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母親に心が男であると打ち明けたのに円満でいられる理由

 皆様こんにちは。クロルと申します。私は現在、FTMの治療と手術を受けるためにGIDクリニックを通院しております。
 今回は母親にカミングアウトしたのに共に仲良くしていられる理由を私なりに解釈して説明していきます。
 私の情報が皆様のお役に立てると嬉しいです。それでは、見ていきましょう。


特殊な親子関係と想像させるカミングアウト

 私と私の母は現在、喧嘩することも気遣い合うこともなく、普通の関係です。母はカミングアウト前と後で態度も特に変わりありませんでした。
 何故、カミングアウトされても変わらない関係性でいられるのか。それには大きく分けて3つの要因があったからだと、わたしは考えております。

 ①母は昔から私が“男になりたいのでは”と見抜いていた。

 ②私は①を感じ取っており、母の人となりをよく分かっていた。

 ③カミングアウトが間接的。

 一つ一つ解説していきます。


①母が知る私

 私は小さい頃から男の子がするような行動を取ってきました。中学に上がってもサラシを巻き、高校では髪を切り、ズボンで登校。
 詳しくは下記の記事で。

 正直、ここまでしていたら殆どの人は察すると思います笑。
 母はたまに友人、知人に私の男っぽい格好を指摘され、少し困った様子でした。それは相手に何か言われたからでも、母が私の格好に不満を持ってるからでもありません。母は私が「FTMかもしれない」と頭の中で思っていたからでしょう。
 母は昭和生まれの人間ですが、ステレオタイプではありません。ニュースやネット等の媒体でLGBTを知り、私を当てはめていたのだと思います。


②私が知る母

 母は私から見ても不幸な人だと思います。幼い頃に妹を亡くし、弟も心臓病で失っています。父と結婚しますが、父の母親が相当嫌な人間だったようで、逃げ場がなかったようです。仕事でも忙しく、不器用で中途半端に優しい故か、損な役回りを負っています。肝心の父は何もしてくれないので、頼る意味もないです。(父の問題についてはまた今度、詳しく説明させていただきます。)
 母は私を産む前に兄を産んでいます。つまり、母にはすでに息子がいますが、兄は身体障害を持って生まれました。第7級です。兄は就職に失敗し、アルバイトや職務経験なしでそのまま引きこもりに。加えて私のこともあるので、前世で一体何したらこうなるんだレベルの不幸だと思います。

 私は、母が私に“依存するしかない”ことを知っていました。そして、私のことを薄々感じ取っていることも。
 あまり快い手段ではありませんが、私はそれを利用しました。


③間接的なカミングアウト

 私は直前まで家を出て一人で暮らしていく道も考えていました。しかし、一人残される母のことを考えると少し同情してしまい、その道は選べませんでした。
 それに、私は今まで元カノ以外の誰にもカミングアウトしていません。元カノについては下記の記事で。

 もし、新天地で治療して社会に出ると、せっかく男からやり直せるチャンスが台無しです。友達から金を借りるなんてこともしたくはなかったので、金銭面も余裕がないです。過度に働くとまた心がやられる可能性があったため、家出の一人暮らしは得策ではないと結論付けました。


 では、どうカミングアウトするのか。
 私はそもそも、“カミングアウト”というものが好きではありません。
「生まれた時から元々こうであったのに、周りに畏まって言わなきゃいけないってどういうこと?」
と思います笑。
 それに、「私は男だ。治療と手術をしたい」と面と向かって(向かわなくても)いきなり言うのは、少し相手が可哀想すぎませんか? もし私に将来子供が出来て、その子が言ってきたら私でも驚きます。普通に悩みますし、「間違いなのでは?」と確認しちゃうのではないかと。それくらい動揺すると思います笑。
 心の準備が出来ていない相手に突飛な話をするのはあまり良い手段とは思えません。相手にもペースがあるので、私は直接言うことはしませんでした。
 ※私のカミングアウトは合理的ですが、良い手段とは言えません。家族関係を保ちたいと思う方のみ参考にしていただければ幸いです。

 まず、私の母は情弱なところがあったので、そこを利用しました。
 私は母にGIDクリニックの予約受付の日時が記載された紙を見せました。母が紙を見ている間、私は退出します。数分後、私は母の元に戻り、紙を回収。私は
「ネットのメディカル診断で症状を診断した結果、このGIDクリニックに行けと言われたので行くことにした」
大嘘を吐きます。メディカル診断はあれど、特定のGIDクリニックを勧めるメディカル診断は存在しません。母は情弱なので頷きました。そして、私は母の部屋を退出。
 初めてのカミングアウトは間接的な方法でした。


情に訴えかける

 母は情弱であれど、馬鹿ではないので「GID」について調べたことでしょう。病院のことも調べたハズです。数日経てば心の整理もある程度自分で着けられると思うので、また母と会話を交わします。
 その時、私は「病院に行くのも治療するのも不安だ」とあえて弱いところを見せて情に訴えかけました。実際、不安だったので嘘はないです。
 私は昔から自分が男であると盲信するあまり、他人に弱みを見せることが苦手になってしまいました。それは母にもです。
 私の滅多に見せない弱った訴えは母に効いたようで、カミングアウトは穏やかに終わりました。

その後

 それからはFTMに関するセンシティブな話題もしましたが、関係性は変わりませんでした。現在、母は私が最後まで治療と手術を行いたいという意志を持っていることを知っています。それでも変わりなく話せる理由は相手を労るカミングアウトをしたからだと、私は思います。
 トランスジェンダーと受け入れ、治療すると決めることは精神を使い、相手のことを考える余裕を奪います。
 しかし、カミングアウトする際、相手の立場になって考え、伝え方を工夫することによって関係性はいくらでも変化する可能性があるのではないかと、私は考えます。
 もちろん、嫌な相手や言っても不可能な相手もいるでしょう。その人には無理に伝える必要はありません。あくまで自分の人生ですから。
 私は、自分の人生にはまだ家族の助けが必要だと思い、上記のカミングアウトをしました。形や方法に囚われず、何を目的としてカミングアウトするのかをしっかり決めて行動すると、良い結果が訪れるかもしれません。

 蛇足もある長いお話を最後まで閲覧していただき、ありがとうございました。
 皆様の未来に、幸多きことを祈っております。絶対人生謳歌してやりましょう。それでは。


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