報を発する人がハブになりやすかったのですが、メンバー同士で直接コミュニケーションを取りやすくなったことでメッシュ型に移行する傾向が強まったのだと言えます。

では、どのようにハブ型かメッシュ型に進化していくのでしょうか。その流れを大まかに追ってみましょう。

①運営者の権限委譲

コミュニティが成長するにつれて、ハブとなる運営者は、すべての活動を一人で管理することが難しくなります。そこで、運営者は自身の権限を徐々にメンバーに委譲し、意思決定や活動の分散化を進めていきます。サブリーダーやワーキンググループを設けるなど、組織構造を進化させることで、運営者への負担を軽減します。コミュニティのサステナビリティの向上も見込めるでしょう。

②メンバーの主体性向上

権限委譲が進むにつれて、メンバーは自発的にコミュニティ活動に参加する機会が増え、主体性が育まれます。メンバーは自分の得意分野を活かした活動や、新たな挑戦を通じて、コミュニティに貢献する喜びを感じることができます。コミュニティへの所属意識が高まり、より積極的にコミュニティ運営に関わるようになります。

③メンバーの多様化

ハブ型のコミュニティは中心人物の影響力が強く、特定の価値観や視点に偏る可能性があります。しかし、コミュニティへの所属意識が高まったメンバーが増えてくると、彼らは多様な意見やバックグラウンドを持つメンバーを呼び込みます。多様なメンバーが直接繋がり、相互に影響を与え合うことができるようになっていきます。

④コラボレーションによる信頼関係

主体的なメンバーが増え、多様化が進むことで、メンバー同士のモチベーションやスキルの掛け合わせの可能性も広がっていきます。その結果として大小さまざまなプロジェクトが自発的に立ち上がります。プロジェクトでは大量のコミュニケーションや共同作業が発生し、メンバー同士の信頼関係が深まります。信頼関係は、コミュニティの健全な運営と長期的な成功に不可欠です。ハブ型では中心人物への信頼に依存しがちですが、メッシュ型に移行する過程で多くの小さな信頼関係が網の目のように広がり、コミュニティ全体の安定性を高めます。


ハブ型から①に移行したあと、②〜④はループしており、このループが回り続けていくなかでハブ型からメッシュ型への進化が進んでいきます。この進化によってコミュニティはより持続可能なものとなり、個々のメンバーが自分なりの楽しみ方や活用方法を見出す場を提供できるようになります。コミュニティ運営者は、この進化のプロセスを理解し、適切な施策を講じることで、よりメンバー主体の魅力的なコミュニティを築いていくことができるでしょう。


ハブ型とメッシュ型のハイブリッド

コミュニティの構造は、ハブ型とメッシュ型のどちらか一方に限定されるものではなく、多くの場合、両方の要素を組み合わせたハイブリッドとして存在しています。これをハイブリッド型と呼びましょう。ハイブリッド型は、コミュニティの目的や発展段階、規模、特性などに応じて、最適な構造を柔軟に選択できます。

ハイブリッド型のメリット

ハイブリッド型の最大のメリットは、ハブ型の運営者による方向性の提示と、メッシュ型の自律性や多様性のバランスを取ることができる点です。ハブ型の中心的な人物や組織が重要な情報伝達や意思決定を迅速に行う一方で、メッシュ型のメンバー主導の活動によって、多様なニーズに対応することが可能になります。また、ハブへの依存度を軽減しつつ、メンバーの主体性を育むことで、コミュニティの長期的な成長と安定性を確保できます。

ハイブリッド型のタイプ

ハイブリッド型のコミュニティは、様々な形で実現されます。例えば、コミュニティの中心的な活動や意思決定を担う少数のコアメンバー(ハブ)が存在し、他のメンバーは緩やかにつながりながら自由に活動に参加する形態があります。また、複数の専門分野やテーマごとにハブとなる人物や組織を設け、各分野ではハブ型の運営を行いつつ、分野横断的な交流や連携を促進するメッシュ型の構造を併せ持つ形態もあります。さらに、コミュニティの立ち上げ当初はハブ型で求心力を高め、成長に伴って徐々に権限を委譲し、メンバー主導の活動を増やしていくことで、メッシュ型へと段階的に移行していくアプローチもあります。

ハイブリッド型の具体例

ハイブリッド型の事例として、大規模なオープンソースプロジェクトが挙げられます。プロジェクト全体を統括するコアチーム(ハブ)が存在する一方で、個々の開発や機能追加は、世界中の開発者による自律的な貢献によって進められます。また、企業内のコミュニティでは、部署やプロジェクトごとにリーダー(ハブ)が存在し、効率的な情報伝達や意思決定を行いながら、部門横断的な交流やイベント、ワーキンググループなどを通じてメッシュ型のつながりを促進し、イノベーションを創出しています。地域コミュニティにおいても、地域活性化に取り組むコア団体(ハブ)が活動の方向性を示す一方で、住民が自発的にイベントやプロジェクトを立ち上げ、地域課題の解決や交流促進に貢献するハイブリッド型の運営が見られます。

この研究の活かし方

コミュニティの構造を抽象化し、ハブ型とメッシュ型という2つのタイプに分類して分析してきました。この研究成果をどのように活かしていくことができるでしょうか。

第一に、コミュニティを立ち上げる際や、既存のコミュニティを見直す際に、ハブ型とメッシュ型の特徴を理解し、目的や状況に応じて適切な構造を選択することができるでしょう。例えば、明確な方向性を示し、迅速な意思決定を行うことが求められる場合にはハブ型の要素を強めることが有効でしょう。一方、メンバーの多様性を活かし、イノベーションを創出することが目的である場合には、メッシュ型の要素を取り入れることが望ましいと言えます。

第二に、コミュニティの成長や発展に合わせて、構造を柔軟に変化させていくことが必要です。初期段階ではハブ型の要素を多く取り入れ、コミュニティの方向性を明確にし、一体感を醸成することが大切です。その上で、コミュニティが成熟するにつれて、徐々にメッシュ型の要素を強めていくことで、メンバーの主体性を引き出し、持続的な発展を目指すことができます。

第三に、この研究で得られた知見を、コミュニティ以外の組織にも応用することもできます。企業組織やプロジェクトチームなどにおいても、ハブ型とメッシュ型の特徴を理解し、状況に応じて適切な構造を選択することで、効率性と創造性を両立することが可能になります。また、ハイブリッド型の組織を設計する際には、リーダーシップと自律性のバランスを取ることが重要だと言えます。



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