2021年3月1日の朝日新聞より

「天声人語」


ロッカーと壁のすきまに捨てられた「記述問題対策ノート」千葉聡
 大学入学共通テストに導入予定だった記述式問題。英語の民間試験導入と同じく見送りになった。早くから対策に取り組んできた受験生のやりきれなさを、主体の感情を介在させず、物の描写のみで伝える。
 ロッカーと壁のすきまは、教室の中で一番目立たない薄汚れた場所だ。そこに半ばまで解いた演習ノートを突っ込んだ生徒の悔しさ。政治の気まぐれに生徒と共に翻弄される身であると同時に、生徒に無用な我慢を強いる大人でもある主体。ノートを見つけた時の主体のいたたまれなさが抑えた口調から伝わる。

2021.3.2.~3.Twitterより編集再掲