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「オデッセイ」(2015年)

2012年8月6日にNASAの火星探査車「キュリオシティ」が火星に着陸した。
個人的な印象だが、あのころから人々は火星に興味を持ちはじめた印象がある。有人・無人はともかくとして人類がアクセスできる場所としての興味だ。

もちろん、まだ人間が火星にいったことはない。それでもNASAや民間宇宙企業が開発競争を加速しているのを見ていると、近いうちにいけるのではないかという気がしてくる。

そのような状況で本作である。

火星に取り残された植物学者マーク・ワトニーがなんとか生き延びようと、ひとりきりでさまざまな工夫をこらす。そして、彼が生きていることに気づいたNASAは、ワトニーを地球に連れ戻すために知恵をしぼる。

本作では火星という、誰もいったことのない土地で生き延びねばならなくなった人間の孤独なサバイバルと、彼を支える仲間たちの姿が描かれる。

サバイバル術もリアルなような気もする。なにしろ誰も火星にいったことがないので、本当にそういうことが可能なのかわからない。「エイリアン」の描写に現実的な要素は求めないが、本作のように科学的・植物学的な説明がはいる作品についてはリアルなのか、とまずは疑ってかかってしまう。
とはいえ、「2001年宇宙の旅」のほうがリアルに見える、というのは思った。モノリスやスターチャイルドといった、リアルとはかけはなれた要素が登場するにもかかわらず、リアルに感じるのは、キューブリックのすごさなのかもしれない。もしくは小説を担当した、 ‎アーサー・C・クラークの腕前なのか。

製作費150億円。
興行収入920億円。
映画としては成功している。

マット・デイモンやジェシカ・チャスティン、ショーン・ビーンといった有名俳優のおかげもあって、安心して観られる作品だった。

難を言えば、火星に取り残された植物学者がいかに孤独か、といった部分の描写が弱かったと思う。
本作は宇宙開発が盛んになってきたタイミングで作られたサバイバルものではあるが、孤独にさいなまれる人間と、それを助けようとする仲間といった、それこそ宇宙規模の距離も描いてほしかった。
そして、サバイバル映画としてはやや地味な仕上がりになっている。
好きな映画ではあるが、どっちつかずになってしまっている印象ではある。

https://www.youtube.com/watch?v=3nb1nw8kCj4&t=1s

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