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「マッドマックス/サンダードーム」(1985年)

今までのマッドマックスと違って、かなりコミカルだ。
インディジョーンズと同じような演出もある。
かなりハリウッドを意識していると思われる。
そう考えると、「怒りのデスロード」(2025年)でマックス役をトム・ハーディに交代したのは、メル・ギブソンの年齢的な要因もあるだろうが、よりハリウッド的なスター性のあるヒーロー像を求めたのかもしれない。

製作費は15億円。興行収入は57億円。
前作の製作費が4億円で、興行収入は37億円だったことを考えると、かなり予算がアップしている。

本作も前二作に続いて荒廃した世界で物語が展開する。
ただし、石油の奪い合いは話題にならない。
注目すべきなのは、今回の敵がバーターシティの支配者、アウンティ・エンティティという女性であるところだろう。
1970年代中盤から、映画において女性ヒロインが増えてきた流れを意識しているのではないか。アウンティはヒロインではないのだが、「エイリアン」(1979年)のシガニー・ウィーバーのように、強い女性像を打ち出したかったのだと思う。

さらに、「最後の部族」という子どもだけの部族が登場する。
これはオーストラリアの先住民族だろう。子どもだけなのは、彼らが「盗まれた世代」だからではないかと思う。これは、wikiによると、「アボリジニおよびトレス諸島民の子どもたちのうち10~30パーセントが、強制的に親から引き離され、多くは、性的、肉体的、精神的虐待を受けていた」という問題を示している。ただし、この問題が一般に知られるようになったのは1997年以降だというから、ジョージ・ミラーがこのことを知っていたのかどうかはわからない。

こうしてみていくと、ジョージ・ミラーという監督は非常に器用で、世界の状況をたくみに取り入れながら、「マッドマックス」らしい世界を描いていることがわかる。そしてこのシリーズは、世界が崩壊しても戦い続ける人間の愚かさや、その戦いの無益さ、虚しさを伝えてくるという点で見事に一貫している。

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