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雨月物語

水墨画的な美しさのある傑作だ。
とくにあやかしを演じる京マチ子の美しさは人間離れしている。

カメラワークも凝りに凝っており、どうやって撮影したのかわからない部分もある。

戦国時代の物語。
田舎の百姓が二人出てくる。
ひとりは焼き物で金儲けをしたく、もうひとりはさむらいになって出世することを目論んでいる。
町に焼き物を売りにいったとき、男は美しい姫に出会う。
焼き物を届けにいくと、そのまま契を結ぶ。
姫とふたりで夢のような日々を過ごす。
いっぽう、男の妻子は国に戻る途中で落ち武者に会い、妻は殺される。
さむらいになりたかった男は、望み通りさむらいになる。
出世して、村に凱旋しようとする。
立ち寄った宿で、変わり果てた妻に出会う。妻は身売りをしていたのだ。

姫と暮らしていた男は、町で出会った男に「死相が出ている」と言われる。
妻子のもとに戻るようにさとされるが、姫との日々をあきらめきれない。
それでも屋敷に戻って姫に、家に帰りたいと告げる。
引き留めようとした姫は男の体に呪文が書かれていることに気づく。
争い、男は気を失う。
目覚めると、焼け野原に寝ていた。

家に帰ると、子供がいた。ふたりは妻を弔い、再び暮らし始める。
さむらいになった男は、武器を捨てて妻と一緒に家に帰ってくる。
それぞれが元の生活に戻る。
自分の暮らしが大切だとわかったのだ。

行きて帰りし物語の形をとっている。
最初の暮らしと、最後に家に戻ってからの暮らしは同じだが、男たちは生活への不満や野心をすて、自分たちの生活を受け入れている。
欲望に駆られて、大切なものが見えなくなることもある。そういう物語だ。


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